【海外試乗】トヨタ・プリウスPHV 技術に反して動的性能△ ゴルフGTEやBMW 330eに軍配
■どんなクルマ?
英国価格、何より高すぎる
PHV版プリウス。2代目は、技術面とデザイン面の改善が図られ、英国仕様のEV走行の航続距離が約63kmとなった。
けれど英国での売れ行きは決してよくない。代替エネルギー車市場において、ノーマルのプリウスは驚異的な成功を収めているが、先代PHVは多くのユーザーにとって現実的でない存在だったようだ。
偶然かもしれないが、われわれが海外市場で大きな欠陥を指摘した直後、£3,200(45万円)の価格引き下げが実施された。
さらに、政府のエコカー向け補助金£2,500(35万円)も利用できるわけだが、それでも4座仕様の£29,195(410万円)という最安値は高すぎる。
航続距離の伸びたフルEVの価格帯が、主流モデルに近い水準まで下がってきている昨今ではなおさらだ。
ましてや、通常のプリウスなら、£6,000(84万円)ほど安く買えるのである。
■どんな感じ?
洗練性、高まった ただしトップ・クラスにあらず
市街地でゆったり乗れるEVとしても、街を離れても快適なクルマとしても、出来の良さを求められる。プラグイン・ハイブリッドの使命である。
まず市街地だが、まさに典型的なリラックスできるEVらしさがある。
アクセルのレスポンスがよく、モーター音とロード・ノイズは穏やかに聞こえるのみ。ノイズとバイブレーションは通常のプリウス以上に抑えられ、それが洗練性を高めている。
しかしクラス・トップを自認するにはもう少し努力が必要だ。そのうえEV走行を楽しめる時間は長くは続かない。
満足とはいえない「実際の電費」
8.8kWhのリチウムイオン・バッテリーの「実電費」は40kmほどで、100km/ℓを謳う燃費も、現実的には25km/ℓ弱といったところ。通常のプリウスとそう変わらないのである。
試乗車には£1,500(21万円)のオプションであるソーラー・ルーフ・パッケージが装備されていたビジネス・エディション・プラス仕様だったが、一日の充電量は5kmぶんほどだという。
英国の天候を考慮すれば、一年中フル稼働という訳にはいかないだろう。
より長距離の走行は、通常のプリウスと同じようなもの。十分に快適で、しかし特に速いわけでも目立ったところがあるわけでもない。
モーターから1.8ℓガソリン・ユニットへ、パワー・ソースの移行はシームレス。エンジンは巡航時にはおとなしいが、急加速時には高回転になりがちで、軋るような音が耳障りだ。
乗り心地も△ 装備は◯
一方、乗り心地は改善されている。これはリアの新しいダブル・ウィッシュボーン・サスペンションと低い重心高の貢献が大きい。
後者は、コーナーでその効果を顕著に感じられる。ロールはうまくコントロールされ、ハンドリングは概ね良好だが、15インチ・タイヤでは気分が高揚するような感覚は得られない。
ただし、ひどいバンプを越えると身震いし、フワフワとした揺れが収まりにくい。
また、室内はバッテリー拡大の影響で、後席が2座となり、荷室は通常のプリウスより狭い。
それ以外は見慣れたレイアウトで、インフォテインメント・システムのタッチパネルの配置はゴチャついた印象もあるものの機能は満載だ。
英国で言うところの「ビジネス・エディション・プラス」はベーシックな仕様だが、ナビゲーション・システムやデジタル・ラジオ、オートライトやヘッドアップ・ディスプレイも標準装備。
トップ・グレードのエクセルは£31,395(441万円)で、オート・ワイパーや自動駐車機能、前後パーキングセンサー、レザー・トリムや上級版オーディオなどが追加される。
■「買い」か?
「ニッチ」の枠をでず ライバルの後塵を拝する
英国におけるプリウスの販売台数に占めるPHVの割合は、10%をやや超える程度になるとみられる。先代より改良されたとはいえ、まだまだニッチ・モデルであることに変わりはない。
風変わりなデザインを気にせず、EV走行を利用する機会が多いなら、検討する価値はある。とはいえ、スタンダードなプリウスとの価格差を燃費で相殺するには、かなり長い時間が必要だ。
また、定期的に充電時間を2時間は確保できないと、通常のハイブリッドに対するアドバンテージは享受しがたい。
結局、讃えるべき技術は多いものの、それがドライビング・ダイナミクスや実用性に結びついていない。
その点では、同様の税制優遇を受けられるVWゴルフGTEやBMW330eに及ばないのだ。
トヨタ・プリウスPHVビジネス・エディション・プラス
■価格 £29,195(410万円)※英国政府補助金適用時■全長×全幅×全高 4645×1760×1470mm
■最高速度 163km/h
■0-100km/h加速 11.1秒
■燃費 100km/ℓ
■CO2排出量 22g/km
■乾燥重量 1550kg
■エンジン 直列4
気筒1798ccガソリン+モーター
■最高出力 123ps/5200rpm
■最大トルク 14.5kg-m
■ギアボックス e-CVT