「空気を読め」とか「変な空気」とかコミュニケーションを語る際に便利な言葉として"空気"という言葉が重宝されていますが、文房具業界でも今、空気が重要ワードとして浮上しています。文房具と空気って、ぱっと見噛み合わない言葉と思うかもしれませんが、要はアイテム名に「AIR(空気)」の名を冠した文房具が多いんです。で、どうしてAIRという名前? 何が違うの? というわけでAIRの仲間の中でも空気感漂うアイテムを検証してみました。



書き味が"エア"



三菱鉛筆の「ユニボール エア」はキャッチコピーが、“空気のように軽く書けるボールペン"。新開発のペン先を採用し、筆圧に合わせてインクの流量をコントロール。空気のように軽い書き味を実現しています。


さらに、従来のボールペンではできなかった、トメ・ハネ・ハライやメリハリのある文字を書くことができるのも大きな特徴。ペンを立てて書いたり弱い筆圧で書くと線が細くなり、寝かせて書いたり強い筆圧で書くと線が太くなるのです。

中に入っているのが"エア"



プラスの「Wエアイン( レギュラータイプ)」は、多孔質セラミックスパウダーとエアー入りカプセルパウダーを配合し、軽いタッチで消せる消しゴム。2種類のエアーを配合することにより、従来品よりさらによく消せるのです。


さらに、多孔質セラミックパウダーは接地面にカドを作る働きをするために、いつもカドで消す感触で使えます。消していて気持ちいいんです。

指の負担を軽減する“エアー”



コクヨS&Tの「エアロフィットサクサ(チタン・グルーレスタイプ)」は、従来品の約4倍の切れ味を誇るハサミ。アーチ曲線を描いたハイブリッドアーチ刃は、刃先でも軽い切れ味を実現。刃の接する部分を最小限に抑えたグルーレス構造により、粘着テープなどを切っても刃がベタつきにくいんです。


持ち手であるハンドル部分に採用されたのが、エアークッションハンドル。ハンドル内部に空洞を設けた柔軟な樹脂層が、指にかかる力を分散させる働きをし、指への負担を約40%軽減するんです。

ズバリ、軽さが"エアー"



ナカバヤシの「ロジカルエアーノート」(A罫B5 5冊パック)は、従来品より重量が軽いノート。ただ軽いだけでなく紙の厚さは従来品と同じ92マイクロメートル。裏うつりも従来品と同様で枚数も30枚あり、普通のノートと同じように使えます。


どれくらい軽いかと言うと、裏面に表記されている通り、従来品とくらべて約20%軽量化に成功したそう。「ノートが軽いと心も軽い!!」とは同社サイトの弁ですが、言い得て妙な感じがします。

圧縮された"エア"



トンボ鉛筆の「エアプレス(透明)」は、上向きでも書けるし、湿った紙にもくっきり書けるボールペン。長さもわずか122mmのショートボディであり、キッチンや工事現場など狭い場所などでも使えるよう工夫がこらされています。


その秘密はノックするたびにピストンが加圧室を押しつぶしてボールペンの芯であるリフィルに圧縮空気を送り、インクを押し出すから。ボディー表面はエラストマーで、濡れた手や手袋をしたままでも握りやすい。

使い勝手がとにかく"エアー"



トンボ鉛筆の「モノエアー」は、「驚くほど軽く消せる!」修正テープ。使い始めはもちろん、テープ残量が少なくなっても軽いんです。従来品ではテープ残量が少なくなるにつれて引き心地が重くなりがちでしたが、モノエアーは、最初から使いきるまで軽さが持続します。


その軽さを実現したのが新機構のエアータッチシステム。そもそも修正テープは引き終わって紙面からヘッドを離したとき、テープが巻いてあるリールの抵抗によって修正テープが切れていたんです。
しかしモノエアーでは、ヘッドを紙面から離したときにエアータッチシステムがテープの供給をロック。それによって修正テープが切れる仕組みです。これによって修正テープを切るための抵抗が不要となり、消し心地が大幅に軽くなったわけです。

これだけエアの名を冠したアイテムがあり、その全てがエアをうまく使うことによって使い勝手を良くしているという共通点があります。中でも「力を入れずに軽く使える」という特徴が最も多いのが印象的。文房具ブームによる高機能での差別化という側面もあるでしょうが、一方で最近の子どもの力が弱くなっているということとも関係がありそうです。
最近の小学校では2Bの鉛筆を使うことが多く、以前のようにHBを使うことはほとんどありません。それは筆圧が弱い子どもが多くなり、HBでは字が薄く読みづらいからだそう。文房具業界にとって学生は大きな市場であることを考えると、力の弱い子どもでも使いやすい文房具を開発する流れになるのは当然に思えます。もちろん従来品より軽くなって使用感がアップデートされれば、疲れがたまった大人も楽に使えるというメリットがあり、全世代的にいいことづくし。使い心地がよくなれば、そりゃ買いますって。そんなエアー文房具の軽やかなる今後を、空気のような透明感でひっそりと追っていきたいところです。
(金山靖)