テレビのニュースで子どもたちのプログラミングしたゲームが紹介されていた。「今どきの子どもたちはすごいなぁ」と感心していたのだけれど、どうやら小学校でのプログラミング教育の必修化が検討されているらしい。

そんな、子どものプログラミング教育に注目が集まる中、プログラミングの考え方を学べる絵本『ルビィのぼうけん こんにちは!プログラミング』が発売された。



宝石探しをしていくと、プログラミングの考えがわかる


本書はフィンランド出身のプログラマであるリンダ・リウカスさんが描いた絵本『Hello Ruby』の翻訳書。『Hello Ruby』を出版するための資金は、クラウドファンディングで集められた。クラウドファンディングとはやりたいことの実現のために、インターネットを通じて不特定多数の人から資金の出資や協力を募るものだ。

『ルビィのぼうけん』の編集担当・片岡さんによると、当時この絵本プロジェクト「Hello Ruby」は数時間で目標金額1万ドルを達成したことで大きな話題を呼んだという。「このプロジェクトを見つけたとき、子ども向けのプログラミングに関する絵本は珍しいうえに、絵がとにかく魅力的でした。私自身、小学生2児の父であり『うちの子どもたちが読んだら喜びそう!』と思い翻訳書の出版を企画しました」

主人公ルビィは、家を留守にしているパパからの手紙を見つけた。それには「宝石を5つ、かくしたから、探してごらん」と書いてあり、ルビィは宝石探しの旅に出かける。
宝石探しをしていくと、プログラミングをする上での考え方を学べるというものだ。前半は物語、後半では物語を基にした親子で楽しめる演習問題が載っている。



この絵本の中にはいくつかのQRコードが埋め込まれており、読み込むと日本語公式サイトへアクセスできる。そこから絵本で紹介された素材を無料でダウンロードできるようになっている。

「原書でも練習問題の素材が原書サイトからダウンロードできるようになっていて、"親子で楽しめる"ことは、本書の大きな魅力の1つでした。ですので、絵本の刊行にあわせた日本語サイトの公開は必須要件でした」と片岡さんに教えていただいた。

「絵本の中にQRコードを埋め込むというアイデアは、サイト制作の打ち合わせの際に営業担当からもらったものです。原書にはダウンロードサイトのURLが記載されていましたが、URLを入力するのはなかなか面倒な作業。QRコードであればスマートフォンなどで簡単に読み込めるので、読者が手軽に日本語サイトにアクセスできます」

私自身、絵本を読みながらすぐにQRコードにスマートフォンをかざしてしまった。気になったときにすぐにアクセスできるのはとても便利だ。

「先をせがまれて最後まで読み切った」


実際に絵本を読んだ方の感想を翻訳者の鳥井さんに教えていただいた。
「前半の絵本パートでは、『長めなので読み聞かせを2日に分けようかと思ったけれど、先をせがまれて最後まで読み切った』『抽象的な内容に思えたが、子どもはすぐに入り込んで気にならないようだった』という声を多く聞いて、大人と子どもの受け止め方の違いが興味深いです。演習パートでは、『絵本は一度読んだだけだったけど、練習の方が気に入って何度も読み直している』『絵本の英字・かな対照表を使って、自分の調べたい言葉を調べるようになった』という体験談を聞きました」



また、子どもが絵本を読む際にそばにいる大人へのアドバイスも鳥井さんに伺った。
「まず大人は、練習問題の各章の『おどうぐ箱』と、そこからたどれる『用語集』に軽く目を通すと、この問題がどういった考え方を学ぶ目的のものなのかを把握できる仕組みになっています。その上で、子どもと一緒に問題を考えてみてください。子どもがどんな答えを出しても、『間違い』と決めつけず、『そうだとしたらこの場合はどうなる?』『自分だったらどんな問題を作る?』と考え方や視点を広げながら話ができるといいと思います。なにより、"ある方法でものごとを考える"ということを一緒に楽しむことができたら、それが一番だと思います」

もし身近にいる子どもたちにプログラミングの考え方を知ってほしいと思っているなら、鳥井さんのアドバイスを参考に絵本を一緒に読んでみるといいかもしれない。

また、子どもだけではなく、プログラミングに興味がある、仕事でプログラマと打ち合わせをする機会があるといった大人が読んでみると、プログラマがどういう考え方をしているのか少し理解できるはずだ。

(上村逸美/eBookJapan)