実は超強力な免疫システムを持っていたコウモリ(写真はイメージ)

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豪州動物健康研究所や連邦科学産業研究機構、シンガポール国立大学などによる共同研究チームは、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)といった致死性の高い感染症を媒介するコウモリが、自身は感染せず生存できる理由について、免疫力を24時間継続して機能させているためと発表した。

人間とコウモリの生活圏が近い地域では、コウモリが媒介する感染症が流行することがあり、エボラ出血熱やMERS以外に、狂犬病や新興感染症(近年発見されたウイルスによる感染症)なども確認されている。これらの感染症は、人間以外の哺乳類にとっても高い致死性を持っているにもかかわらず、保菌しているコウモリが死なない理由はわかっていなかった。

研究チームは、豪州に生息するオオコウモリの遺伝情報を調査。免疫系の詳細な解析を実施したところ、異物の侵入に反応し、細胞が分泌するたんぱく質「インターフェロン」が、コウモリは何かに感染していなくても常時放出されていることがわかった。インターフェロンはウイルス増殖を防ぐため、細胞増殖の抑制(細胞の自己破壊)をおこなう。

その副作用として、発熱や疲労、頭痛、筋肉痛などが引き起こされ、人間では常時放出されることはないが、なぜコウモリにはこうした副作用が起きないのか、今回の研究ではわからなかった。研究者らは今後も調査を続け、人間の感染症予防や治療に応用していきたいとコメントしている。

発表は、2016年2月22日、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に掲載された。

参考文献
Contraction of the type I IFN locus and unusual constitutive expression of IFN-α in bats.
DOI: 10.1073/pnas.1518240113 PMID: 26903655

(Aging Style)