鹿島相手の快勝劇にも手綱を引き締めた昌子。G大阪の新生4バックを見事に束ねる。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ第20節]G大阪 2−0 鹿島/10月3日/パナスタ

 耐えに耐えての快勝劇だった。

 土曜日ナイターで開催されたJ1リーグ第20節、ガンバ大阪対鹿島アントラーズの一戦は、ホームチームが2−0でモノにし、今季2度目の4連勝を飾った。前半半ばから劣勢を強いられて数多のピンチを迎えるも、GK東口順昭の好守連発やディフェンス陣の懸命の粘りで凌ぎ切る。すると後半にペースを握って盛り返し、パトリックのPKで先制に成功。以降はふたたび鹿島の猛攻に晒されるもゴールを割らせず、アディショナルタイムに途中出場の渡邉千真がカウンターから追加点を奪い、趨勢を定めた。

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 チームが4バック(4−4−2システム)を再導入した北海道コンサドーレ札幌戦からスタートした怒涛の4連勝。その最終ラインを見事な統率力とカバーリングで牛耳っているのが、昌子源だ。三浦弦太が負傷離脱する危機をプラスに転じさせ、守備陣はここ4戦を2失点で切り抜けている。

 古巣相手に存在を誇示した背番号3は、次のように試合を振り返った。

「終始攻められてたし、個人的なミスも多かったです。それでもヒガシ(東口)くんが素晴らしいセーブをしてくれたし、誰かのミスを誰かがカバーするというところがしっかりできた試合だと思う。僕がスタメンで出て初めて無失点、というのは情けない結果ですけど(苦笑)、あらためてチームやファンに感謝したい試合でしたね」

 試合の大きな分岐点となったのが、0−0で迎えた51分の場面だ。

 鹿島の最終ラインからのボールが前線にこぼれ、ファンアラーノと昌子がボールを追う。ここで躊躇いを見せた昌子はファンアラーノにボールを先に小突かれて突破を許し、大ピンチに繋がれてしまった。GK東口がこの1対1を見事なスーパーセーブでシャットアウト。G大阪はそこから息を吹き返すことができたわけだが、昌子にとっては悔やまれるプレーだった。

 怪我による長期離脱から実戦復帰を果たしたのが8月上旬。試合後の会見で「感覚は完全に戻ったか?」と問われた昌子は、このシーンを回顧しながら冷静に自己を分析した。

「やっぱりパスのずれだったり、相手のアプローチが早く感じたりってのはありますね。あのファンアラーノに入れ替われたシーンなんですけど、いつもならもっとパパっと迷わずプレーできるのが、あのときは『ここで潰したら俺退場になるかも』っていうのと、『あのまま前に行かずに並走しても、相手のほうがスピード乗った状態やから負けるかな』とか、いろんなことを考えてしまった。で、ああいう結果になった。前は瞬時にパパっともっと、一番いい判断ができてたと思うんですよ。迷いってのが出てしまった。自分自身がいちばん悔しい」

 当然、東口には感謝している。その存在の大きさをベタ褒めするほどだ。

「日本で一番ですよ。誰が見てもいいキーパー。みなさんが見て感じているよりも、実際に僕なんかは背中で感じてますからね。鹿島時代のソガ(曽ヶ端準)さんと同じくらい、背中で感じる存在感がすごい。チームを救えるキーパーは日本ではもういないと思う。次はもっとヒガシくんを楽にさせたいですね」
 4連勝とはいっても実際は辛勝続きで、いずれもG大阪のスタイルを貫いての盤石な試合運びではない。それでも昌子はチームの確かな成長を感じ取っているという。

「札幌戦は終了間際に点を取って勝って、名古屋には最後まで攻めて逆転、広島戦では2点先行しながら攻め切れなかったんだけど、我慢して勝ちを拾った。そして今日みたいに0−0で長くやるなかでなんとか1点を取って、辛抱強く凌いでカウンター(で追加点)とか、いろんな勝ち方ができてるというのは、チームとして自信になりますよ。もちろんガンバらしいサッカー、相手陣内でボールを回して圧倒したいのはある。でも長いシーズンで連戦もあって、いろんなサッカーがあるとも思う。いまはチーム全員で守れて、攻めれてる。これが大きいかなと」

 G大阪は4位に浮上した。首位・川崎フロンターレとのポイント差は「21」と大きいが、消化試合がふたつ少ない。直接対決も残されており、まだ諦めるのは早いだろう。昌子、キム・ヨングォン、東口の守備トライアングルを支えに、宇佐美やパトリック、井手口ら個性豊かなタレントが噛み合い始めている。シーズン終盤に向けて、台風の目となっていきそうな勢いだ。

構成●サッカーダイジェスト編集部