ビョークの音楽と最先端テクノロジーが融合したVRを体験してきた
以前、日本科学未来館(東京・お台場)で開催された「GAME ON 〜ゲームってなんでおもしろい?〜」なる企画展を取材し、会場で話題のPlayStation VRを体験しました。
あの時は、本当に驚愕しましたね……。傍から見たらその場に座ってるだけなのに、ゴーグルを着けた本人の眼前ではとんでもない光景が展開されている。その仮想世界に引き込まれ、思わずのけぞったり、悲鳴を上げちゃったり……。
昨日(6月29日)から、展示プロジェクト「Bjork Digital―音楽の VR・18日間の実験」が日本科学未来館にて開催されています。「Bjork」とは、言わずと知れたアーティスト・ビョークのこと。彼女の音楽と最先端のテクノロジーの融合により、音楽体験を拡張する実験的なVRが今回は展示されるのだそう。
この企画展のプレス向け体験会が昨日に開催されており、もちろん私も行ってきました!
ところで、なぜ唐突に未来館でビョークの展示プロジェクトを?
「ビョークさんはデビュー当時からコンピューターを作曲に使うなど、先端の科学技術がパラレルに彼女の活動範囲を広げてきたという経緯があります。また、3年前には『Biophilia(バイオフィリア)』というアルバムについて当館で発表するイベントが行われました。それからご縁が続いていて、人類の感覚を変えるかもしれないVRを音楽に取り入れる実験をウチで発表しようという事になりました」(展示企画開発課長 内田まほろさん)
今回の展示は「VR コンテンツ」「アプリケーション」「シネマ」と、大きく3つの見どころが挙げられます。
「Vulnicura VR」は、VR(バーチャル・リアリティ)によってBjorkの最新アルバム『Vulnicura(ヴァルニキュラ)』を体験する刺激的なデジタルハブです。
「ビョークさんの言葉を借りると、CDやライブといったメディアが自分とリスナーをつなげるメディア。でも、例えばCDだったら音だけ、ビジュアルだと四角いモニターで1対1の関係、ライブだと共有はできるものの大きい会場になるとアーティストが小さく見えてアーティストと“つながる”ことができない。でもVRならばどんな仮想現実環境も作ることができ、彼女の表現したい思いだったり、リスナーとつながりたいという気持ちを実現できるんじゃないか? 可能性を感じると仰っています」(内田さん)
というわけでVR展示の専用ルームに案内されると、一人分の椅子それぞれにゴーグル付きヘッドセットとヘッドフォンが用意されていました。このヘッドフォンは、イギリスメーカー「Bowers & Wilkins」によるこだわりの物。これらを装着すると、仮想世界が眼前で展開されます。
●Stonemilker
いきなり、白の衣装を着て海岸に立つビョークが現れる。そして、彼女が『Vulnicura』のファーストトラック「Stonemilker」を歌っています。
ここは、アイスランドの海岸だそう。目の前で歌っているかと思いきや、ビョークは右方向へ移動。視界から消えると、後方から彼女の歌声が聴こえるような感覚になる。その声を追いかけて振り返ると、彼女が情感たっぷりに熱唱しています。ビョークは気ままに右へ左へ動きながら歌唱し続け、それを目で追っていくと、突然ビョークは分身! 2人になったかと思いきや3人になり、それぞれのビョークから歌声が聴こえる。
……という360°の世界が展開されました。VRSEというVRアプリを使った作品です。
●Mouthmantrar
次の部屋へ行くと、またしても1つの椅子にヘッドセットとヘッドフォンが用意されていました。これを装着すると、眼前には真っ赤な世界が。耳に響くのは、『Vulnicura』の収録曲「Mouth Mantra」。歌に呼応して眼前の赤が揺れ、そして白い物体がズラッと並んでいるのが見えます。どうやら、これは歯です。要するに、ここはビョークの口の中。ビョークの口内にいながら、ビョークが歌う「Mouth Mantra」を聴いているという状況です。
歌と同じリズムで、彼女の喉や舌が躍動するのです。
●Not Get
最後の部屋へ行くと、吊るされたヘッドセットとヘッドフォンが。これを装着すると、金の模様が光る黒い女性が出現。
この“金の模様”は、どうやら蛾のよう。彼女が『Vulnicura』の収録曲「Notget」を歌いながら身を振ったりすると、蛾がフワッと飛び立ちます。
この“蛾の女”は自分とかなり近い位置にいるので、彼女が手を振って踊ったりすると自分と接触しそうな気になる、その迫力にビックリして、後ずさりしてしまいます。
次第に蛾がカラフルに変色していき、“蛾の女”は段々と巨大化。最終的には、彼女が歌っているのをこちらが見上げながら聴く体勢になりました。
アルバム『Biophilia』と共に生まれた画期的なアプリを紹介する体験型の教育スペース。アプリに触れたユーザーは、 音楽の理論、科学、テクノロジー、その物理的な力、プロセス、構造の探求へと一気に誘い込まれます。
「『Biophilia』は教育目的で開発されました。ビョークは学校の音楽理論の教え方があまり良くないと思っていて、このアプリでもっとエキサイティングな音楽の教え方に挑戦したかったのです。科学技術と音楽をミックスし、子どもたちに楽しい音楽の教え方を提供したい。実際に北欧の学校のカリキュラムでは、このアプリが使われています」(「Bjork Digital」プロデューサー ポール・クレイさん)
ビョークのこれまでのキャリアの中から画期的なミュージックビデオがセレクションされ、上映されます。
「サウンドエンジニアの方がうまく調整してくださり、5.1チャンネルまで音の環境を上げてもらいました。大きな画面を通じ、理想的な環境で映像を楽しんでいただけます」(内田さん)
……という3つの展示で体感するビョークの世界観。あまりにもな情報量の多さに、はっきり言って私は圧倒されています。
「ビョークは常に限界に挑むアーティストなので、VRという進化中のツールで実験したかったのです。彼女は常に新しいことやチャレンジングなことに興味があり、作品に新しい何かを入れようとしています」(ポールさん)
たしかに、彼女はチャレンジングでアヴァンギャルドで生々しい。デビューから今までに至る彼女の活動とテクノロジーの関係を俯瞰して見ることのできる展示でした。
(寺西ジャジューカ)
※「Bjork」のoは、ラテン文字のoにウムラウトを付けたもの
あの時は、本当に驚愕しましたね……。傍から見たらその場に座ってるだけなのに、ゴーグルを着けた本人の眼前ではとんでもない光景が展開されている。その仮想世界に引き込まれ、思わずのけぞったり、悲鳴を上げちゃったり……。
VR コンテンツ
昨日(6月29日)から、展示プロジェクト「Bjork Digital―音楽の VR・18日間の実験」が日本科学未来館にて開催されています。「Bjork」とは、言わずと知れたアーティスト・ビョークのこと。彼女の音楽と最先端のテクノロジーの融合により、音楽体験を拡張する実験的なVRが今回は展示されるのだそう。
この企画展のプレス向け体験会が昨日に開催されており、もちろん私も行ってきました!
ところで、なぜ唐突に未来館でビョークの展示プロジェクトを?
「ビョークさんはデビュー当時からコンピューターを作曲に使うなど、先端の科学技術がパラレルに彼女の活動範囲を広げてきたという経緯があります。また、3年前には『Biophilia(バイオフィリア)』というアルバムについて当館で発表するイベントが行われました。それからご縁が続いていて、人類の感覚を変えるかもしれないVRを音楽に取り入れる実験をウチで発表しようという事になりました」(展示企画開発課長 内田まほろさん)
今回の展示は「VR コンテンツ」「アプリケーション」「シネマ」と、大きく3つの見どころが挙げられます。
ビョークがリスナーとつながるために製作されたVR コンテンツ
「Vulnicura VR」は、VR(バーチャル・リアリティ)によってBjorkの最新アルバム『Vulnicura(ヴァルニキュラ)』を体験する刺激的なデジタルハブです。
「ビョークさんの言葉を借りると、CDやライブといったメディアが自分とリスナーをつなげるメディア。でも、例えばCDだったら音だけ、ビジュアルだと四角いモニターで1対1の関係、ライブだと共有はできるものの大きい会場になるとアーティストが小さく見えてアーティストと“つながる”ことができない。でもVRならばどんな仮想現実環境も作ることができ、彼女の表現したい思いだったり、リスナーとつながりたいという気持ちを実現できるんじゃないか? 可能性を感じると仰っています」(内田さん)
というわけでVR展示の専用ルームに案内されると、一人分の椅子それぞれにゴーグル付きヘッドセットとヘッドフォンが用意されていました。このヘッドフォンは、イギリスメーカー「Bowers & Wilkins」によるこだわりの物。これらを装着すると、仮想世界が眼前で展開されます。
●Stonemilker
いきなり、白の衣装を着て海岸に立つビョークが現れる。そして、彼女が『Vulnicura』のファーストトラック「Stonemilker」を歌っています。
ここは、アイスランドの海岸だそう。目の前で歌っているかと思いきや、ビョークは右方向へ移動。視界から消えると、後方から彼女の歌声が聴こえるような感覚になる。その声を追いかけて振り返ると、彼女が情感たっぷりに熱唱しています。ビョークは気ままに右へ左へ動きながら歌唱し続け、それを目で追っていくと、突然ビョークは分身! 2人になったかと思いきや3人になり、それぞれのビョークから歌声が聴こえる。
……という360°の世界が展開されました。VRSEというVRアプリを使った作品です。
●Mouthmantrar
次の部屋へ行くと、またしても1つの椅子にヘッドセットとヘッドフォンが用意されていました。これを装着すると、眼前には真っ赤な世界が。耳に響くのは、『Vulnicura』の収録曲「Mouth Mantra」。歌に呼応して眼前の赤が揺れ、そして白い物体がズラッと並んでいるのが見えます。どうやら、これは歯です。要するに、ここはビョークの口の中。ビョークの口内にいながら、ビョークが歌う「Mouth Mantra」を聴いているという状況です。
歌と同じリズムで、彼女の喉や舌が躍動するのです。
●Not Get
最後の部屋へ行くと、吊るされたヘッドセットとヘッドフォンが。これを装着すると、金の模様が光る黒い女性が出現。
この“金の模様”は、どうやら蛾のよう。彼女が『Vulnicura』の収録曲「Notget」を歌いながら身を振ったりすると、蛾がフワッと飛び立ちます。
この“蛾の女”は自分とかなり近い位置にいるので、彼女が手を振って踊ったりすると自分と接触しそうな気になる、その迫力にビックリして、後ずさりしてしまいます。
次第に蛾がカラフルに変色していき、“蛾の女”は段々と巨大化。最終的には、彼女が歌っているのをこちらが見上げながら聴く体勢になりました。
ビョークが現在の音楽教育を憂い開発されたアプリ「Biophillia」
アルバム『Biophilia』と共に生まれた画期的なアプリを紹介する体験型の教育スペース。アプリに触れたユーザーは、 音楽の理論、科学、テクノロジー、その物理的な力、プロセス、構造の探求へと一気に誘い込まれます。
「『Biophilia』は教育目的で開発されました。ビョークは学校の音楽理論の教え方があまり良くないと思っていて、このアプリでもっとエキサイティングな音楽の教え方に挑戦したかったのです。科学技術と音楽をミックスし、子どもたちに楽しい音楽の教え方を提供したい。実際に北欧の学校のカリキュラムでは、このアプリが使われています」(「Bjork Digital」プロデューサー ポール・クレイさん)
最高の音楽環境でビョークのキャリアを振り返る「Cinema Room」
ビョークのこれまでのキャリアの中から画期的なミュージックビデオがセレクションされ、上映されます。
「サウンドエンジニアの方がうまく調整してくださり、5.1チャンネルまで音の環境を上げてもらいました。大きな画面を通じ、理想的な環境で映像を楽しんでいただけます」(内田さん)
……という3つの展示で体感するビョークの世界観。あまりにもな情報量の多さに、はっきり言って私は圧倒されています。
「ビョークは常に限界に挑むアーティストなので、VRという進化中のツールで実験したかったのです。彼女は常に新しいことやチャレンジングなことに興味があり、作品に新しい何かを入れようとしています」(ポールさん)
たしかに、彼女はチャレンジングでアヴァンギャルドで生々しい。デビューから今までに至る彼女の活動とテクノロジーの関係を俯瞰して見ることのできる展示でした。
(寺西ジャジューカ)
※「Bjork」のoは、ラテン文字のoにウムラウトを付けたもの