街なかでとてつもなく大きいファスナーの付いたリュックサックを背負っている人を見かけた。スライダー(引き手の部分)が握れるほどデカイ。そういえば、ファスナーの最大サイズってはどれくらいなのだろう……。ファスナーメーカー大手YKKの国内販売会社である、YKKファスニングプロダクツ販売に話を聞いてみることにした。

「世界最大かはわからないのですが、弊社のファスナーですとこちらが最大サイズになります」
同社マーケティング統括室の武藤康史さんがそう言って、実物を見せてくれた。ファスナーのサイズは、チェーン部分の横幅の広さを基準に数字で表される。数字の大きさに比例してサイズも大きくなり、同製品は「30」に該当するという(一般的なファスナーは3〜8程度)。比較のために置いた5.5インチのスマートフォンとスライダーの大きさがほとんど変わらない!


筆者が見かけたものと同じかは定かではないが、こちらもリュックサック等で使われているそうだ。持ってみると、樹脂製で思っていたよりも軽く、普通のファスナーと同じくらいなめらかに開閉できた。

元々は漁網用ファスナーだった


武藤さんによると、元々はいけす・定置網などに使用するため開発され、アパレル用に改良を加えてできたものだという。見本も持たせてもらったが、スライダーが金属のため手にずっしりくる重みがあった。海の中で使う場合、強度・塩害などを考慮し金属製にしているそうだ。そのままアパレル製品に使うと重すぎてヘタってしまったり、人にぶつかった時に危ないため、引き手や噛み合う部分は樹脂製になった。


実際にお店で買うことはできるのかも聞いてみたところ、小売は行っていないため手芸店などで入手できないが、特約店で購入できるそうだ。

ファスナーの最大サイズは分かったが、これ以上大きくすることはできないのだろうか。
「単純に大きくすることはできます。ただ、強度や重量などをクリアしたうえでどこまで大きくできるかは、お客様が求める条件にもよります」

最小サイズは着せ替え人形に使われていたことも


逆に最小サイズのファスナーも見せていただいた。こちらはスーツの内ポケットに使われているので見覚えのある人も多いかもしれない。他の用途として、着せ替え人形の服に使われていたこともあるそうだ。



YKKのファスナーは何種類あるのか


YKKではいったい何種類のファスナーを扱っているのだろうか。
ファスナーは大きく3種類に分けられる。エレメント(閉じると噛み合う部分)が金属でできている「金属ファスナー」、樹脂製のエレメントがコイル状になっている「コイルファスナー(樹脂ファスナー)」、樹脂製のエレメントを射出成形した「ビスロン(R)ファスナー」だ。


しかし、お客の要望にあわせて、さまざまな技術を組み合わせたファスナーを作ってきたため「何をもって1種類とカウントするのかは難しい」そう。組み合わせも多数あるという。
取材時に伺った部屋にも、左右に強く引っ張るとすぐに外れるファスナーや、エレメントがビース状のファスナー、紙と樹脂を混ぜた環境にやさしいファスナーなどが展示されていた。


(茶柱達也)