「ワンシーム」の習得に力を入れているDeNA・山口俊【写真:編集部】

写真拡大

昨年の「フロントドア」「バックドア」に続くHOTワードに?

 オープン戦が始まり、各球団の開幕投手候補たちの調整も順調に進んでいる。すでに横浜DeNAはラミレス監督が山口俊投手を開幕に指名。巨人では3年連続で菅野智之投手が濃厚だ。

 両エースは今年、「ワンシーム」をキャンプから本格的に試している。菅野は過去にも投げていた球種で、山口は昨年に続いて習得に力を入れている。では、「魔球」とも言われるこの「ワンシーム」は一体どんなボールなのだろうか。

 昨年は広島・黒田博樹投手の日本球界復帰で新ワード「フロントドア」「バックドア」が大流行したが、今年のHOTワードは「ワンシーム」だろう。速球の種類では、日本では「直球」と表現される「フォーシーム」、打者の手元でシュート気味に変化する「ツーシーム」が今や日本でもお馴染みとなったが、今度は「ワンシーム」。2月28日の巨人ーヤクルトのオープン戦では、菅野が昨季トリプルスリーの山田哲人内野手の内角低めへ投じ、ショートゴロに打ち取った。

 まず、どんな変化をするのか。ストレートの軌道でベース盤に向かうが、右打者の場合、基本的には内角低めへと沈む。サイドやアンダースロー投手が投げるシンカーに近い変化だ。打者にとってみると、食い込んでくるような感覚になる。しかし、変化は一定ではなく、投げた指先の力加減や空気抵抗によって、微妙に変化が違う。ひっかけると、スライダーのような変化もする。

ダルビッシュも? メジャーでワンシームの使い手といえば…

 このボールを投じると、打者はどういう結果になるのか。ストレートの軌道のため、バッターはその感覚で始動する。しかし、打ちにいった瞬間、手元で変化し、芯を外される。詰まらされるため、自然と内野ゴロが増えることになる。バッターからすると、真っ直ぐなのか、シンカー気味に急な変化をするのか、対応を一瞬で迫られる。

 気になるボールの握り方はどうか。ワン(ONE・1つの)シーム(SEAM・縫い目)の文字通り、1つの縫い目に人差し指と中指をかけるように握る(かけないで添える投手もいる)。普通のストレートに比べて、縫い目にしっかりと指をかけないため、制球がしにくいとされる。

 投げられる投手の条件は、その握りでもしっかりとボールを強く放つことができるかどうか。腕の力だけでなく、指先の筋力トレーニングが必要となる。メジャーのトレーニングでは、バケツの中にお米を入れ、その中で「グー・パー」を繰り返して握力・指先強化に努めるなど、投げるには努力と鍛錬が必要だ。

 メジャーでワンシームの使い手といえば、アスレチックス、ブレーブス、ジャイアンツで通算222勝したティム・ハドソン(昨季引退)、レッドソックス、カブスで左腕エースとして活躍するジョン・レスター投手らがいる。レンジャースのダルビッシュ有投手も2010年頃に取り入れ、投球の幅を広げた。力の入れ具合で、変化をコントロールする技術も持っているという。

 もちろん、このボールだけに頼るわけではない。ほかの球種も磨く中で、引き出しの一つになる。果たして、ワンシームは菅野、山口のさらなる飛躍のきっかけとなるか、注目だ。