『太陽にほえろ!』の舞台「七曲署」では、刑事同士がニックネームで呼び合うのが常です。ゴリさん、山さん、長さん、デンカ、ボス、ドック、ロッキー、マカロニ、ジーパンなどなど……。
改めて見ると突拍子もない呼び名ばかりですが、このコミュニケーションが功を奏して彼らの士気は高まる一方。七曲署はチームワークも良さそうです。

「自分の夢をニックネームに込める」がルール


これ、現実の社会にも存在する風景でした。ITサービス事業を運営するジー・ブーン株式会社(東京都千代田区)は、なんとニックネームで呼び合うことを制度化してしまっています。その名はズバリ、「ニックネーム制度」。創業した2006年から取り入れられました。



とは言え、ただ愛称で呼び合うだけじゃない。そこには、一つのルールがある模様。
「当社は『ビジネスを通して自分の夢を叶える』という理念があり、企業の夢と社員の夢が融合してこそ最大のパワーが発揮されると考えています。ですので、このニックネーム制度には『自分の夢をニックネームに込める』というルールを定めました。ニックネームで呼ばれる度に自分の夢を意識化し、自分の夢を忘れないように……という発想です」(担当者)


日々の忙しさに追われると、自分の夢や目標を忘れてしまいがち。それを防ぐことが、この制度の目的にはあります。だから、名前では呼ばないし役職でも呼ばない。社長含め正社員及び正社員を目指している契約社員は、年齢・役職関係なく全員ニックネームで呼び合います。

結果、効果は目に見えて表れました。
「役職などで呼び合うよりお互いの距離感が縮まり親近感が強まるので、上下関係を気にせず意見を出しやすい雰囲気が出来上がりました。また、ニックネームを通してお互いの"夢"を知ることもでき、相手を応援するきっかけにもなります」(担当者)

デメリットは本名を忘れてしまうこと


スタッフ一人一人のニックネームが決定するまでには、正式な手順があります。まず社員各自が自分のニックネームを考案し、その案が社長に承認されなければいけない。
「ちゃんと考えておらず適当に決めたようなニックネームやウケを狙っただけのものは却下されることがあります」(担当者)

こうして、同社には以下のようなニックネームが生まれています。

●人民 Oh 虹(ジンミンオーニジ)


憧れのジミー大西に似たニックネームをつけたかった。「人民」とは会社の仲間を指し、 仲間を見たときに覇気のない白黒でいるのではなく虹色に輝いていている方が素敵だから、仲間を見て「Oh! 虹色♪」と感嘆していきたいという思いも乗せている。

●ピュア・ピュア・リップス


「心地よさでつながるような人になりたい」という夢と、本名が「純」なので「ピュア」というニックネームにしようと思った。また入社時に「唇が綺麗」と褒められたので、松田聖子の「Rock'n Rouge」の歌詞をつなげ「ピュア・ピュア・リップス」になった。

●さささやかながらちょっとジャック


夢探しに出る海賊船の船長をイメージし、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の「ジャック・スパロウ」から取って「ジャック」とつけようとしたが、社長から「まだ船長のジャックのイメージにはなれていない」とダメ出しされる。いずれ「ジャック」になることを目指し、「ささやかながらちょっとジャック」になった。

●となりにまにあっくなアレン


夢心溢れるものといえば、ジブリ。『となりのトトロ』が思い浮かび「となりの」という名字を付けようとしたら、社長に「となりに」の方が面白いからそうしようと提案された。また、社長に自分の価値観を話していたら「君はだいぶマニアックだなぁ。それもニックネームに入れよう」ということに。
「アレン」は、背が低いというハンデや逆境を乗り越え、圧倒的パフォーマンスで世界中の人々に夢を与えたNBA選手の「アレン・アイバーソン」を尊敬しているため。

「正式ニックネームは上記の通りですが、長いので普段は『民Oh(たみお)』、『ピュア』、『ジャック』、『アレン』と呼ばれています」(担当者)

ここで気にかかるのは、みんながこのノリに付いていけているかということ。だって、壁を作りたがるタイプの人もいるじゃないですか……?
「最初は違和感を覚えたり、恥ずかしがる社員もいましたが、どの社員もだんだんと慣れるようです。唯一のデメリットはお互いの本名を忘れてしまうことです」(担当者)
しかも会社説明会で「ニックネーム制度」について説明するようになってから、就職希望者数は大幅にアップしたらしい。
「新入社員が入ると、まず『ニックネームは何?』『なんでそのニックネームにしたの?』といった会話が繰り広げられます。このような会話により、緊張しがちな新入社員も打ち解けやすいと好評です」(担当者)

お互いを呼び合ううちに、モチベーションがアップ! なんか、エールを交換し合っているようにも見えます。
(寺西ジャジューカ)