プロレス漫画界に異変あり!? ファン目線の“あるあるネタ”満載「可愛い系プロレス漫画」オススメ4作

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『タイガーマスク』に『プロレススーパースター列伝』『1・2の三四郎2』、週刊少年ジャンプ作品ならば『キン肉マン』に『THE MOMOTAROH』!

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漫画史に燦然と輝く名作プロレス漫画の数々。それらの作品は、いずれも"漢"の漫画というイメージが強いことかと思います。

しかしながら、プロレス好きの女性ファン、通称"プ女子"の登場に象徴されるように、常に団体もファン層も進化を続けているのがプロレス界。

プロレス漫画もさにあらずで、可愛らしい絵柄の"燃え"ならぬ"萌え"な新機軸のプロレス漫画が続々と登場しているのです。プロレス漫画界の維新軍とでも呼ぶべき、オススメの"可愛い"プロレス漫画を紹介させていただきます。

プロレス愛溢れる"あの会社"から誕生したプロレス漫画『ロリクラ☆ほーるど!』

可愛い絵柄で描かれた新世代のプロレス漫画……いわば、プロレス漫画界の"ニューリーダー"とでも呼ぶべき一連の作品群の中から、先ずご紹介したいのが、この『ロリクラ☆ほーるど!』。

WEB漫画サイト『マンガボックス』で好評連載中の作品で、今年に入ってファン待望の単行本第1巻が発売されました。

本作は、とある女子校にあるプロレス部の活動を描いた四コマ漫画。プロレス部が舞台となっていますが、ストーリーはスポ根系の熱血ストーリーではなく、プロレスを愛して止まない女子部員たちの学校生活を賑々しく描写した、所謂"萌え四コマ"に近しい作風となっています。

主人公は、プロレスが苦手だったにも関わらず、半ば強制的に入部させられた"たーにゃ"、ストロングスタイルな試合運びを貫く部長の"なるみ"、関節技が得意なハーフ少女の"カロリー"、ちょっぴりお馬鹿ではあるものの元気いっぱいの"あこ"、凶器を持つと性格が豹変する"さき"(ちなみに、この娘は本作のお色気担当。場外からリングに生還する時のディック・マードックばりに、しばしばパンツが脱げてお尻が出ます)というそれぞれに性格が異なる女の娘、5人組。

この娘たちが部室や校内で、そして時には場外(校外)でプロレスまみれの日々を送る姿がハイテンションなギャグ満載で綴られており、かしましくもユーモラスな漫画となっています。丸っこく可愛い絵柄は勿論のこと、ギャグの熱量も魅力の作品です!

また、作品内には、WWE(アメリカにある世界最大のプロレス団体)ネタを中心としたマニアックなパロディや台詞回しが多数登場。この『ロリクラ☆ほーるど!』、可愛い顔して、実はそのプロレス愛と知識は、大日本プロレスのデスマッチばりに骨太でハードコアなのです。

それもそのはず、『ロリクラ☆ほーるど!』の作者は、『エキサイティングプロレス』シリーズや『レッスルキングダム』といったプロレスゲームのリリースで知られるゲーム会社「ユークス」の社員さんなのです。成る程、コアなアメリカンプロレスネタも納得。

更に、ユークスは、現在のブシロード体制になる前に、新日本プロレスの親会社を務めていた会社でもあり、実は、本作はその時期にユークスのBLOGで連載をスタートした作品という出自があるのです(当時の連載タイトルは『ぶかつのじかん』)。

総合格闘技の人気に押され、苦しい時代を強いられていた頃の新日本プロレスを支え続けたユークス。数多くの人気選手を擁し、現在のプロレスブームを牽引する業界最大手の団体として新日がプロレス界に返り咲く、その礎を作ったユークス。そして、そのユークス体制のもと、誕生したプロレス漫画『ロリクラ☆ほーるど!』。

そんな時代を知っているファンにとっては、この漫画の単行本化は非常に感慨深いものがあります。可愛さとおもしろさに加えて、プロレスの歴史とファンの思い入れも詰め込まれた『ロリクラ☆ほーるど!』。沢山の方に手にとっていただきたい一冊です。

"プロレス者"として分かる……分かり過ぎるぞ、その気持ち! 『俺のプロレスネタ、誰も食いつかないんだが。』

続いて紹介したい作品が、さかなこうじ先生の『俺のプロレスネタ、誰も食いつかないんだが。』です。

この物語は、熱狂的プロレスファンであり、大の天龍源一郎ファンの中学生、虎山仁(クラス内でのアダ名は"虎")。物語は、虎が謎めいたクラスメイトの東雲たま子に、自分と同じプロレスを愛する"プロレス者"としてのシンパシーを感じるところからスタートします。

明らかにプロレスファン(全日派、特にスタン・ハンセンのファン)で、プロレス技の使い手であるにも関わらず、自身のプロレス愛をひた隠しにする、たま子。この漫画は、そんなたま子と虎の二人を軸に、プロレスを愛する者同士の友情や家族愛、そして、淡いボーイ・ミーツ・ガールのドラマが描かれます。

プロレスファンが主人公の漫画ということで、プロレスが好きな人ならば共感必至の"ファンあるある"なネタを中心にストーリーが展開されます。

時に、プロレスラーの熱い戦いに心震わせ、時に、世間からのプロレスに対する冷めた視線に対してプロレス愛を武器に立ち向かう。本作では、そんなプロレス者特有の暑苦しくも真っ直ぐな生き様がユーモアを絡めつつ、活き活きと描写されているのです。

この作品の舞台となるのは、他団体時代に突入し、プロレスブームに沸く1993年の日本。この頃は、メジャー団体である新日本プロレスや全日本プロレスがドーム興業で空前の観客動員数を記録し、インディーシーンでは大仁田厚が涙のカリスマ化するなど、プロレス界が非常に熱を持っていた時代です。

とはいえ、世間のプロレスに対する偏見は根強く、当時の熱気に反してファンは様々な場面でヤキモキせられた時代でもあります。まずは、この時代設定が何とも絶妙。

そんな時代にプロレスラーへのリスペクトを胸に、一途に突き進む主人公の姿は、ひたすら眩しく、心から応援したくなります。また、たま子ちゃんの健気さがいいんですよ……。

更に、劇中で描かれる「好きなものへの愛をなかなかカミングアウトできない辛さ」や「新規ファンを蔑むマニア問題」といった"ファン"ならば、プロレスに限らずあらゆる場面で見られる普遍的なテーマ性は、虎やたま子と同じく「愛する何かを持つ者」たちにとっても、これまた共感間違いなし。

全2巻とコンパクトにまとまってはいるものの、故に青春漫画としてもプロレス漫画としてもドラマが凝縮されており、非常に読み応えのある作品に。プロレスファンのみならず、好きな物に対して一途な情熱を燃やしているあらゆる人に読んでいただきたい漫画です。

屈強な新日レスラーたちが、こんなに可愛いキャラクターに!? 『しんにち!』

強者のオーラを全身から放ち、その鍛え上げた肉体で、どんな攻撃も跳ね返し、リングを降りれば常識破りかつ豪快な言動でファンを魅了してくれる……それがプロレスラー。そう、プロレスラーとは、まさに"カッコ良さ"の象徴なのです!

しかし、そんなカッコ良いプロレスラーをチャーミングな"可愛い"キャラクターとして描いた異色の漫画作品があります。それが、この『しんにち!』です。

『しんにち!』は、そのタイトル通り、新日本プロレスの協力のもと、同団体の所属選手が実名で漫画の主役として登場するユニークな四コマ作品。

この漫画の中で新日レスラーたちは、「新日本プロレス高専」という架空の学校に通い、プロレスを勉強している高校生という設定になっています。

トコトン明るい性格で負けず嫌いな棚橋くん(棚橋弘至)、硬派だけど実はムッツリスケベな後藤くん(後藤洋央紀)、厳しくも真摯にプロレスや生徒と向き合う真壁先生(真壁刀義)、天才的なプロレスセンスと恵まれた肉体を持っているものの、物忘れが異常に激しく無口なオカダくん(オカダ・カズチカ)……などなど、劇中に登場するキャラクターは全てモデルになった選手の性格やファイトスタイルが下敷きとなっており、新日ファンならば非常に親しみやすい造型に。

一方で、永田裕志はプロレス部のマネージャーを務めるゴツい体型の女子生徒になっていたり、獣神サンダー・ライガーをオマージュした覆面レスラーの正体が可愛い女の娘(しかも、名前は"山田恵")だったりと、思い切った改変が加えられたキャラもおり、作中の登場人物と実在のレスラーとの対比が楽しい作品です。

この漫画の作者は、『まじかるストロベリィ』や『キミとおやすみ』などの作品で知られる、まつもと剛志先生。

『まじかるストロベリィ』を世に送り出した漫画家さんが、プロレス漫画!? と、先ずは、その意外性に驚かされますが、これがまつもと先生の柔らかでポップな絵柄とギャグセンスが新日レスラーのキャラクターと上手くミックスされており、学園ギャグ漫画として非常に読み応えのある作品となっています。

また、劇中には細かいプロレスネタが散りばめられており、そうしたネタの数々も見どころの一つ。しかも、基本的には陽性のギャグ漫画作品でありつつも、要所要所でプロレスのドラマ性とその真髄を描く場面もあり、プロレス漫画として痒いところに手が届く、絶妙な作劇が素晴らしい!

いわば、"カッコ良い"と"可愛い"の異種格闘技戦。大幅なデフォルメこそ加えられていますが、プロレスの見どころや新日レスラーの特色を教えてくれる「新日本プロレスファン入門編」的な手引書として読んでみるのもアリですよ!

インディープロレス団体"推し"なプ女子の日常を漫画で体験! 『プ女子日和』

リングの上で戦うレスラーと同じく、そのファンにも個性的な人が多いのもプロレスの特徴といえます。いうなれば、プロレスファンはキャラが"濃い"。

そんな独特のファン気質を戯画化し、熱量のある高濃度のプロレスギャグに高めた先達として、徳光康之先生が月刊少年マガジンで連載していた『最狂超プロレスファン烈伝』という名作漫画があります。

この作品は、大学のプロレス研究部を舞台に、それぞれに"推し"の団体、選手を持つ熱狂的なプロレスファンたちが、プロレスに対する過剰な愛と熱情故に巻き起こすドタバタ騒動を描いています。

"プロレスラー"ではなく、"プロレスファン"を描いた作品として、先ほど紹介した『俺のプロレスネタ、誰も食いつかないんだが。』などは、この『最狂超プロレスファン烈伝』に系譜にあたる"プロレスファン漫画"といえるでしょう。

WEBコミックサイト、『GANMA!』で連載中の『プ女子日和』も、そうしたプロレスファン漫画の一つ。

本作は、プロレス界で絶大な人気を誇るインディー団体、DDTプロレスリングとのコラボ企画として誕生した作品であり、作者の早蕨たまお先生は、現役バリバリの熱狂的DDTファン(飯伏幸太ファン)。まさに、現在進行形でプ女子な女性漫画家さんなのです。

プ女子の日常を描いたエッセイ漫画といった趣の作品で、ハードな打撃戦から華麗な空中戦、更にはコミカルな試合まで、ありとあらゆる試合でファンを楽しませてくれるDDTに魅了された女性ファンの日々が綴られています。

会場に選手の応援フラッグを飾る「幕持ち」と呼ばれるファンのエピソードや、紙テープの投げ方についての一考察、時には選手に対する妄想なども描かれており、インディー団体ファンなプ女子の目線と脳内を擬似体験できる内容に。

スッキリとした線で描かれたDDTレスラーの姿も、それぞれの特徴が上手く描写されており、DDTが好きな方ならば一気に、作者さんに親しみやすさを感じること間違いなし。絵柄にもネタにも、DDTへの愛が溢れまくっているのです!

個人的には、作者さんのプロレス観戦仲間で、どインディー(プロレス界には、インディー団体よりも更にマニアックかつコアな"どインディー"と呼ばれる団体があるのです)ファンだというガチ美さんが気になり過ぎます。こういうガチなプ女子さんと頑固プロレスとかを一緒に観戦してみたいです……。

以上、オススメの"可愛い"プロレス漫画を厳選して4作品、ご紹介させていただきました。プロレス人気の高まりと共に、こうしたユニークな漫画作品が続々と登場してくれることを、プロレスファンとして、また漫画ファンとして、長州力に一騎打ちを迫っていた時の大仁田厚ばりに切望しております。"可愛い"と"プロレス"の間にある境界線を、新世代のプロレス漫画には、次々にまたいでいただきたい!