これまで、コネタでも何度か著作や個展を紹介してきた、画家のヒグチユウコさん。精密で美しいタッチの中に毒をきかせた作風には女性を中心にファンが多く、オリジナルブランド「Gustave(ギュスターヴ)」の新作グッズ販売などはつねに長蛇の列となるほどの人気。
そんなヒグチさんはこの9月、新作絵本『ギュスターヴくん』など4冊もの新作書籍(『ギュスターヴくん』の限定豪華版を合わせると5冊)を発売する。



その中でもファンをあっと驚かせたのが、Twitterで公開されてきたマンガ“#ヒグチユウコ絵日記”をまとめた『ボリス絵日記』(9月8日発売、祥伝社刊)だ。毎日忙しく作品を描き続けるヒグチさんの暮らしの中で起こるできごとと、多数の作品のモデルとしても活躍する愛猫ボリスくんら、作品の中で描かれてきたキャラクターたちによるシュールなストーリーが混在するこの絵日記。不定期に描かれるこのマンガを楽しみにしている人はとても多く、ファンが独自に作ったツイートまとめなども多数存在する。



人気クリエイターやスター猫たちも登場


ちなみに作品に登場するのは、ぼっちゃんこと息子さんや、息子さんの大事にしているぬいぐるみのニャンコ、白文鳥のコトリ、妖怪絵師・石黒亜矢子さんの飼い猫であるてんまるくん&とんいちくん、デザイナー・名久井直子さんの飼い猫、小春ちゃんなどなど。さらに、漫画「3月のライオン」を連載中の羽海野チカさん、「リラックマ」のデザイナー・コンドウアキさん、漫画「小麦畑の三等星」などで知られる萩岩睦美さん、石黒さん、名久井さんらクリエイター仲間たちとのTwitterでの内輪(?)話をマンガ化した「チーム反り腰」も掲載されているとのことで楽しみだ。

発売が発表された7月28日には“TwitterでつぶやかれたAmazon商品ランキング”で1位、さらに予約開始週には紀伊國屋書店の予約ランキングでも1位になるなど、注目度の高さをうかがわせたこの作品。ファンからの反響も大きく、「これでいつでもツイート探さなくても見れる!」「自分の誕生日より嬉しい!!!」といった喜びの声の中に、「ヒグチユウコさんの作品が気になるんだけど、『ボリス絵日記』から入ってもいいだろうか……」と複雑(?)な心境をのぞかせた人も。



Twitter掲載時とは変わっているエピソードも


数年前からTwitterで続けられていたこの絵日記について、ヒグチさん本人はコネタ記事初登場の際に「内輪ネタっぽいですし、あんなにゆるい感じだと本にならないんじゃないかと……」と語っていたのだが、どんな経緯で書籍化に至ったのか聞いてみた。

ヒグチ Twitter絵日記は息抜きの落書きだったのと、息子が喜ぶので描いていたのですが書籍化オファーが一番たくさんきた企画です。それはそれでちょっと微妙な気持ちでもあるのですが……。ずっとお断りしていて、でもあまりにお客様やTwitterのフォロワーの方からのリクエストが多かったので、出すなら最初にオファーしてくれた祥伝社さんで、と決めておりました。バタついていたので決まってからはや何年? というくらい延びました。



ファン目線でいうと残念なのだが、Twitterに載せていたものをほとんど描き直して掲載しているそうで、それゆえのこんなボヤき(?)も。

ヒグチ Twitterとはエピソードがかなり変わっているものも多いです。さぁ原稿として描こう! となると途端に手が止まる落書き的絵日記なので……なんとあまのじゃくなのだろうと自分自身にあきれました。

でもだからこそ、単体の作品や絵本などとは違った切り口の自由で楽しい世界観のマンガが生まれたのだろう。掲載した中で一番好きなエピソードをたずねたところ、こんな答えが返って来た。

ヒグチ とても悲しいことがあった時に描いた4コマがあって、そこには出来事の詳細は一切でていませんがコトリやボリス、小春に代わりに泣いてもらいました。どれかは内緒です。でも見ると思い出して手が止まってしまいます。



サイン本は予約で売り切れ


かわいく親しみやすいキャラクターたちのやり取りの中には、おもしろおかしいことだけではなく様々な感情が織り込まれていて、なんとも言えない味わいがある。だから何度でも、読み返したくなってしまうのだ。



すでに各書店で取り扱う発売記念サイン本は予約で売り切れになっているほどで、まさにファン待望の作品といえる『ボリス絵日記』。最後に、今回のコミック化を数年待ちわびていた“絵日記ファン”の人たちへのメッセージをお願いした。

ヒグチ Twitterに掲載したものは石黒亜矢子先生や、いろんな作家さんとのやりとりなどでできていたものも多く、それらはそのときに見てくれていた方のために描いたものです。なので、その辺の作品はまったく入っておりません。それでも書籍化できたのは、出して欲しいと何度もメッセージを下さった方がたくさんいらしたおかげです。心より感謝しております。その方たちに一番に喜んでいただけますように!
(古知屋ジュン)