持っている世界一、多すぎ! 劇作家“シェイクスピア”を深掘りして分かった意外な素顔

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■世界一の劇作家「ウィリアム・シェイクスピア」の本



「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
「この世は舞台だ。誰もが何か役割を演じなければならない」


これらの台詞、どこかで見聞きしたことがある人は多いだろう。
マンガや小説、映画やドラマでも、時折、オマージュされることもあるが、どちらも、昨年、没後400年を迎えたイギリスの戯作家、ウィリアム・シェイクスピアの作品に出てくる台詞だ。
ちなみに上が『ハムレット』、下が『ヴェニスの商人』の台詞である。

シェイクスピアと言えば、誰もが認める“世界一の劇作家”だ。
ギネスブックによれば、彼の著作は、死後400年間で40億冊以上売れているらしい。
そんな稀代の劇作家であるシェイクスピアの著作や作品、そして、それらの著作や作品から派生した“世界一”は数多くある。

そのなかでも、驚愕の“世界一”がある。

1623年に出版されたシェイクスピア全集初版本『ファースト・フォリオ』は、2001年「オークションで取引されたシェイクスピア作品の世界一高い金額」となった。

その金額は、616万6000ドル(約7億5000万円)

出版された当時は1ポンド(現在の100ポンド=1万4千円相当)だったものが、400年を経て、5000倍以上の値がつくとは本人も思ってはいなかっただろう。

ちなみに、この『ファースト・フォリオ』は、2017年に刊行された人気小説『ビブリア古書堂の事件手帖』の最終巻で、重要な役割を果たすアイテムとしても登場している。

■まだまだある「シェイクスピア」にまつわる世界一!



冒頭で紹介した「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」という台詞にもギネス記録が存在する。

この台詞は「ハムレット」の三幕一場に登場する、主人公・ハムレットの独白の冒頭部分だ。
原文で655ワードにのぼる長台詞を、カナダの俳優ショーン・シャノン氏は「23秒8」で言い切ったとして、ギネス記録に認定されている。

ちなみに記事筆者は、以前、演劇の世界に身を置いていた。そこで昔取った杵柄とばかりに、この台詞の早読みにチャレンジしてみた。

結果は「1分39秒」
何度チャレンジしても1分30秒を切ることすらできず、ギネス記録の3倍以上のタイムで、ショーン氏の足元にも及ばなかった。
もちろん日本語と英語とでは、文字数にかなりの違いはあるが(新潮文庫版の『ハムレット』では、およそ800文字)、シェイクスピア作品に出演するプロ俳優の凄さを物語る記録だ。

他にも、なかなか驚かされる“世界一”がある。

シェイクスピア戯曲で、誰もが知っている作品と言えば「ロミオとジュリエット」だろう。
「ロミオとジュリエット」は、美男美女の悲しい恋物語を描いた作品だ。
そのため、ジュリエットは若い美女がキャスティングされることが多い。1996年の映画『ロミオ+ジュリエット』でも、ジュリエットは当時17歳の美少女、クレア・デインズが起用されている。

しかし、2010年にイギリスのオールドヴィック劇場で上演された舞台では、当時76歳のシアン・フィリップスがジュリエット役についたのである。
この公演で、彼女は「ジュリエット役を演じた最年長のプロ俳優」の記録を打ち立てた。

映画の話題が出たが、そちらでもシェイクスピアにまつわるギネス記録はある。
2016年2月現在、シェイクスピアは1121本の映画・テレビ作品の原作者としてクレジットされている「世界一作品が映像化された著者」にギネス認定されているのだ。

■意外に知られていない「シェイクスピアの素顔」



シェイクスピアは、世界一有名な戯曲作家だ。
数々の作品は舞台や映画にもなっているので、いくつかの作品の内容を知っている人もあるだろう。

ところが、当のシェイクスピア本人のことはほとんど知られていない。
そこで、シェイクスピアはどんな人物だったのかを調べてみたところ、意外な素顔が見えてきた。

数々の作品の中で、シェイクスピアは恋物語を描いている。では、彼自身の恋愛遍歴はどんなものだったのか?

なんとシェイクスピアは18歳の時、8歳年上女性と「できちゃった婚」をしている
1600年頃に彼が住んでいた地方の結婚平均年齢は28歳。かなり早い結婚だ。
彼は女に手が早いモテ男だったのか、それとも恋に忠実な情熱的な男だったのか?

その答えの手掛かりなりそうな手紙が残っている。シェイクスピアより少し年下の劇作家が「彼は本当に正直な男で、裏表のない、ざっくばらんな性格だ」と評しているのだ。
どうやら、人柄の良い、男にも女にもモテる人物だったようだ。

ただ、さらに意外な一面もある。
劇作家として名を成してから、折につけ不動産投資をしているのだ。

現代ならお芝居の世界に飛び込む人は、「経済観念が薄い」という印象があるが、シェイクスピアは非常に倹約家で、(当時は訴訟が日常茶飯事だったという背景もあるが)小さな金額でも訴訟を起こしていたという記録も残っている。

想像するにシェイクスピアは、「身内には気の置けない付き合いをするが、対外的に締めるところはきっちり締める」という、アニキ的な性格の持ち主だったのかもしれない。
それでいながら、コメディから悲劇までを巧みな表現で綴っていたのだから、繊細な創造性も持ち合わせていたのだろう。

没後400年経っても世界中の人々に愛され、数々の“世界一”の記録を持つるシェイクスピア。
もし、その作品に触れる機会があるなら、一度は触れてみて損はないはずだ。

(ライター/大村佑介)

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