日本代表が直面する”極限の行き詰まり”【写真:Getty Images】

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マリ戦を受けて課題が噴出、チームの方向性を問う議論も浮上

 バヒド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表はベルギー遠征を敢行するなか、23日の国際親善試合マリ戦は1-1のドローに終わった。

 辛うじて引き分けに持ち込んだ“仮想セネガル戦”を受けて攻守両面の課題が浮上し、選手たちも危機感を抱いている。現在の日本代表は試行錯誤の日々を送っているが、中国の古典が示すように“極限の行き詰まり”に到達してこそ、チームは新たな道を見出せるのかもしれない。

 6月のロシア・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第2戦で対戦するセネガルを想定したマリ戦では、前半44分にDF宇賀神友弥(浦和レッズ)がPKを与えて先制点を献上。攻め手をなかなか見い出せない日本は、途中出場のFW中島翔哉(ポルティモネンセ)が後半アディショナルタイムに代表デビュー弾を決め、辛うじて1-1のドローで終えている。

 日本代表を取り巻く環境は、決して穏やかなものではない。マリ戦を受けて選手たちも課題を口にし、チームへの風当たりは徐々に強さを増している。そして状況の危うさを最も感じているのが、選手たち自身だろう。一様に改善の必要性を訴え、「話せばどうしても悪いところばかり出てしまう」(本田圭佑/パチューカ)、「今修正しないと手遅れ」(長友佑都/ガラタサライ)などの声も上がっている。

 マリ戦後、DF槙野智章(浦和)は長友と話し合い、その内容は「2010年南アフリカW杯の時のような戦い方をするのか、自分たちが攻撃を掲げた2014年ブラジルW杯のような戦い方をするのか」というものだったと明かした。チームの方向性という根幹の話も浮上しているが、状況が極限まで窮した時に道が開ける可能性を中国の古典は示している。


変化の前兆を感じる本田「こういう場面に出くわせることは光栄」

「窮すれば通ず」の格言がある。物事が行き詰まった時、かえって新たな活路が開けるという意味だ。出典は変化の原理原則を記した中国の古典「易経」だが、「窮すれば則ち変じ、変ずれば則ち通ず」となっており、窮してから通ずるまでの間に“変化”の段階があると説く。

 今の日本代表に照らし合わせると、行き詰まるところまで到達した結果、チームにある変化が生まれ、そして活路が開けるというプロセスになる。言い方を変えれば、“極限の行き詰まり”が道を開くきっかけになるということだ。

 本田は「普通、集団って原点回帰するものがあったりする。それが今、日本のサッカーにないっていうのは確かに脆いところがある。楽な道がないんですよ」と現状を分析。その一方で、「でもこれをネガティブに考えず、そうやって歴史って築かれていくので、逆にこういう場面に出くわせることは光栄なこと」と語り、まるで変化の前兆を感じているかのようなコメントを残している。

 楽な道がない状態の日本だが、この困窮状態が極まってこそ新たな活路が開けることを古典は示す。ベルギー遠征を通して問題と向き合い続けている日本代表は、まさにその途上にいる。一連の段階を経た後、脱皮を遂げた日本代表の姿が見られるに違いない。


(大木 勇(Football ZONE web編集部) / Isamu Oki)