木村拓哉(イラスト:ハセガワシオリ)

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2017年元日。スポーツニッポンの一面に、タモリから去年の大晦日に解散したSMAPへ宛てた直筆メッセージが掲載されて話題になりました。
片やかつての国民的番組の司会者。片やかつての国民的アイドルグループ。両者の間には長年に渡る共演歴があり、中でも、いいともレギュラーを務めた中居正広・草なぎ剛・香取慎吾とこの国民的司会者は、特別な絆で結ばれた間柄。
いいともの最終回において、万感の思いで謝辞を述べた中居・香取、15年以上森田邸で正月を過ごす草なぎは、紛れもなく、タモリにとって可愛い後輩。労いのメッセージの一つや二つ、送りたくもなるというものなのでしょう。

その反面、『笑っていいとも!』や『ミュージックステーション』で、たまに顔を合わせた程度の木村拓哉と稲垣吾郎は、先述の3人に比べれば、関係性は薄いはず。しかし、ゴローちゃんはさておき、キムタクはタモリと今から18年ほど前に、あるスペシャル番組で特別な瞬間を共有しています。

タモリが歌い、踊り、演奏した伝説の番組


番組の題名は、『今夜は営業中!』。このタイトルは、1981年4月4日から1989年10月7日にかけて、累計8年・413回放送された、かつてのタモリの看板番組『今夜は最高!』(日本テレビ系列)と、当時の日テレのキャッチコピー「日テレ営業中」を掛け合わせて付けられたもの。
元ネタとなった『今夜は最高!』は、歌あり、トークあり、コントありの総合バラエティ。ゲストは実に多彩で、芸人・歌手・俳優はもちろん、芸術家・政治家・作家、果ては、横澤彪・三宅恵介といった、ライバル局であるフジテレビ社員まで呼んでいたというから驚きです。

今でこそ、70歳を超えてユルキャラ化し、司会業と街ブラ散歩にまったりと取り組んでいるタモリですが、『今夜は営業中!』の放送時は30代後半〜40代前半で、まだギラギラしていた時期。番組内において、MCとして番組をオーガナイズしつつ、コント・寸劇を演じ、さらには、歌にトランペットにタップダンスを披露するという、何でも出来る総合エンターティナーとしての本領を発揮していました。

『今夜は営業中!』はドラマ仕立てのバラエティ


そんな喜劇人・タモリの真骨頂が惜しげもなく披露された伝説の番組が放送終了して、約10年後の1999年9月18日に放送されたのが、『今夜は営業中!』でした。
この番組は、テレビドラマ形式のコメディバラエティ。タモリが演じるのは、行く先々の日本テレビ系列局で問題を起こし、日テレ本社に戻ってきた伝説のプロデューサー・森田一義(いちよし)。彼はひょんなことから、キムタク演じる総務部上がりの新人ディレクター・村木拓哉(キムタク)とタッグを組み、国民的アイドル・木村拓哉を起用した番組をつくることになります。

井上陽水、長嶋茂雄も特別ゲストとして出演


この配役、「密室芸」と称され、アナーキーな芸風で異端扱いされていたタモリと、ジャニーズの本流ではないところから成り上がったキムタクのキャリアをそのまま、テレビ業界に置き換えて考案されたかのようです。
脇を固める共演者は、松たか子、江角マキコ、橋爪功、所ジョージ、竹中直人、さらには、井上陽水、長嶋茂雄と、豪華すぎるくらい豪華。それでも、これらのスターたちは番組を盛り上げる一つの要因に過ぎません。主役はあくまで、時代を超えて芸能界のトップに君臨するタモリと木村拓哉でした。

中でも見所は、終盤に森田と村木が手掛けた番組というテイのバラエティショーで披露される、タモリとキムタクのセッション。タモリがフルートやトランペットを、キムタクがギターやピアノを奏でながら、SMAP「夜空ノムコウ」、エルトン・ジョン「ユア・ソング」などを披露する様子は、圧巻の一言です。

タモリとキムタクが阿吽の呼吸で、楽しそうに音を奏でる……。それだけでプレミアものな、この一夜限りの宴。ぜひとも、DVD化、もしくは再放送をして欲しいものです。
(こじへい)