「大きな一歩だ。順位表で下の方にいるチームにとってはどんな勝ち点も喜んで持ち帰る」

 選手側も手応えを感じている。FWデイビー・ゼルケは「試合前にすごくうまくモチベートしてくれるんだ。気持ちを正しい方向へ向かわしてくれる」と語り、MFマルコ・グルイッチは「ドイツで最も名声のある人のひとりだ。彼の元でプレーできてうれしい。すごく多くのことを学ぶことができる」とクリンスマン効果を称賛していた。
 
 ピッチ上で選手たちは、気持ちを前面に押し出すプレーを見せるようになった。ドイツ代表DFニクラス・シュタルクは「プレーのインテンシティーにより価値を見出すようになった。僕らは相手に嫌がられるようなプレーをどんどんやっていくつもりだ。どの相手チームにも『ああ、次の相手はヘルタか。しんどくなるな』と思わせてやる新しい刺激を手にいたんだ」と闘争心むき出しのコメントを残している。

 チームの雰囲気はガラリと変わった。間違いなくいい方向に進んでいる。後期に巻き返し、天国の父に朗報を届けるためにも、クリンスマンは情熱の限りを燃やして、ヘルタとともに戦っていく。
 
筆者プロフィール/中野吉之伴(なかのきちのすけ)

ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中。