鹿島戦ではアグレッシブな仕掛けで奮闘した柏。試合後、今の想いを打ち明けた。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 試合後のミックスゾーンで柏好文が語気を強めて連ねた言葉が胸に突き刺さった。
 
「まずは技術、戦術よりも観に来てくれた人、応援してくれる人に気持ちが伝わる気迫があるプレーができたかどうか。前半はそうではなかったと思うので、まずそういうところをチームとして求めていきたい。そういう魂の入ったプレーがボールを動かしてゴールをこじ開けると思うし、そういうプレーが応援してくれている人たちの勢いにもつながって、僕たちのエネルギーに変わる。そこを僕自身も今日以上にエネルギーを込めてやっていきたい」

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 大岩剛新監督の初陣となる鹿島を迎えたエディオンスタジアムは、前半の45分間と後半の45分間でまったく違う様相を呈した。広島の勝利を期待してスタジアムに足を運んだ多くのサポーターにとって失望の前半と希望の後半となったが、後半をポジティブに捉えすぎるのは危険だ。前半があったから後半があった。「次の試合は後半を最初からやれれば」と期待したいが、「言うは易く、行なうは難し」だろう。
 
 ミスが頻発して自らボールを失ってしまう。ボールホルダーに厳しく寄せられず相手に自由にやられてしまう。問題の根がサッカーの本質的なところ、基本的なところだから厄介極まりなく、なにをどうすれば改善できるのか。
 
「ミスが非常に多く、本当にイージーなミスもある。どうすればいいか?」。試合後にミキッチに問いかけると、「まさに今の自分たちの状況に対する的を射た質問だが、その答えを見つけていればミスは起こらないわけで、はっきりと答えを言うことはできない」と百戦錬磨の男が応じたように、答えは出るはずもない。
 
 守備面でボールホルダーに厳しくいけない点にもついても同様だ。0-3でハーフタイムを迎えて指揮官に「恥ずかしいプレーを見せるな」「気持ちの入ったプレーを見せろ」と叱咤されて吹っ切れたが、前半は恐る恐る相手と対峙していた。「練習では激しくアプローチに行けていても試合になると一変する」(森保監督)状況で、どんなマネジメント方法が効果的だろうか。
 
 それならば、冒頭の柏の言葉に戻る他ないだろう。ひと言で言ってしまえばメンタリティの問題だが、森保体制下で優勝争いのプレッシャーを跳ね除けてタイトルを手にしてきたメンタリティとはまったく種類の違うものが今は求められている。
 
 生まれ育った地元クラブでJ1残留とJ1昇格の使命をいつも背中に背負って戦い、その中で成長を遂げてJ1クラブが争奪戦を起こすプレーヤーへと評価を高めていった柏のように、みんなの想いをエネルギーに変え、自分で現状を打開して道を切り開いていくメンタリティが求められる。
 
 次節までの準備期間は2週間ある。「なにかが劇的に変わって変化をもたらせるとは現実的には考えにくい」(ミキッチ)が、選手の状態を見極める時間はある。高いクオリティを持っている選手たちがミスを恐れて戦えない状態になっているならば、クオリティが落ちてもミスを恐れず相手に向かっていける選手を起用していくべきだろう。
 
「15位に這い上がっていく戦いを見せていかないといけない。下を向いて戦えなくなると15位には届かなくなる」(森保監督)
 
 残り試合はもう20試合しかない。
 
取材・文:寺田弘幸(フリーライター)