(左から)日本代表MF堂安、韓国代表代表FWソン・フンミン【写真:ⒸAFC】

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アジア杯登録メンバーで、日本が韓国よりも欧州組の数で上回る

 UAEで開催されたアジアカップは、カタール代表の優勝で幕を閉じた。

 決勝戦でカタールに1-3で敗れたとはいえ、準優勝の日本代表も若手中心のチームで優勝候補のイランを撃破するなど、堂々とした戦いぶりだった。

 そんななか、韓国メディアではベスト8で敗退した韓国代表と日本代表を比較する記事が多く出ているが、サッカー専門サイト「フットボリスト」は、欧州に進出する選手の数の違いやその理由についてまとめている。

 同サイトはまず、数についてこう比較した。

「アジアカップ決勝戦に進出した日本。森保一監督は本田圭佑、香川真司、岡崎慎司、長谷部誠らを入れず、若い選手でチーム作りを進め、結果を残した。それにほとんどの選手が欧州でプレーしていることも注目を集めた。GK権田修一も、大会期間中にポルトガルのポルティモネンセへの移籍を発表した。韓国はエントリー23人中7人が欧州組。日本は23人中13人が欧州クラブに所属している。韓国は欧州でプレーする選手が、日本よりも少ない。何よりも若い選手たちが欧州に出られる可能性も、日本よりも大きくないのが事実だ。これは個人の意思を問うものではない。選手が欧州に行きたくても、難しい環境を見るべきだ」

 つまり、韓国人選手の欧州進出が少ないのは、個人の意思や能力によるところもあるが、取り巻く環境を見なくてはならないという主張だ。

 その理由の一つに、「軍隊」を上げている。同サイトは日韓に精通する代理人の声として、「何よりも軍隊が問題だ。Kリーグで注目される22歳の選手がいるとして、欧州にこの選手を連れていきたくても、27歳には軍隊に行かなければならないので、そこで迷いが生じるのは当然だ。日本にはこの点で完全に自由だろう」

 そのうえで同サイトの見解として「軍隊の問題は、選手個人の選択にも影響を与えている。選手も軍隊問題が引っかかるので、不確定な状況では、よりお金がもらえるほうを魅力的だと感じる可能性も大きいだろう」と伝えている。

移籍金の設定が高いKリーグ、クラブ中心に話が進む

 さらに同サイトは、アジア大会金メダルやオリンピックのメダル獲得などで兵役免除になった選手でも、欧州行きを選択できない理由についても述べている。

「兵役免除を勝ち取った選手がいるなか、欧州行きとなるケースは多くなかった。KリーグとJリーグクラブの運営論理が違うから」と同サイトは説明する。

 これはどういう意味なのだろうか。

「最も大きな違いは移籍金の設定。KリーグはJリーグに比べて移籍金が高い。最近、話題になった韓国代表MFファン・インボムの移籍(大田シチズン→バンクーバー・ホワイトキャップス)も、ブンデスリーガのクラブは1億円を超える移籍金に上げられない立場を表明していたが、MLSのバンクーバー・ホワイトキャップスは移籍金を2億円提示してきた」

 そのうえで前出の代理人は、同サイトでこうコメントしている。

「選手が移籍する時に主導権を握る構造が違う。つまり日本は選手を中心に回るが、韓国はクラブ中心というわけだ。Jリーグの選手は年俸でも譲歩する傾向があり、1億円もらえる選手が1000〜2000万円でも欧州に行くと言う。すべては韓国とは違う」

 同サイトは、Jリーグは規模や産業面でもKリーグをリードしていると認めたうえで、「欧州進出が答えのすべてではないが、個人的な選択が環境に影響を受ける」と伝えている。

 欧州でプレーする選手の数が日本と韓国で、これだけ違いが出るのは、環境による部分が大きいのは確かだろう。軍隊の問題は政治的な部分が解決しない限り、韓国の選手にはこれからもつきまとう問題だ。政治に翻弄されてサッカーをせざるを得ない選手が気の毒ではあるが、完全な解決は難しいだろう。

 現実的にはKリーグを魅力あるものにするための各クラブの努力によって、隣国のJリーグのような盛り上がりに一歩ずつ近づけていくしかない。(金 明碰 / Myung-wook Kim)