個性が消えつつある印象のハリルジャパンを、本田はどう思っているのだろうか。写真:サッカーダイジェスト

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 10月シリーズの国際親善試合に臨んだ日本代表は、格下と思われたニュージーランドとハイチにいずれも苦戦。今回の連戦で改めてはっきりしたのが、世界的に見て日本は決して強くないということだ。

 個人の力量で劣っていると印象付けたのが計4つの失点シーンだろう。なかでもいただけなかったのがニュージーランド戦のそれ。もっとも警戒すべきFWのクリス・ウッドに、しかも得意なヘッドでゴールを奪われては……。正直、話にならない。

 CBの吉田麻也はその失点について「あと半歩、一歩の差だった」とコメントしたが、ウッドの最大の武器(高さ)を分かったうえでやられていたとしたら、それは大問題だ。何が問題なのかと言えば、“個と個の駆け引き”で吉田がウッドに敗れたところである。

 ウッド以上のストライカーは世界中にゴロゴロいるし、その観点から推測すれば、現状のままだとロシア・ワールドカップで日本の守備は間違いなく崩壊する。

 その吉田が出場しなかったハイチ戦も、3失点という結果が物語るように日本のディフェンスはお粗末だった。

 先のワールドカップ・アジア最終予選では控えメンバーだったSBの酒井高徳やCBの槙野智章を先発起用した影響もあり、最終ラインの連係に不安があったのは確かだ。しかし、だからこそ守備の局面では“個の勝負”がポイントになったわけだが、まるで組織的ではなかったハイチにあっさり失点と槙野も酒井高も、そしてCBの昌子源も力不足を露見している。

 実際、見るも無残なハイチ戦のドローを受け、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は怒り心頭。試合後の会見では「私が就任して最悪の試合。長年監督をしているが、こんなゲームは見たことがない。選手を選んだ私の責任でもある」と吐き捨てるように言った。

 確かに指揮官にも「責任」はある。というのも、ハイチ戦はハリルホジッチ監督のウィークポイントが垣間見えた試合でもあったからだ。

 ハイチ戦前日の原口元気のコメント──「ここまで情報がないチームと戦うのは初めてだ、と監督も言っていました」──を鵜呑みにすれば、指揮官は事前に十分なハイチ対策を立てられなかったことになる。相手ありきで戦略を練るタイプのハリルホジッチ監督にしてみれば、対戦国のデータが少ないのは致命傷で、ある意味、ベールに包まれていた今回のハイチは“相性最悪”のチームだった。

 0-2から追いつかれ、たまらず主力級の大迫勇也、香川真司を立て続けに投入したが、逆に被弾してしまっては……。最終的に3-3で引き分けたとはいえ、交代策でもゲームをコントロールできなかったハリルホジッチ監督は批判されて然るべきだ。“戦略なき一面”を覗かせたことで、今後、ハリル株が急落する恐れもあるだろう。

 8月のオーストラリア戦で会心の勝利に導いたのも束の間、続く9月のサウジアラビア戦(ともにワールドカップ・アジア最終予選)で打開策を見出せないまま完封負けを喫し、10月シリーズもサポーターの期待を裏切った。仮に11月の欧州遠征でブラジルやベルギーに惨敗すれば、再び解任論が噴出する可能性もある。
 話は前後するが、「個の力」に改めて言及すれば、本田圭佑は4年前にその重要性を説いていた。14年ブラジル・ワールドカップの出場を決めた翌日、「ワールドカップで優勝するために残り1年で何が必要か」というある記者の質問に対し、彼は「シンプルに言えば個」と答え、こう続けたのだ。

「昨日(のオーストラリア戦で)、川島(永嗣)選手が1対1でしっかりと守ったところをさらに高める。今野(泰幸)選手が(ティム・)ケイヒルに競り勝ったところをさらに勝てるように磨く。(長友)佑都と(香川)真司が左サイドで突破していたところの精度をさらに高めて、あれをブラジル相手にもできるようにする。ボランチのふたりが、どんなプレッシャーが来ても必ず攻撃陣にパスを供給する、そして守備ではしっかりコンパクトさを保ちながらボール奪取を繰り返すといったことを90分間やる。岡崎(慎司)選手や前田(遼一)選手が決めるべきところでしっかり決める。