コネタで以前、「佐川男子」を取り上げています。額の汗を光らせながら笑顔で必死に働く姿は、女性陣の琴線に触れるのでしょう。非常に大きなムーヴメントとなりました。
そして、「書店男子」も記事にしましたっけ。気品と憂いと触れたら壊れてしまいそうな繊細さは、女性陣のハートをがっちりとキャッチ! こちらも、一世を風靡するムーヴメントとなっています。

"男らしさ"を背中で教えてくれる「職人男子」が、密かな人気


話は変わって。昨年の12月にある写真集が発売され、話題沸騰中です。その名は、『職人男子』(税込1,512円)。


総勢17名の若く美しい名工たち……要するに「職人男子」を、この写真集では紹介。「野鍛冶職人」「指物師」「江戸小紋職人」「陶芸家」などなど、普段はなかなか見ることのできない彼らのひたむきな仕事ぶりがしっかり掘り起こされています。



ところで、そもそも「職人男子」は今、女性からの人気を集めているのでしょうか? この写真集を企画した辰巳出版の山野栞さんに伺いました。
「普段なかなかお目にかかれない職業の方たちではありますが、最近では"職人"を扱った漫画も出版され、女性たちの間で注目度が高まっています。また、『一度知ると気になって仕方がない』と、打てば打っただけ響く魅力を女性たちはたしかに感じています」(山野さん)

そうだったのか……。「職人男子」ムーヴメントは、密かに芽吹き始めていた! ならば、もうちょっと突っ込んで聞いてみたい。彼らの何が、そんなにいいんですか!?
「"草食"を通り越し、それまでの男性像を覆すような"ジェンダーレス男子""絶食系男子"など、男臭さが排除された可愛くて綺麗な男の子の台頭が著しいですが、そんな時代の流れに見向きもせず、ひたむきな仕事姿で"男らしさとは何か"とストレートに教えてくれる彼らの背中に、女性たちの心は釘付けになってしまうのでしょう」(山野さん)


なるほど……。ということは、今回のような写真集が生まれるのは道理です!
「数年後に東京オリンピックが控えていることもあり、国内外で『"日本のものづくり"の素晴らしさを再認識していこう』という動きが強く感じられます。そうした流れのなか、日本の伝統を次世代へとつなぎ革新していく20代からの若き名工たちの姿には、女性の心をグッとわし掴みにしてしまう魅力があるのではないか? と思い、テーマとして設定いたしました」(山野さん)

腕があり、そして容姿の優れた職人を紹介している


この写真集の基本構成は、「写真」プラス「インタビュー」。この2つの角度から一人の職人にスポットを当て、それが17人続いていきます。
「まず、めったに見ることのできない仕事中の写真が見どころです。まなざしや手つきなど、見れば見るほど発見があると思います」(山野さん)


「また、貴重なインタビューや一日のタイムスケジュールなどプライベートな面も収録しました。『この職人さんはこう言ってるけど、こっちの職人さんの回答はまったく違うぞ(笑)』、『私が会社で働いてるこの時間、職人さんはこんなことしてるんだな』と、妄想を楽しむことも可能です(笑)」(山野さん)

私も実際に手に取って写真集の中身を拝見したのですが、とにかくイケメンの多いこと!


「もちろん登場していただく方を選ぶ際は、容姿面も意識しています。職人の皆さん共通で根底に熱い想いがあり、それが姿勢や表情にありありと出ているので、そのカッコ良さが結果的に読者の皆様にも伝わるのではないかなと思います」(山野さん)
今回の写真集では、あえて"大御所"ではなく若い職人も紹介。とは言っても、それぞれのジャンルで有名な職人ばかりが登場しているそうです。
「例えば、切子の堀口徹さんは史上最年少で『伝統工芸士』という国家資格を取得したすごい人です」(山野さん)

そんな中、ちょっと気になる一枚を発見。陶芸家の川尻琢也さんのページに、奥様とのツーショットが掲載されてます。これ、女性陣からのっぴきならないリアクションが寄せられる気がするのですが……?
「奥様とのお写真については『お似合いでほほえましい』という意見もありますが、同時に『できれば載せてほしくなかった……』という切実なお声も頂戴します(笑)」(山野さん)

とは言え、写真集への反応はおおむね好評。
「日用品から娯楽まで千差万別にものが溢れかえっている現代で、あえて職人の道を選んだ彼らの姿と熱い想いは多くの読者にとても新鮮に映ったようで、『カッコ良かった!』という反響がやはり多いです」(山野さん)

もちろん、この写真集を企画した山野さん御自身も「職人男子」の虜です。
「職人というと、『頑固』、『無口』といったイメージが付いて回るかもしれませんが、実際にお会いしてみるとそんなことは全くありません。むしろ皆さん好きでやっている仕事ですので、その世界を面白く話す技術に長けている方が多いと感じました。職人さんの講演会など、お話を聞ける場がもっともっと増えたらいいのに……。そしたらきっと、より多くの女性が職人さん自身の魅力、そして彼らの作り出す作品の魅力の虜になると思います」(山野さん)



一方でこの写真集、決してターゲットは女性のみではありません。
「女性だけでなく、真剣に職人の道を目指している方や、これからどう生きていこうか迷っている方も、彼らの世界を覗くことで人生の選択肢の広さを実感できると思います」(山野さん)
個人的には、「職人の世界に興味を持つ中高生が読むと参考になるのでは?」という印象を受けました。

そんなこの『職人男子』、なるべく多くのジャンルを紹介したかったこともあり、1ジャンルにつき一人という形で構成されています。
「今回ご紹介したジャンルはまだまだほんの一部ですので、本書を機に『日本の伝統工芸についてもっと知りたい!』と思ってもらえたら嬉しいです」(山野さん)

やはり、内面の凛々しさは外面に浮き出てくる。この写真集を見て、私は改めて確信しました。
(寺西ジャジューカ)