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●一時的に視界がかすむ理由
忙しい日々を過ごしていたらある日突然、視界が不明瞭になり目の前がかすんだ経験はないだろうか。このいわゆる「かすみ目」の状態が一時的であればそんなに心配はいらないが、恒常的に続くようだと要注意だ。

本稿では、あまきクリニック院長の味木幸医師の解説をもとに、かすみ目に陥ったときに疑われる病気について紹介する。

○コンタクトが合っていないと目がかすむ

かすみ目とは「目がよく見えない状態」の総称である。実は私たちのほとんどは、生涯においてかすみ目を一度は経験する。それは老眼を通じてである。

年齢を重ねると、目の水晶体の弾力性や厚さを調節する毛様体筋の働きが低下する。水晶体はカメラのピントに相当する。このピントを調節する機能が低下するため、老眼になると近くの物が見えにくくなると考えられている。

個人差はあるものの、老眼の症状は40歳前後から現れる。ただ、30代以下でも、日常生活において以下のような条件に該当するとかすみ目の症状が出る。

■大量の目やにが出ている

■パソコン作業を連続的に行うなどして、毛様体筋の働きが低下する

■コンタクトレンズが目にフィットしていない

これらの条件で一時的にかすみ目になっている事例では、ちょっとしたことで視界がクリアになる。

「例えば、目やにやパソコン作業などが原因の場合、まばたきをするとかすみ目が治ったり、かすみの程度が変わったりします。コンタクトを装用したときに視界がかすむというのであれば、コンタクトが合っていない、またはレンズが汚れているなどの原因が考えられます」

すなわち、まばたきやコンタクトレンズの手入れで改善されるようなかすみ目ならば、基本的には心配ないということだ。

●かすみ目は失明に至る緑内障の症状でもある
ただ、これらの一時的なかすみ目ではなく、慢性的にかすみ目の症状が出ているときはその背景に何らかの病気が隠れている可能性もある。

このようなケースでは、味木先生は「目のかすみ=すべての目の病気を考える必要があります」と、何らかの目の疾患がある前提で検査をした方がよいと話す。かすみ目を引き起こす主な疾患を以下にまとめたので参考にしてほしい。

白内障

本来ならば透明である目の中の水晶体が濁ってしまう病気。加齢が主な原因で年齢を重ねると誰にでも起こりうる。にごりの程度は個人差があるが、視界が全体的にかすむ。

緑内障

眼圧が高くなり視野が徐々に狭くなる病気。40歳以上の20人に1人がかかる病気とされており、放置すれば失明に至る。早期発見が失明を防ぐためのポイントとなるが、症状の一つに目のかすみがある。

ドライアイ

ドライアイとは、涙の分泌量が減ることなどによって目の表面を潤す力が低下した状態を意味するが、ドライアイでもかすみ目状態になる。

「車のフロントガラスが汚れているとき、水分がない状態でワイパーをかけてもガラスはきれいにならないですよね。この状態がかすみ目とドライアイの関係です。目は乾ききると、本当に何も見えません」

このほかでは硝子体出血や目の炎症、角膜潰瘍などを発症していてもかすみ目になる。さらに今の時期だと花粉にも注意が必要で、「花粉症になると目の粘膜が炎症を起こして保湿力がなくなります。そのためドライアイになるし、涙の質が悪くなって目もかすみやすくなります」と味木医師は解説する。

○セルフケアで改善しなければ医療機関を受診

まさに「目の病気全般」に関わるかすみ目。症状が出たら、自身でできるケアでしばらく様子をみるとよい。

「まずはドライアイ用の目薬を使ってみたり、コンタクトの上からでも使える保湿用の目薬をさしてみたりしてください。眼精疲労や睡眠不足といった体の状態も影響してきます。そのため、『十分に睡眠をとる』『お風呂にゆっくり入る』『温かいおしぼりを目の上に置いてみる』とかして気分転換を図るのもいいですね」

それでも症状が改善しない場合や、かすみの程度があまりにもひどく日常生活に支障をきたす場合は、眼科で診察してもらう必要がある。

パソコン作業によるデスクワークが終われば、家路につくまで電車内でスマートフォンをいじり、帰宅後は深夜までテレビやスマホをながめる……。私たちが何気なく繰り返している日常は、目にかなりの負担を強いている。

このようなライフスタイルがかすみ目を引き起こすが、上述の通り、かすみ目が出るとさまざまな疾患が疑われる。度々かすみ目に陥るようならば、そのたびに不安にさいなまれることになる。そのような無駄な不安がつきまとわないようにするためにも、目の健康を意識した生活を送るようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

○記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。

(栗田智久)