「AQUOS R2 compact」レビュー、手のひらに収まるコンパクトスマホ
小型スマホのハイスペックモデル「AQUOS R2 compact」(シャープ製)がソフトバンクから1月18日に発売されます。スマホのディスプレイがどんどん大型化している中で、希少な1台といえるこの端末をじっくり触ってみました。

ソフトバンクで販売される「AQUOS R2 compact」の購入価格は8万2080円。大手3キャリアではソフトバンクのみが取り扱う予定となっていますが、シャープ関係者は「大手キャリア以外での展開も検討している」としており、SIMフリー版が投入される可能性もありそうです。

コンパクトだけど大画面


AQUOS R2 compactの大きさは約131×64×9.3mm。小型モデルとして根強い人気を誇るiPhone SEが約123.8×58.6×7.6mmとなっていますので、それよりは一回り程度大きくなっていることになります。

そしてAQUOS R2 compactは5.2インチのディスプレイを搭載します。この画面サイズのスマホは、4〜5年前なら大型端末に分類されそうですが、実際にはコンパクトモデルの範疇に収まっています。片手で持った時の手のひらにフィットする感覚があり、安定して持てるようになっています。

このモデルのポイントは、縦長化と狭額縁化によって上下の通知エリアとナビゲーションバーまで情報表示領域を広げたことです。アプリなどの表示するための領域は約110×57mmとなっています(定規による実寸)。iPhone SEの画面サイズは約88.5×49.8mmですから、縦方向に22mm、横方向に7mmほど大きいディスプレイを備えていることになります。

縦長のディスプレイですが、親指の操作でほぼスマホ全体をカバーできます。とはいえ、下端に小指をひっかけた持ち方では、上部の通知エリアまで親指を届かせるのはさすがに厳しそうです。ただ、手のひらに置いた状態から、一瞬だけ持ち方を変えることで、通知エリアに手が届くため、実用上は片手持ちでほぼすべての操作に対応できるでしょう。

細密な画面とタッチ反応の良さが◎


一目見て感じるのが、画面の緻密さです。5.2インチながら画面解像度は2280×1080ピクセル(うちナビバー部分の高さが280ピクセル)もあり、画素密度は480dpiと高密度。数年前のスマホと比べると格段にくっきりとした画作りになっています。

▲縦長の表示になるので、WebサイトやSNSなどで一画面に表示できる情報量は多め

液晶ディスプレイは120Hzで駆動する「ハイスピードIGZO」を採用。一般的なスマホと比べて、スクロールした時になめらかな描画が可能としています。これは実際に試してみても効果を感じます。たとえばEngadgetのようなWebサイトやTwitterのタイムラインをスクロールしてみても画面の動きに違和感がなく、目が疲れにくいような印象を受けました。

動画再生ではDolby VisionによるHDR再生もサポートし、Netflixなどの動画を陰影を際立たせた絵で楽しめます。とはいえ、画面サイズが小さいことから、HDR再生であっても迫力は控えめ。逆に言えば、動画を再生していても主張しすぎないことから、通勤電車の中で動画を観るマシンとしてはちょうど良い大きさと言えそうです。

ここで気になるのは、「この画面の小ささでちゃんと操作できるのか」ということ。高密度なグラフィックでゲームなどをすると、ボタンが小さくて操作でしづらいのではないかと心配する向きもあるかもしれません。

筆者も当初それを懸念していましたが、その心配は杞憂でした。AQUOS R2 compactはタッチ操作で触ったところがしっかり反応します。たとえばPokemon GOでポケモンやポケストップといった触る対象が密集したところで試してみても、しっかり狙ったものにタッチできます。この小さいターゲットを良く間違えずに触れるものだと、その正確さに感心したほどでした。


▲感心したのが「ポケモンGO」を試していたとき。密集したマップを表示したときでも狙ったポケモンを正確にタップできました

「2つのノッチ」の意味はあるのか


AQUOS R2 compactは、おそらく世界初の「ダブルノッチ」を備えたスマートフォンです。ノッチとは、ディスプレイの一部をへこませて、カメラやセンサーなどを内蔵させる形状のこと。2018年のスマートフォンの多くが採用するブームとなりました。その2018年の年末に発表されたAQUOS R2 compactでは、上部だけでなく下部にもノッチを搭載します。

上部のノッチにはインカメラを内蔵しています。やや縦幅が深めなノッチですが、ノッチの左右はステータスバー(通知領域)となっているため、ノッチの両脇も情報表示領域として有効に活用し、無駄がない構成とも言えます。

▲前モデルより縮小していますが、やはり目立つインカメラのノッチ

デザインの好みは別れそうですが、筆者はあまりすっきりしていないかな、という印象を受けました。ステータスバーの部分はホーム画面では透過表示となっていますが、アプリによって白や黒などの色に変化します。黒色で表示されている限りはノッチが目立たないので、常時黒色で表示する設定がほしいところです。

▲ステータスバーを黒で表示するアプリなら、ノッチは目立ちません(写真はNetflix)。常に黒表示にするオプションがほしいかも

珍しい「下部のノッチ」ですが、AQUOS R2 compactは指紋センサーを装備するために採用しています。この位置に指紋があることで、親指の指紋認証でのロック解除がスムーズに行えます。指紋センサーが背面や側面に置かれている機種では、手の大きさや利き手によって使いづらいことがままありますが、前面の最下部というのはそうした個人差を問わずに使えます。その意味では、確かに合理的な選択と言えそうです。

そして、強調しておきたいのは、AQUOS R2 compactにはナビゲーションバー(下部のキー)の操作を指紋センサーで代替する方法が用意されていること。これを併用することで、画面を最大限に活用することができるのです。

▲指紋センサーの操作でホーム・戻るキーを置き換える設定を行うと、ステータスバーを隠しても快適に使えます。写真下がステータスバーを隠した表示

Android 9(Pie)はアプリ履歴キーがなくなり、画面下にはホームキーと戻るキーの2種類が配置されます。AQUOS R2 compactではその両方のキーの機能を「指紋センサー」で代替できるようになっています。この設定を済ませると、ナビゲーションバーを隠しても不自由なく操作できるようになり、画面が縦方向に多少(3mm程度)広がります。

ジェスチャー操作は最初のうちは戸惑うかもしれませんが、慣れるとボタンを見ることなくスムーズに操作できるようになります。なお、Android 9ではアプリ履歴の起動がホームボタンの上スワイプというジェスチャーになりますので、AQUOS R2 compactのジェスチャー機能はその操作とも親和性が高いものと言えるでしょう。

スペックも不足無し


チップセットは現行のスマートフォンでは最高峰となるクアルコム製のSnapdragon 845を搭載。メモリーは4GB、ストレージは64GBとなっています。カメラはハイエンドモデルのAQUOS R2の静止画カメラの同等の2260万画素のセンサー採用しており、普段使いでは不足はなさそうです。

加えて、防水・防塵にはしっかり対応。おサイフケータイも搭載します。ポケットに入れても余裕がある小型スマホなら、おサイフケータイを使う時も取り回しがよさそうです。最近のハイエンドモデルでは薄型化から搭載が見送られることの多い3.5mmイヤホンジャックもしっかり備えているのも、スマホを音楽プレイヤーとして使う人にはうれしいポイントと言えそうです。



欲を言えば4GBのメモリーと64GBのストレージはもっと多くても良いのではないかとも思いますが、メモリーを増やしすぎてもバッテリー消費が上がりますし、ストレージはmicroSDカードの追加で補えると考えると、これで十分かもしれません。

iPhone SEの後継機が無くなったことで、ただでさえ希少なコンパクトモデルの選択肢が加速しつつある流れにあります。その中で登場したAQUOS R2 compactはまさに「手のひらに収まるコンパクトスマホが戻ってきた」と思える1台でした。片手スマホ派はぜひ店頭で触れてみることをおすすめします。