いつも、下を向きながら歩いてます。理由は、小銭が落ちてないか道路を見回してるから。……というのは冗談で、猫背だからでしょうか。でも、ふと空を見上げてみると星が綺麗でした。これは、撮って記録に残したい。

というわけで、こんな所へ行ってみました! 7月2日に「カメラのキタムラ熊谷店」が開催した「星景写真セミナー&天体観測会」に、筆者も参加したのです。

では、まずは第1部「星景写真セミナー」で星を撮るための知識を学びましょう。


今回の講師は、株式会社ビクセンの成澤広幸さん。仕事の傍ら星景写真家としても活動し、アウトドア雑誌・Webマガジン・SNSに作品を掲載している専門家の方です。


日中の撮影とは異なることの多い星景写真撮影のために必要な基礎知識やコツを、実体験を交えながらレクチャーしてくれるそうです。楽しみ!

星を“線”にして撮る方法



実際に成澤さんが撮った星景写真をみんなで見ながら、セミナーは進んでいきました。


「『比較明合成』と言うんですが、オリンパスのカメラには星を“線”にして写す機能が備わっています。この写真を撮ったのは大阪の繁華街の難波で、写っているのはオリオン座。これを“線”にしました」(成澤さん)

なぜ、こんな事が可能になるのか? オリンパスのカメラには「ライブコンポジット」という機能があるのだそう。ライブコンポジットの設定にしたカメラを三脚に立て、まずは1枚撮る。これが、基本となる画です。
そこからは地球が自転した分、星が動きます。シャッター(2回目)を押すまでに星は動き、その星の軌跡が“線”になる。この時は「比較明合成」という原理が働き、明るさが変わらない所はそのままで、明るさが変わったところだけ追加されていく。結果、その部分だけ“線”になる……という理論です。
「液晶画面の中でだんだん“線”になっていくのがすごく面白いです。『早く伸びないかなぁ〜』って30分〜1時間と待つのはすごく楽しいですね」(成澤さん)
とは言え、“線”になるのを待ち続けている間は手持ち無沙汰になってしまう。そのため、星景写真を撮る際は複数台のカメラを持って行くと良いです。
「現地で『いっぱい撮ったなあ!』と思っても、露出時間が長いので結局30枚程度しか撮れてないことが多いです。いかに時間を有効に使うかが、撮れ高を良くする方法ですね」(成澤さん)

●人工衛星を“流れ星”と勘違いしないために


「これは、去年の12月にあったふたご座流星群です。写真の右下にシュッと線が入ってるのわかります? これは、流れ星です。流れ星は細い線から太くなっていくというのが特徴で、ただの線で写っているものは人工衛星が多いです。よく間違えられるんですが、人工衛星はたくさん地球の周りを飛んでいるので結構写ります」(成澤さん)

●月明かりが強いと星は写らない


「左で光ってるのは、深夜2時くらいの細い月です。月明かりがあると、星の写る量が減ります。基本的に、満月の時に星はほとんど写らないです。月が出てない時は星空を背景に景色をシルエットにして撮ると、星も前の景色も両方写ります。月の満ち欠けに合わせて撮ると、星を綺麗に写すことができます」(成澤さん)

●星景写真撮影では、赤のライトを!
車のテールランプって赤いじゃないですか? 工事現場のコーンって赤いですよね? なぜ、それらは赤いのか。
「夜に暗い場所へ行くと、段々目が慣れていきませんか? あれは、瞳孔が開くからです。人間が暗さに慣れるまでには15〜20分くらいかかり、15分後は暗闇でもっと見えるようになります。でも、そこで白い光を浴びると瞳孔は閉じてしまいます。再度目が慣れるまでに、また15分かかっちゃう。ところが、赤いライトだと瞳孔は閉じないんです。なので、星空の撮影に行く時は基本的に赤いライトを使うのがマナーです」(成澤さん)


また、白いライトだと蛾が寄ってきますが(自販機のイメージ)、赤いライトだと虫が寄ってこないそうです。夏には助かる!

「露出」について


●天の川を撮るには


「見ての通り、街明かりがすごい明るいです。街明かりを避けて撮影しないと、天の川は写りません」(成澤さん)
関東平野付近は街や家が密集しているので、天の川が写らないそう。成澤さんの経験では、目安として関東平野から半径20kmくらい離れた場所から天の川が写るらしいです。

また「露出」については目安があり、感度が1600、F値がF2.8、30秒以上と考えてください。
「街明かりの影響があるので、JPEG一発で天の川がガッツリ写るという環境は残念ながら日本にはなかなかありません。なので、画像処理をする必要が出てきます」(成澤さん)

●「JPEG」ではなく「RAW」で撮る
「JPEG」で撮ると、カメラの方である程度色補正をかけて綺麗に仕上げてくれます。それをしないで撮る非圧縮の方法を、「RAW」と呼びます。
「カメラで出てくるノイズにはいくつか種類があり、その一つにJPEGの“変換ノイズ”があります。JPEGで撮ると緑や赤や青の点がポツポツ出ますが、RAWで撮ると出ません。なので、RAWで撮って画像処理するのをおすすめしています」(成澤さん)

●ヒストグラムで画像チェック
RAWで写真を撮ったら撮影した画像をモニターに表示し、ヒストグラムを使って露出を確認しましょう。
「暗い場所へ行くと瞳孔が開くから、液晶モニターが明るく見えます。なので露出アンダーで撮っていても、現地では適正露出だと思ってしまう。そして、帰宅してパソコンに取り込むと『あれ、すごいアンダーだな……』と気付く。なので、ヒストグラムを見て『まだ露出かけた方がいいな』と露出時間を調整してください。ただ、露出が長いほど星が“線”で写ってしまうので、そこも気を付けてください」(成澤さん)

天気の予測方法


晴れてないと、星景写真は撮れません。そこで、成澤さんは「晴れてる場所に行く」というスタンスを取っているそう。そんな成澤さんは「GPV 気象予報」なるサイトを重宝しているらしい。これがあると、雲の動きを予想できるのです。
「GPVは、39時間先の雲の動きと264時間先までの雲の動きを予測できます。明日撮影に行きたいという時に39時間後の関東を調べ、晴れてる場所に目掛けて行けば星を撮ることができる。曇りの天気で失敗することはありません」(成澤さん)

熊谷から星を見上げる「天体観測会」


さあてセミナーが終わると、いよいよ「天体観測会」の始まりです!


この日の空を見上げると、火星と土星がバッチリ見えるじゃないですか!



あと、うしかい座のアークトゥルスも見える。こと座のベガもありますよ!

では、火星と土星を捉えた天体望遠鏡をみんなで覗いて楽しみましょう。



ただ、地球の自転により次第に星がズレていくので、方向は度々直さなければなりません。

●惑星と恒星の見分け方
「真上のアークトゥルスを見ると、チカチカ点滅してるのわかりまよね? では、向こうの火星を見てみてください。向こうは、チカチカしていません。惑星と恒星の見分け方は、チカチカしてるかしてないかです」(成澤さん)
恒星は太陽と同じで、私たちは光が届くまでの数百年前の光を見ています。大気の影響により届く光が弱くなったり強くなったりするので、チカチカ点滅して見えてしまう。一方、惑星は基本的に自分で光っておらず、太陽の光を反射して光る星だそうです。また、惑星は地球との距離が近いため大気の影響が受けづらい。要するに、チカチカ点滅しづらいことになります。
「『あの星、なんだろう?』と思ってチカチカしてなかったら、水金火木土のどれかです」(成澤さん)

●実際に、星を“線”にして写してみた


並行してこの「天体観測会」では、オリンパスのカメラ「E-M10」で夜空を捉えていました。この時、カメラは露出しっぱなしです。結果、星を“線”にして写したこんな写真が出来上がりましたよ!



というわけで、星景写真のセオリーを学びつつ、実際に観つつのこの日のイベントは無事に終了しました。正直、滅多に星を見上げない毎日を送っていたので新鮮でしたよ……。
カメラを数台持ち、星を撮りに地方へ出発する。そんな夏休みも、きっと楽しいでしょうねぇ!
(寺西ジャジューカ)