宇野昌磨【写真:giacomello foto】

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世界歴代2位の高得点で優勝、4回転サルコーは「試合でやる日が来るとは…」

 フィギュアスケートのロンバルディア杯(イタリア・ベルガモ)は16日、男子ショートプログラム(SP)1位の宇野昌磨(トヨタ自動車)がフリーで214.97点を記録し、自己ベストの合計319.84点で2連覇を果たした。4回転サルコーを成功させるなど、羽生結弦に続く世界歴代2位の高得点をマーク。試合後は「なんかよくわかんないけど、跳べるって感じ」と“昌磨節”で振り返り、最後のジャンプの後に笑みをこぼした“ある理由”も明かした。

 フリー後の一問一答は以下の通り。

――319.84点の点数をどう思うか。

「どうですかね。うーん、わかんないです。でも、去年の世界選手権も同じぐらいでしたね、確か。それぐらいで、今、サルコーを入れて、ループが1個失敗して、去年もトーループで失敗していて、やはりそこは完成度の違いかなと思っていました」

――イタリアでたくさんファンが盛り上がる中、すべて見てどう感じているか。

「なんでかよくわかんないけど、跳べるっていう感じ。まあ、ループの最初の失敗は、許容範囲かなと思いながら、2個目のサルコーも身構えることなく、普通にふっと跳んだら、普通に跳べたので。サルコーはあまり難しいジャンプではないはずなので、特別意識しなければ跳べるのかなと思いました」

――サルコーは昨シーズンに「僕はできないと思います」と明言していたジャンプ。大会で決めてみての手応えは。

「そうですね。僕もシカゴの合宿に行くまで、跳ぶつもりがなくて、合宿の最後の方で『サルコーもやりなさい』って言われて、ルッツに励んでいた。サルコーをやり始め、確率はルッツの方が良かったけど、やっていくうちに、サルコーの方が失敗しても他のジャンプに響かないなと。とりあえず曲に入れようということで、入れることになったけど、本当に試合でやる日が来るとは思わかなったし、試合で降りる日が来るとも思いませんでした」

――今後、グランプリと今シーズンが始まっていくが、今後の試合に向けて。

「そうですね。いつもシーズン最初が悪かったし、そういう自分のイメージだったけど、わりと良かった。今後は今回できなかったことを、また改めて分析してやっていきたいです」

最後のトーループで笑顔「試合に行く前に先生に『僕が笑顔になったら…』」

――こちらに来てから、練習も「比較的に調子がいい」と言っていた。今朝の練習ではあまりジャンプを跳ばずに調整していた。

「朝はもう何も跳べる気がしなかったので、もう諦めてやらなかったけど、6分間練習が思いほか跳べた。サルコーも全然跳べる気はしなかったけど、やってみたら意外と跳べたという感じだったので。特に深く考えずにいきました」

――ジャンプの構成に悩んでいたが、ループ、サルコーにしたのが良かったのか。

「そうですね。サルコーというジャンプが自分の中で難しいというイメージがあった。でも、比較的簡単なジャンプのはずなので、2本目でもいけるんじゃないか。ループ2本目でずっと練習してきて、なかなかうまくいかない、力が足りないという感じだったので、これは合っているかなと思う。だけど、このままでもいいけど、ルッツをすぐ入れるかどうかは今のプログラムを完成させてから考えたいなと思います」

――2年前と比べて、ジャンプだけでなく表現も良くなっているが、トゥーランドットの表現の完成度はどうか。

「いやあ、全然ですよ。試合なので、自分がやっているよりは少し動いているかなと。今、動画を見た時に思ったけど、やっていてまだまだ半分も滑れてないかなと思った。そこが今後の一番の課題になっていくかなと思います」

――3年前にサルコーができなくて、3年後にできたことについて。

「特に何も感じてないです。もう諦めていましたし、別に3年前に思ったことを、今も引きずっていることは何一つないので。本当に考えがどんどん変わっていっているので、あまり気にしてないです」

――最後のトーループを降りた時、笑顔があった。

「試合に行く前に先生に『僕が笑顔になったら、すごくキツいってことなので』ということを言って(笑)、トーループを跳んで笑顔になりました」

キツかったジャンプ「わーとか思いながら跳んだら思いのほか跳べた」

――あの時、すごくキツかったのか。

「そうですね。1個目のトーループは入りがすっごい乱れて、わーとか思いながら跳んだら思いのほかなんとか跳べた。これもすっごいきついなと思いながらやっていました」

――笑顔で先生を見たら『頑張れ』と声が上がっていたが、聞こえたか。

「いや、声が聞こえたのは最後のイーグルの前。一番、聞こえました。『走れー』と言われました」

――午前中の練習は姿勢などを重点的に見ていたのか。

「朝滑っている時に、姿勢がすごく前傾になっていて、それが滑りにもジャンプにもつながっていた。この状態でジャンプをやっても跳べないと思ったので、それならできることから。スケーティングなら直せるかと思ったので、スケーティングや表現をやっていました」

――大会を終えて。

「つい2年前に世界選手権で、たくさん悔しい思いをした時、すごく練習してすごく調子が良くて、もう何も申し分ない、何もやることがない、というくらいやってきて、最後できなかった。今回はその時を比べると、全然いい練習ができていない。全然頑張れていない。努力の頻度がかなり違う状態でも、いい演技ができたというのは、やはり試合への気持ちの持っていき方が大事なのかなと改めて認識できました」

――試合でサルコーという難しいジャンプをやることについて。

「サルコーは今回跳んでみて、絶対フリップぐらい強くなるジャンプかと思った。フリップよりも確率が良くなるジャンプだと思ったので、自分の挑戦ジャンプじゃなくて、自分を手助けるジャンプにしたいなと思いました」

今後の進化は? 「一番変わらないのは、思いっきりやる、攻める、という気持ち」

――今後、どんな風に進化していくのか?

「トゥーランドットというものを今回はあまり演じられなかったから、ジャンプに気がいってしまった。自分を確かめるという点では、いい試合にはなったけど、トゥーランドットをちゃんと表現できるように、1年間通してやって行きたいなと思いました。今まで失敗したことと同じことをしないように、何かが正解とは考えていなくて、とりあえず自分の気持ちを尊重して、いいと思うことをやる。やりたいと思うことをやる。その時の気持ちを無駄にしないように。集中してないなら、無理に集中させようじゃなくて、楽しもうと思っていたり、楽しめそうじゃなかったら、真剣にやるとか。本当にその時々かなと。ただ、一番変わらないのは、思いっきりやる、攻める、という気持ちかなと思いました」

――今までうまくいかなかったケースを排除していくのか。

「そうですね。排除するといっても、やはり失敗した時にやったことが全てダメとは限らないので、そこがすごい難しい。深く考えすぎると、ダメになっていくことが多いので、やりたいようにやるということを今、心がけています」

――最後のスピンでは体力的にはどのくらいキツかったのか。

「もっとキツい時があったので。今までただ練習量が明らかに足りてないって気がした。もっとスピンだって、早く回れるし、氷に対してすごく不安定な感じがした。疲れてきても、もっと滑れたと思ったので。ただただ、今はまだ練習が足りないなと思いました」

――プログラムの中で今日すべて跳べたってというのはいいスタートか。

「どうですかね。あんまり初戦から良すぎると、逆に僕は不安だけど、こんなにうまくいくとは思ってなくて、もっともっとダメな演技して、頑張るぞって気になると。たぶん、周りもみんなそう思っていたし、自分もそう思っていた。思いのほかうまくいって、それだけ精神的な試合へ向けての成長ができたのかなとも思っています」