世界の大陸を網羅する「グローバル高速道路網」はアリなのか?
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いくらネットのおかげで「世界が小さくなった」といっても、地球そのものの大きさは不変であり、世界の各都市の物理的な距離が縮まったわけではありません。現状で人間が最も速く移動できる現実的な手段は航空機を利用すること以外に考えにくいわけですが、それとは逆に高速道路による陸路で全ての大陸をつなぐことは可能なのか、そしてそれは実現する価値があるのかについてムービーにまとめられています。
インターネットの普及により、地球上のどんな場所でもほぼリアルタイムで通信できるようになりました。また、航空機の発明により人類はかつてないスピードで地球上を移動できるようになりましたが、それでも実際にモノやヒトを移動させる距離が縮まったわけではありません。
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人類がいまだに成し遂げられていないことの一つが、「自動車ひとつで世界全ての場所に行く」ということ。
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それを実現するために、「グローバル・ハイウェイ・システム」を構築することは可能なのでしょうか?
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まずは、実質的に社会が形成されている4つの大陸ごとに高速道路網の整備状況と「つながり度」を見てみます。
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まずは、地球最大の「アフロ・ユーラシア大陸」を見てみます。地図で見ると、全ての場所が陸地でつながっているように見えますが……
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厳密にいうと、実は間違い。
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それは、アフリカ大陸とユーラシア大陸の間にあるスエズ運河の存在のため。1869年に開通したスエズ運河は、スエズ地峡に建設された地中海と紅海を結ぶ人工運河であり、文字どおりユーラシアとアフリカの地面を分断しています。
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とはいえ、実際にはいくつかの橋が架かっているため、「陸地続き」と無理やり言えないこともありません。
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そのため、なんとかユーラシア大陸とアフリカ大陸を「ひと続き」と考えることは可能かと。
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オーストラリア大陸にも独自の高速道路網がありますが、後述するように他の大陸との「つながり度」はゼロ。
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次に、北米大陸と南米大陸を見てみます。これも陸地続きであるように見えますが……
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太平洋とカリブ海、そして大西洋を水路で結ぶパナマ運河の存在のおかげで、陸地は分断されています。とはいえ、3つの大きな橋が架かっているので、こちらも「陸地続き」となんとか呼べる状況。
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しかし、本当の問題はパナマとコロンビアの国境に位置する「ダリエン・ギャップ」と呼ばれる湿地帯。
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この地域は、民兵組織と麻薬組織によって支配されている地域で、この間を貫く道路は整備されていません。そのため、北米大陸と南米大陸も、道路的に「つながっている」とは言えない状況。
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つまり、これらの大陸はすべて「つながっていない」と言えるわけです。
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仮に、南アフリカのケープタウンをスタート地点として、南米大陸最果ての街、プンタ・アレーナスまで行くルートを考えてみます。ケープタウンから高速道路に乗って到達できるのが、コンゴ共和国の首都・キンシャサ。ここまで行くだけで51時間かかります。
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キンシャサで道路が途切れるのは、コンゴ川を横断する橋がないため。現状では、フェリーを使って川を渡る必要があります。
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仮にここに橋を架けるとすると、じつに4億4400万ドル(約480億円)もの費用がかかります。
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この橋がつながったものとして、次に到達できる最遠地点はモロッコ共和国のエダリヤと呼ばれる街。ケープタウンから陸路で7日と6時間かかります。
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そして次なる障害が、地中海。
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エダリヤはジブラルタル海峡を挟んでスペインに面している街。そのジブラルタル海峡は、距離にして14kmしかない海峡のため、橋を架けることはそれほど難しくないように見えるのですが……
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実際には900メートルもある水深のため、橋や海底トンネルの建設は非常に困難。
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そのため、エダリヤから対岸の街・アルヘシラスを陸路でつなぐ費用をざっと見積もってみると、その額はなんと240億ドル(約2兆6000億円)という、途方もないものになるとのこと。
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逆に、アルヘシラスまで渡ってしまうと、そこから先はロシア東部の街・マガダンまで、既存の高速道路でユーラシア大陸をズバンと横断してしまうことが可能。とはいえ、横断に必要な時間は7日間と11時間。
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無理やり、ジブラルタル海峡を渡る陸路ができたとして、ケープタウンからマガダンまでの所要時間は14日間と17時間。すごいことになってきました。
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イギリスに住む人は、ドーバー海峡をくぐる英仏海峡トンネルを走るカートレイン「ユーロトンネルシャトル」を利用することで、車に乗ったままグローバル・ハイウェイ・システムに接続することが可能。
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一方、オーストラリア大陸と日本を含む東南アジアを接続することは難しそう。
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その理由は、海で分断されすぎている上にその距離がとてつもないため、とても現代の技術では対応できないため。
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さて、ロシア最遠のマガダンまでやってきましたが、実はまだまだロシアの大地は続いています。
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ロシアの高速道路網地図によると、マガダンから先の地域には全く高速道路網が整備されていません。
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そのため、アメリカ・シベリアに最も近い地点まで、残り2000kmの高速道路を新たに建設する必要あり。このあたりは冬になると極寒の地となるため、その建設やメンテナンスには多くの困難が待ち構えているものとみられます。
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2000kmの高速道路が、ロシア最果ての地・ウエレンに到達。ちなみに、現状でウエレンへの交通手段はヘリコプターしかないとのこと。ウエレンからベーリング海峡を挟んだ先にあるアラスカまでは、82kmの距離があります。
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しかし実際には、海峡の真ん中にディオミード島が存在しているため、36kmと37kmの橋と、4kmの陸路を建設するだけでOK。水深も55メートルほどなので、それほど難しい工事ではない模様。
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しかし本当の問題は、厳しい気候にあるとのこと。この橋の建設にかかる費用は、なんと1050億ドル(約11兆4000億円)とみられます。はたして、そこまでの経済効果があるのでしょうか……
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さらに問題は続きます。橋の上陸地点から最寄りの街・ノームまでは160kmあり、これまた新規に高速道路を建設する必要アリ。
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さらにさらに、ノームから最も近い既存の高速道路があるフェアバンクスまでの高速道路を建設する必要も。
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しかし、ここまで来てしまえばあとはパナマの街・ヤビサまで北米大陸を縦断することが可能。
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そして最後の難関と言えるのが、先述のダリエン・ギャップ。
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しかしここも何とかして高速道路を作ったとすると、ついに南米大陸の先端プンタ・アレーナスまで到達するルートが貫通することになります。
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まとめると、地図で示された難関を何とかしてクリアして、世界の大陸を結ぶ高速道路網を完成させると……
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ケープタウンからプンタ・アレーナスまでを結ぶ5万2000kmのとてつもない高速道路網が完成します。走破にかかる時間は、なんと28日間。
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そして、2330億ドル(約25兆5000億円)という途方もない予算が必要になります。
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とはいえ、この金額はアメリカのGDPの1%を少し上回る程度で、アメリカ軍が年間にかかる費用の38%に相当するだけの金額ではあります。
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そう考えて、「費用の面では大したことない」と思ってしまった人は、ある事実を思い出すべき。ケープタウンからプンタ・アレーナスまで飛行機で行くと、その費用はわずか2000ドル(約21万円)であり……
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かかる時間も「たった」の27時間。
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一方、グローバル・ハイウェイ・システムで同じ地点を移動しようとすると、675時間もの時間がかかります。
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このように、数字だけ並べるとまさに「無意味」に思えてしまうグローバル・ハイウェイ・システムですが、なぜか心の底から「走破してみたい……」と思う気持ちがわき上がってくるのは、いったいどういうわけでしょうか……