(足の付け根の)痛みと付き合いながらゲームをこなし、しっかりコントロールをしてくれました。彼はこのチームの象徴です。派手さはないけれど、堅実にサッカーをやる。その部分が全体に浸透しているように感じます。
 
 
――大会を通して選手起用がハマった部分が多かったと思いますが、選手をスタメンから外す時に気を付けていたことはありましたか?
 
 モチベーションを損なわないようにすることです。外す時に『お前を外す』と言えば、『なんで』って言う言葉が絶対に返ってくる。なので『なんで』と聞かれないような言い方をするようにしまし。
 
――例えば、準々決勝のイラン戦では直前で豊川選手から中島選手へスタメンを入れ替えましたが、どういった言葉をかけましたか?
 
『今日勝つためにサブだ』と。勝つためにという話をしました。
 
――話すタイミングはどうでしょう?
 
 選手はある程度スケジュールが決まっていますが、自分のタイミングで食事を取ったり、部屋に戻ったりします。そこでタイミングをズラさないように声をかけました。特別な時は部屋に呼びました。あとは食事会場で話を済ませたり、エレベーターホール、エントランス、ピッチで話したりしました。
 
――選手の行動を乱さないような形ですか?
 
 何気ない話のなかで、決断をさせてもらいました。
 
――選手のコンディショニング調整は難しかったと思いますが、大会前に早川コンディショニングコーチのことを大事な存在だと話されていました。
 
 彼はブラジル・ワールドカップでの悔しさを抱えていました。ワールドカップも今大会と同じ集中開催です。ですので、ワールドカップでの反省を活かし、(昨年末の)カタール遠征や、石垣島キャンプ、カタールに入ってからの直前キャンプで、フィジカルメニューや戦術練習をどこで落とし込んでいくかをふたりで擦り合わせました。彼は選手の疲労など、細かいところに気を配ってくれたので、上手くいきました。
 
――決勝の相手は韓国になりました。
 
 思ったとおりだなと。今大会、6戦全勝を目指してきましたが、最後は韓国と当たるはずだと話していました。仁川(2014年のアジア大会)での借りを返して本当の意味でアジアナンバーワンになれます。この上ないシチュエーションが用意されたなと思います。
 
――改めてホテルに戻ってから、あるいは今日、選手にはどういった話をされましたか?
 
 明日の見出しはドーハの歓喜になるっていう話をして、歴史の話もしました。
 
――痺れる試合での采配は久しぶりだったと思いますが、そのなかで選手交代が的確だったと感じました。その感覚は試合を追うごとに研ぎ澄まされた形でしょうか?
 
(すべて現地時間)16時半のキックオフの試合だったので、朝ご飯を食べてから、ベッドに横になって1時間くらい考える時間を作ったんです。スタメンは決めていて、ゲームのシミュレーションをしながら、こうなったらこう変えようっていうのを作っていました。あとは大会の流れで、だいたいこの相手にはこのスタメンと書いていて、その通りに進みました。ただ、点の取り方はあまりに劇的すぎて、イメージにはなかったです。
 
――イラク戦は前半で2点ぐらい取れそうだったと話されていましたが、過去2敗した相手をどう分析されていましたか?
 
(準々決勝の)UAE戦は、イラクらしくないパフォーマンスだったんです。その前のウズベキスタン戦はテクニカルなゲームをしていたんですけど、ウズベキスタンに付き合っているんだろうなという見方をしていて。日本戦はUAEに勝った時のようなパワーで戦ってくるんじゃないかなと。ですので、間延びしたところをカウンターで2点ぐらい決めておきたいなという想いがありました。