プレスの急先鋒として存在を誇示する内田。新生ヴェルディの中盤を司るキーマンだ。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 薄氷を踏む勝利だった。

 ホームの味スタに大分トリニータを迎えた東京ヴェルディは、41分のアラン・ピニェイロのゴールをなんとか守り抜き、今季初勝利。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督は「前半は素晴らしかったが、後半は相手に支配された。先週(徳島ヴォルティス戦)は後半が良くて、今日は前半が良い内容と、いまはまだ45分しかできていない。これが90分間できるようになれば、また変わってくる」と語った。
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 開幕2試合で1失点。昨季のJ2で61失点を喫し、この数字はリーグワースト6位で、最終順位も下から5番目だった。守備の再構築が急務のなか、かつてソリッドなサッカーでリーガを席巻したスペイン人指揮官・ロティーナを招聘。3-4-2-1システムの下、マークの受け渡しやプレスのタイミングなど、チーム始動直後から細部に渡るルールを徹底し、チームディフェンスの強化に邁進してきた。
 
 そんななか、瞬く間に指揮官の信頼を得て、攻守の柱になりつつあるのが、ボランチの内田達也だ。
 
 ガンバ大阪からレンタル加入してきた守備のマルチロールで、十代の頃は、宇佐美貴史、柴崎岳、宮市亮らプラチナ世代のリーダーとして、2009年のU-17ワールドカップに出場。将来を嘱望されてきたが、膝の大怪我などもあって、G大阪ではなかなか出場機会を得られないままだった。活躍の場を求め、今オフに兄のように慕う二川孝広が籍を置く東京Vへの移籍を決意したのだ。
 
「試合に出るために東京に来た。2試合連続でスタメンなのは嬉しいですけど、まだまだどうなるかは分かりません。本当にいまは決まり事をみんなで確認しながら、連携の質を高めてるところです。監督からはホンマにたくさんの指示が出てきますね。それをまずは個々がしっかりこなして形にしていかないと、次の展開もないと思うんで」
 
 この日は、ロティーナ監督が「とても重要な選手でうちのメッシ」と激賞する井上潮音と2ボランチを組んだ。両者はいわゆる「つるべの動き」で巧みな引き出し合いを繰り返し、とくに前半は非の打ちどころがないコンビネーションを披露した。一方でリードを奪った後半は、大分が多用したロングボールやアーリークロスに対応し切れず、東京Vはずるずると守備ラインが後退。内田は「前半のうちに試合を決めておかなきゃいけない」と自省を込め、そう振り返った。
 ロティーナ式の守備組織は、意外にも早く浸透してきた印象を受ける。となると今後は、いかにしてゴールを奪うかを模索しなければならない。昨季は失点がワースト6位で、得点はワースト5位タイ。こちらも明らかな改善ポイントだ。
 
 25歳の内田はこう見ている。
 
「基本的なところはできてるし、守備から攻撃への切り替えのところで、どう(ボールを)前に収めて展開していくのかが、これからの課題ですね。やっぱりイチから作ってるところなので、チーム全員で考えながら取り組まないといけない。良くなっていく手応えはあります。目の前の試合をしっかり戦っていきたいですね」
 
 ゲーム終盤にパートナーを務めた橋本英郎は、「ウッチー(内田)はあんなもんやないですよ。もっと攻撃面でも貢献できるはずですし、ポテンシャルを出し切ってるわけじゃない」と評した。
 
 ロティーナ流の組織美を追求する新生ヴェルディ。フットボールIQのきわめて高いこの若きバランサ―が、シーズン序盤における躍進の鍵を握りそうだ。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)