日本がセネガルに2-2で引き分けたエカテリンブルグのスタジアムには、多くの日本人サポーターがつめかけるだろうと言われていた。

 第1戦(対コロンビア戦)の会場だったサランスクを訪れたその数は、せいぜい2、3千人。スタンドの7割方を埋めていたコロンビアサポーターと比較すると、とても寂しい光景に見えた。「次戦は、日本の週末と掛かっているので、こんなことにはならないと思いますよ」との話だった。

 エカテリンブルグ到着。確かに、サランスクに比べれば日本人サポーターは多くいた。セネガル人サポより多く駆けつけていたが、観衆32572人のうち、せいぜい1、2割程度にとどまった。

 モスクワと日本は直行便で10時間台、偏西風が順風として作用する帰国便は9時間台で結ばれる。欧州諸国の中では最も近い国だ。過去のW杯開催国でも、日本と共催W杯を開催した韓国を除けば、一番の隣国になる。距離だけなら、過去最多のサポーターが現地を訪れても不思議はない場所だ。

 ところが、現地を訪れるサポーターの数は伸びていない。2010年大会の南アは、遠い上に治安が悪く、気軽にはいけない場所だった。2014年大会のブラジルも同じだ。丸24時間費やさなければ、現地に到着しない遠さが、現地観戦の足枷になっていた。治安の問題も少なからず存在した。

 今回、その手の問題は全くない。ロシアという国に対して若干、違和感を覚える程度だ。とはいえ今回、観戦チケットを持っていれば査証は不要だし、治安もまったく問題ない。各都市間を結ぶアクセスや言葉が通じにくい点には、問題ありと言いたくなるが、総合的に見れば十分、合格点がつけられる。ロシアは予想以上にちゃんとしている。W杯の観戦取材は、今回が10度目だが、2006年ドイツ大会といい勝負だ。というか、比較する気にならないほど、上々なのだ。

 今回行かなくて、いつ行くのと言いたくなるほど、訪れるべき条件は整っている。
現地を訪れている日本人サポーターたちの傾向は、ハッキリしている。これまでとの違いと言ってもいい。中心は40歳から60歳。だが、それ以上の年配者も多く見かける。昨日も、70歳台の女性2人組と、投宿ホテルのエレベーターで一緒になったが、これは特段、珍しい話ではない。

 言い換えれば、若い人が少ない。20歳台とおぼしき若者を見かけることはほぼない。学生さん風情はまるで見かけない。スタンドに響き渡る日本人サポーターの応援が、心なしか大人しく聞こえる理由かもしれない。

 今回の西野ジャパンは、かつてない高齢チームで、日本では人気ドラマの影響もあってか「オッさんジャパン」とも呼ばれているらしい。だが、その代表格である長谷部、川島、本田らは、そうはいっても30歳台だ。選手としてはオッさんかもしれないが、世間的には若人だ。日本代表サポの中に入っても十分若手で通る。

 サッカー日本代表の応援と言えば、若者と相場が決まっていたのは、いったい、いつ頃までだっただろうか。野球は年配者で、サッカーは若者。あるときまでそうした棲み分けができていた。

 それがいま完全に崩れてしまっている。W杯の現場を訪れる代表サポは、超オッさん、超オバさんの集団だ。代表選手の高齢化もさることながら、サポーターの高齢化はそれ以上に目立つ。

 この原稿は、現地モスクワで書いているので、日本がいまどんな様子なのか、正確にはわからないが、日本戦後、渋谷のスクランブル交差点は、今回も大混乱になっていると聞く。しかし、この騒ぎの中心は若者だ。若者も、日本代表の成績に無関心を決め込んでいるわけではない。応援の方法が変化したということなのだろう。とするならば、そのスケールは、ずいぶん小さくなってしまった。