一瞬の寝落ち『フラッシュスリープ』 活用次第ではメリットも?

写真拡大


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ

『フラッシュスリープ』

は、

『瞬眠(しゅんみん)』『マイクロスリープ』

とも呼ばれます。

猛烈な眠気のあと、時間にしてほんのわずか数秒から数十秒、まさに瞬間的に眠りに落ちる状態を言います。

運転中などに起こると事故につながる危険性があります。

今回は『フラッシュスリープ』の原因や対策、また、上手につき合う方法をご説明します。

フラッシュスリープの原因

フラッシュスリープの根本的な原因は睡眠不足にあると考えられています。

その他に、体温の変化や時間帯など私たちの身体のサイクルによる要素が関わっています。

起こりやすい時間帯は、午後2時から4時、体温の下がりやすい深夜2時から明け方4時です。

誰しも午後の会議や深夜の仕事で瞬間的に意識が遠のいた経験をお持ちではないでしょうか。

とくに、この時間帯に運転や機械類を操作するような仕事をしている人は要注意です。

脳が瞬間的に眠ってしまうわけですから、交通事故や手足の切断といった大きなケガにつながりかねません。

また、蓄積した精神的な疲れやうつ病、睡眠時無呼吸症候群なども、フラッシュスリープが起こる原因に関係していると言われています。

フラッシュスリープの対策:活用次第で生産性向上!?

フラッシュスリープの対策は、言わずもがな…ですが、規則正しい生活やまとまった睡眠をとるなど、根底にある睡眠不足を解消することです。

しかしながら、変則的な勤務や生活スタイルの事情などにより、やむを得ない人もいるでしょう。

実は、フラッシュスリープの特性を利用すると眠気や疲労の回復につながる、というメリットもあります。

そもそも猛烈な眠気というのは、思考や言語、記憶などを処理する脳の働きが低下し、いわば脳が疲れている証拠です。

猛烈な眠気を感じたらあえて少しの間だけ目をつむり、フラッシュスリープが訪れるようにコントロールします。

脳で処理する情報の約8割は視覚から入ってくると言われています。

疲れの原因となる情報を一時的に遮断するだけでも、脳の疲労はかなり回復してフラッシュスリープ対策にもなるのです。

「居眠りは悪い」はもう古い!仮眠のススメ

それでも眠気が取れないときは、思い切って20分から30分の仮眠をとることをおすすめします。

仕事中の仮眠は、たいていの人はマイナスイメージを抱くかもしれません。

しかし最近では、仮眠によって脳の疲労が回復し、生産性を向上させることが明らかになりました。

そのため、積極的に仮眠を取り入れている企業もあるくらいです。

さらに、フラッシュスリープを利用すれば、瞬時に仮眠に入れますので、大変効率の良い仮眠法とも言えます。

仮眠の目安は長くても30分以内、これ以上長くなると夜などのまとまった睡眠が妨害されますし、当たり前ですが仕事のスケジュールに響いては本末転倒です。

さて、せっかく効率的な仮眠をとったのに、目覚めが悪くて頭がボーっとしている状態では意味がありません。

仮眠からスッキリ目覚めるポイントは、以下のとおりです。

 ●シートや椅子の背もたれに寄り掛かったり、ハンドルや机などにうつぶせになったりして寝る
 ●仮眠の前にコーヒーなどのカフェイン飲料を飲む
 ●仮眠後に明るい場所で光を浴びる

布団に入って横になるなど、睡眠に快適な環境で本格的に眠ると余計辛くなります。

運転中の人が仮眠をとる場合は、車を停車した周囲の状況をよく確認して、安全を確保してください。

また、カフェインは摂取してから10〜15分で、その覚醒効果がピークになると言われています。

眠り過ぎを防いで仮眠から気持ちよく目覚める効果に期待できます。

さらに、太陽の光を浴びることも有効です。

太陽の光には、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌を止める働きがあります。

難しい場合には明るい光を浴びるようにします。


なお、今回お伝えした内容は、フラッシュスリープの主たる原因があくまでも睡眠不足にある場合です。

もし頻繁にフラッシュスリープが起こるのであれば、前述した精神的な疲れやうつ病、睡眠時無呼吸症候群などの可能性も考えられます。

「疲れているから当たり前」と軽視せず、早めに睡眠外来や心療内科、精神神経内科を受診しましょう。


<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供