宮本茂氏、マリオでディズニーに挑戦を語る。親のゲームへの抵抗がハードル(日経報道)
任天堂のキャラクターやゲームの世界を再現する「SUPER NINTENDO WORLD」や「スーパーマリオ」ハリウッド(再)映画化、渋谷にオープンした直営ショップ「Nintendo TOKYO」など、最近の任天堂はどことなくディズニーを意識している印象がありました。

そんななか、任天堂代表取締役フェローの宮本茂氏が、今後のマリオのキャラクター展開やディズニーに対する挑戦など、いくつかの興味深い話題に言及しています。Nikkei Asian Reviewのインタビューにて、宮本氏はマリオに関して「創造的な方向性は変わってきている」と語っています。長年にわたってマリオに「一定の一貫性」を維持しようと心がけており、キャラクターに親しみある雰囲気をもたらした一方で、やり方を窮屈にする反省もあったとのこと。たとえばマリオがある食べ物が好物だと知られた後に、その後のエピソードでそれらが急に苦手にはなれないという具合です。

そこで宮本氏はマリオを厳格にキャストすることを避けて、様々なキャラクターのあり方も自由に模索できるようにしたとのこと。「より多くのお客さんが楽しめるためのより大きな機会を作ることに、いっそう興味を抱くようになりました」と述べています。すでに『スーパーマリオくん』などのコミカライズや実写映画『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』では相当に自由だった気もしますが、任天堂自らが主導するマリオの枷を外すという意図と思われます。

このアプローチにより宮本茂氏が目指すのは、「マリオを自分の死で終わりにしない」ということ。ミッキーマウスがウォルト・ディズニーの死後も活躍しているように、世代を超えたクリエイターに受け継がれて欲しいとの想いが語られています。

文化的影響や経済的な成功の観点から、宮本氏は自ら生み出したマリオがミッキーマウスに立ち向かえると信じているとのこと。とはいえ、マリオがミッキーのように世界の人々の心に染みつくまでに、まだまだ長い道のりがあるとも述べられています。

それを達成する上で乗り越えるべきハードルの1つは、宮本氏いわく「多くの親は子供たちにビデオゲームを遊ばせないようにしたい」と望んでいること。「これらの同じ親は、ディズニー映画を視聴することを許します」「親が任天堂をプレイしている子供たちに安心しない限り、私たちは真剣に挑戦することはできません」として、90年以上もの歳月をかけて親を味方に付けたミッキーの手強さを語っています。

そして宮本氏の締めくくりとしては「私たちがすでに創り出したものにはあまりこだわらず、世界中の人々に笑顔をもたらす新しいものを開発するつもりです」とのことです。

とはいえ、かつてフィリップスと提携してCD-i向けに発売された「ホテルマリオ」もおそらく反省材料の1つになっていると思われ、どこまでタイトルごとにマリオのキャラ作りを自由にするのかも興味深いところです。