Windowsに搭載されている絵文字みたいな謎のフォント「Wingdings」を目にしたことはあるものの、一度も使ったことがない、という人も多いはず。あまり使用されないWingdingsですが、一体なぜ存在しているのか?という知られざる歴史のムービーがYouTubeで公開されています。

Why the Wingdings font exists - YouTube

円と十字架を組み合わせたマークや、指さしマーク、六芒星など、「一体いつ使うのだ?」と思ってしまうフォント「Wingdings」を目にしたことがある人も多いはず。



実際のところ、使われる頻度の少ないWingdingsフォントですが……



その歴史は、実はインターネットが登場する前、フォントが主に出版や印刷業界でのみ取り扱われていた時にまでさかのぼります。現在はタイピングしたものを印刷する、という方法が採られていますが、タイピングが存在しなかった時代も存在します。



つまり、文字をタイプするのではなく、1つ1つの文字を手で並べていた時代です。



もちろん、この方法だと記事を出版・印刷するまでに多大な時間を要しました。



また、装飾文字は通常の文字とは別ものなので、さらに手間がかかります。



そこで、印刷会社が印刷の簡易化を図るために作り出したのがDingbat、いわゆる絵文字フォントです。



文字だけで地味な紙面も……



Dingbatを使えばあっという間に華やかになります。



記事にあわせてわざわざ装飾文字のタイポグラフィを1から作らなくとも、Dingbatを使えば効率的に装飾ができるとして、よく利用されるようになりました。



同じ時代に、ヘルマン・ツァップは書体デザイナーとして活躍していました。



ツァップの作ったツァッフィーノは活版印刷で使われていましたが、その美しさが注目を集め、現在でも多くのコンピューターにフォントとして搭載されています。



いわばアナログ時代とデジタル時代の橋渡し的存在だったツァップは、Zapf Dingbatsというオリジナルの絵文字もデザインしています。



そして、チャールズ・ビゲロウとクリス・ホームズという2人のデザイナーはツァップに大きな影響を受けつつ、デジタル世界の絵文字であるLucida IconsLucida Arrowsといった絵文字を制作。



2人が作ったアイコンの権利をMicrosoftが購入して「Wingdings」という名前でWindowsに実装させたため、印刷時代の「Dingbat」がデジタル世代にも持ち込まれたわけです。



しかし、当初はWingdingsの意義が見落とされていました。というのも、ニューヨーク市の略字である「NYC」という文字をWingdingsでタイピングすると……



ドクロマーク・六芒星・いいねマークという文字に変換されてしまい、1992年にニューヨーク・ポストが「これはユダヤ教に対する差別にも受け取られる」として抗議していました。



そのため、現在では「アイ・ラブ・ニューヨーク」と取れる絵文字に変更されているとのこと。



しかし、そもそもWingdingsの目的は文字のようにタイピングすることでなく、Dingbatと同じくメッセージを簡略化して「時間を節約すること」です。



現在では使用頻度の低くなったWingdingsですが、実は絵文字の先輩であり、「短時間でメッセージを伝える」ことを可能とした成功者だったわけです。