かつて、県知事として長野県庁に初登庁した田中康夫氏が県職員に名刺を渡すや、いきなりその名刺を折られてしまうというニュース映像が話題になりました。
今となっては「あの方はすごく優秀な人」と田中氏自身による件の職員へのフォローを認識していますが、我々が受けたインパクトは物凄かった。だって、当時はあの職員に対し「何を考えているのか?」と戸惑いと不快さを覚えたもの……。

要するに「名刺を"折る""破る"」という行為に、人はとてつもない衝撃を受けるのです。

名刺交換は、印象に残らなければ意味がない。だから、破る


この"インパクト"を逆利用した名刺が生まれ、話題になっています。「やってみたいことやってみる協会」が商品化した『第三の名刺』(2,000円/100枚)は、言わば"破る用の名刺"です。

どういうことなのか? まず、普通に名刺交換をします。そして、自分の名刺を渡した後に「これ破っていいんですよ。どうぞ」と相手に伝えてみる……という使い方が推奨されている模様。ちなみに、現物はこんな名刺です。


慌てないでください、まだ破けてません。元から、"破り目"が付いてるんです。何してんのよ!

よりにもよって、なぜこんな名刺を製作したのか? 同協会に、事の経緯を伺ってみました。
「形式的に行なわれている名刺交換ですが、印象に残らなければ全く意味がありません。名刺交換で印象に残るにはどうすればいいのだろうと考えた際、『名刺を破る』という行為は、すごくインパクトがあることだと思い付きました」(同協会・櫻井寛己さん)
なるほど、相手にインパクトを残すために「破る」のか。とは言え、振り切り方が極端だな……。
「私は、サラリーマン時代に交流会で名刺を破いたという経験があります。もちろん、いきなり破いたのではなく相手の了承を得た上での行為だったのですが(笑)。破った直後は周りから批判の声も少し上がりましたが、数年後に『あれは印象に残っている』という声を何度も聞き、『名刺を破ることはやはりインパクトのあることなのだ』と実感したんです」(櫻井さん)
「名刺を破る」なんてマナー講座では決して教えてもらえないタブーな行為ですが、だからこそ印象を残すことができる。常識とモラルを跳ねのける名刺が、実体験を元に開発されたのです。

相手に破いてもらってもいいし、自分が破いてもいい


ちなみに『第三の名刺』には、3つの種類がラインナップされています。横書きバージョンには4つに破れるデザインと8つに破れるデザインの2種があり、縦書きバージョンには6つに破れるデザインの1種があります。



「相手が複数いる際には、自ら名刺を破いて一枚の名刺から複数に渡すことも想定しています。ただ面白いだけでなく、実用性も兼ねました」(櫻井さん)


"相手に破いてもらう方法"と"自分で破る方法"、どちらもありです。

もちろん、この名刺は物議を呼んでます。
「斬新、新しい、面白いなどの声もいただいていますが、『意味がわからない』という反響も数多いです。『賛否両論あるギリギリの商品だよね』と言われたこともあります」(櫻井さん)
実際にこの名刺を活用しているユーザーは、10〜30代の男性が多いそう。学生が初めて名刺を持つ際に興味先行で購入したり、はたまたサラリーマンやフリーランスの人が"サブ名刺"として持ち歩いてみたり。

やってみたいことをやってみたら"破る用の名刺"が生まれた


それにしても、商品名である『第三の名刺』とはどういうことなのか? ネーミングの意図がわからずじまいです。
「会社で使う名刺を『第一の名刺』、団体などの名刺を『第二の名刺』、どこにも属さない名刺を『第三の名刺』と定義し、この名前を付けました」(櫻井さん)
スミマセン、もうちょっとわかりやすく説明していただけませんか……?
「世界では3億人が名刺を使い、年間100億枚の名刺が流通しています。もはや、名刺なんて意味のない紙だと思いました。名刺なんてゴミのようなものだと……。しかし、どこにも属さない『第三の名刺』ならば、"渡す""受け取る"という形式的な名刺交換にとらわれることがなく、今までの固定概念を壊します。『第三の名刺』を持つことにより、名刺交換で一番印象的な人になることは間違いありません」(櫻井さん)



なるほど、さすが「やってみたいことやってみる協会」。名は体を表しています。
(寺西ジャジューカ)