メタリカのカーク・ハメットがナップスター騒動を回想「俺たちはリスクを取って正しいことをした」

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メタリカのギタリスト、カーク・ハメットは最新インタビューの中で、メタル・アイコンであるバンドがナップスターを相手取り2000年に起こした訴訟について、「それでも俺たちが正しい」と主張する理由を語った。「音楽業界の実情をよく見るがいい。そうすれば現在の状況全体が見えてくる」

メタリカは2000年、ファイル共有サービスの先駆けで何かと議論を醸したナップスターに対する訴訟を起こした。ニュー・ミレニアムへ向けて方向性を見失いつつあった音楽業界を象徴する出来事だった。このメタル・バンドが法的行動を起こしたことに非難の声を上げるファンもいる中で、リード・ギタリストのカーク・ハメットは、自分たちは正しいチョイスをしたと主張する。

「ナップスターにまつわるすべての事柄は、俺たちに何のメリットももたらさなかった。ナップスター訴訟に関しては、 ”メタリカは間違っている”と誰に言われようが、俺たちが正しい」とハメットは、スウェーデンのテレビ番組『Nyhetsmorgon』のインタビューで語っている。「音楽業界の実情をよく見るがいい。そうすれば現在の状況全体が見えてくる」

ハメットによるこのコメントは、メタリカとして初めてメジャー・ストリーミング・サービスを通じてリリースされた、10作目のアルバム『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』(2016年)についての質問に答えたものだった。彼はストリーミングという最新テクノロジーを、有効なプロモーション・ツールとして認めている。しかし同時に、アナログ音源をデジタル化する過程で音質が落ちることを残念に思っている。

「かつて、ストリーミング音楽の音質が良いとは言えない酷い時期があった。”ビット”がどうのという、最近のストリーミングについてのウンチクに俺は興味がない」とハメットは言う。「アナログ盤より良いサウンドになるなんてあり得ない。とはいえ、俺たちは身近な存在でありたいし、あらゆる最新技術でアクセスできる状態にしておく必要もある」

ポスト・ナップスター時代に入り、アルバム・セールスが急落し続けている。著作権侵害に対する警告を発したメタリカの主張が裏付けられる形となった。それでも、ナップスターを通じて彼らの楽曲を共有した33万5000以上のユーザーをバンド側が特定し、ナップスター側へ公表したことを批判しているファンもいる。

ハメットは、バンドによる厳しいアプローチに自信を持ってきた。さらに、他のアーティストにも論争に加わって欲しいと願っている。「もしも後悔することがあるとすれば、それは俺たちがナップスターと争っている時期に、他のアーティストが俺たちを支持してくれなかったことを残念に思っている」と2016年に、ザ・ワールド・オブ・ホイーラー(ポッドキャスト)で語っている。「後悔と言っていいのか分からないが、かなり失望したね。俺たちの主張に賛同してくれたミュージシャンたちも、自分たちになるべく害のない方法でしか俺たちを支持してくれなかったことが残念だ」

「俺たちはリスクを取った。最終的には、俺たちのやってきたことにはそれだけの価値があり、正しいことだったと言いたい」と彼は付け加えた。

ハメットは、ここ最近の音楽業界に対してある程度の楽観的な見方をする一方で、著作権侵害行為が従来のビジネスモデルを完全に壊したと確信している。

「コントロールできないくらい巨大な怪物になってしまった」と、2014年にノイジー誌に語っている。「俺たちの音楽が存続し、人々が俺たちの音楽や言うことへ耳を傾けてくれるように、ポジティヴに考え、受け入れるのがベストだ。我々は日々、変化に対応する方法を学んでいる。すべての著作権侵害やインターネットに関わる問題がレコード業界を破壊し、音楽やサウンドさえも変えてしまった。誰もがどんなものでも簡単にレコーディングして配信でき、”これはいい!”とか”これはダメだ”などと安易に評価できる現在の状況は、最高のミュージシャンやバンドの質を高めるモチベーションにはならないだろう。かつては、ミュージシャンやバンドとしてリスペクトされるには相当の努力が必要だった。今やアルバムを売り、ライバルたちと素晴らしい作品を競い合うという状況がまったく見られない」

「誰もがアルバムをただ放り投げて、サイバーワールドに浮かべているようなものだ」と彼は言う。「支持するバンドの下に人々が集結した時代が懐かしい。アルバムのリリースは大きな話題となる出来事で、レコード・ショップへ行って売れ行きを見たり、評判を聞いたりした。”このアルバムはもう聴いたか?”、”いいや、まだだ”などというショップでの会話も、インターネットのせいですべてなくなってしまった。インターネットはとても便利な一方で、あらゆるものをダメにしてしまった」

一方でメタリカのドラマー、ラーズ・ウルリッヒは、バンドのかつてのアグレッシヴな戦略をやや悔いている。「とても直情的なところが俺の好きなメタリカだ」と、2016年に彼はローリングストーン誌に語っている。「後先を考えない直感的な行動が、たまに裏目に出ることもある。クリエイティヴな環境において、それは素晴らしい状況だ。でもナップスターの時の俺たちは、”あいつらはけしからん! あいつらを懲らしめてやろう”という感じで、暗闇の中で突然ヘッドライトに照らされた鹿のように、ひとりだけ注目の的になってしまったんだ(笑)」

「当時の俺は、ナップスターの掲げる”自由”が人々に対して持つ意味を過小評価していた」と彼は付け加える。「自分がやりたくなくても、時には飛び出す前に石橋を叩いてみることも必要だと思う。最低でも、どの辺りに着地するかは知っておかないとな(笑)」