連続殺人犯"シリアルキラー"。人々を恐れさせ、厭忌されるものだ。しかし、どこかで彼らの危うい魅力に惹きつけられる人もいるのではないだろうか?

そんな衝動に駆られてしまった人に足を運んでほしいのが、6月9日から7月10日まで銀座・ヴァニラ画廊で開催される『シリアルキラー展』だ。



禁断のコレクションの一部を紹介


世界各国のシリアルキラーにまつわる絵画、セルフポートレート、手紙などを収集するHN氏のコレクションから、厳選された約200点が展示されている。どれも貴重なものばかりだ。



『シリアルキラー展』のキービジュアルにもなっているジョン・ウェイン・ゲイシーの描いた殺人ピエロ。
ゲイシーは33人もの少年に性的虐待を加えて惨殺した殺人鬼。彼の描くピエロは、スティーブン・キング原作の映画『IT』に登場する殺人ピエロ、"ペニーワイズ"のモデルとなっている。


パートナーと共に300人〜1000人以上の殺人を自供した、ヘンリー・リー・ルーカスの自画像。映画『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターのモデルの一人。



1990年に若い女性5人を殺害し逮捕された、ダニエル・ハロルド・ローリング。
殺害現場に踏み込んだ警察官と目が合うように生首を配置するなど、異常性の高いシリアルキラー。逮捕後は"ジェミニ"という名のもう1人の人格が犯行に及んだと自供するが、認められることはなく2006年に死刑執行。

怪しい魅力「シリアルキラー展」の見どころは


『シリアルキラー展』開催のきっかけや見どころについて、主催するヴァニラ画廊の大沼さんに話を伺った。



――シリアルキラー展を開催した経緯を教えてください。
以前からHNさんのコレクションを展示したいと話しておりました。実際にコレクションを拝見させていただき、作品のもつ「負の力」に圧倒され、展覧会の開催を検討しました。



――シリアルキラー展の見どころを教えてください。
HNさんは1000点以上のコレクションを持っていますが、今回は映画やアート作品にフォーカスをあてて選んだ200点を展示しています。

日本では想像しがたいのですが、海外では囚人たちが牢屋の中で絵を描いて報酬を得ることが可能だそうです。絵の中でも褒められた分野のものではないと思う方もいらっしゃることでしょう。しかし、こういったものが存在するということを感じとっていただきたいですね。

また、キャプションには生い立ち、どういう刑に服し、その後どうなったのかも詳しく書いてあるので、作者の背景と作品を照らし合わせて鑑賞していただきたいです。



――これは見て欲しいと言う作品はありますか?
殺人ピエロを描いたジョン・ウェイン・ゲイシーですね。色使いや構図、モチーフなどに惹かれて、世界中にファンがいる作家です。ゲイシーの作品が一堂に集まる機会はそう多くはないでしょう。

また、アートワークではありませんがあとは、エド・ゲインもぜひご覧頂きたいと思います。
エド・ゲインの墓石の拓や、実際に使っていた聖書も飾っています。さまざまな映画のモチーフにされている人物で、なかなか貴重な作品です。
実際に起こした殺人は2件なので、シリアルキラーと言わないこともあるそうですが……。しかし、カニバリズムであったり、人間の顔の皮をはいでマスクを作ったり、身体の皮をはいでベスト作ったりと、猟奇的なことを行っています。



シリアルキラーの心の闇


キャプションに描かれている作者の背景を見ると、異常にIQが高かったり、子どもの頃に虐待やネグレクトなど強烈な体験をしていたりと、幼いころから一般的とは程遠い人生を歩んできた人物も多い。それゆえ誰にも理解をしてもらえず、心の闇に深く入り込み殺人鬼と化してしまった人もいるだろう。

その一方で、レイプされた際に抵抗して男を銃殺したことをきっかけに、6人を殺したアイリーン・キャロル・ウォーノスのように大人になってからの体験がきっかけとなる人物もいる。

そう考えるといつ何時、自分や周りの人物がシリアルキラーになってもおかしくないような、薄ら肌寒くなる考えも浮かんでくる。



見る人により感じとり方が違うであろう『シリアルキラー展』。興味を持った方は彼らの心の闇に触れてみてはいかがだろう。丁寧なキャプションや説明付きのパンフレットもあり、前知識なしでも気軽に楽しめる展示になっている。




(舟崎泉美・イベニア)