記者会見は原則的に生中継は禁止(写真はイメージです)

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 4月22日にバイクで事故死した俳優の萩原流行さんの妻が記者会見をおこなった。萩原さんの事故原因は警視庁の護送車と接触したことで転倒したためといわれている。

 事故原因の解明はこれから進むだろうが、記者会見で遺族と警察とがどのような接触があったのか? どういった交渉がなされたのか? それがつまびらかにされるのでは注目が集まった。

 記者会見が開かれた時間帯がワイドショー時間帯と重なったため、テレビ各局は記者会見の取材にかなり力を入れていたようだ。そうした力の入れぐらいがかえって空回りを起こしてしまうことは少なくない。

 今回、フジテレビの情報番組「直撃LIVEグッディ!」(以下、「グッディ!」は記者会見の様子を放送した。ところが、萩原流行さんの妻の記者会見に同席した弁護士から「生中継はルール違反」と注意され、中止するトラブルが起きている。

 訴訟関係で、原告や被告の記者会見がおこなわれることは日常的だが、なぜ生中継はルール違反なのか?

「記者会見のルールを決めるのは、原則的に主催者です。裁判所の記者会見室だったら司法記者クラブ、弁護士会館だったら弁護士会です。訴訟関係の会見は、プライバシーに関わる話が出てくることもあり、そうした事情に配慮して原則的に生中継はしません。これは弁護士や原告・被告、そしてマスコミ関係者の間では常識になっています」(司法記者クラブ記者)

 フジテレビの中継班が、記者会見のルールをまったく知らなかったとは考えづらい。確信犯だったのか? それとも現場とスタジオの連絡ミスだったのかはわからない。どちらにしても、フジテレビがルールを破ったことは間違いない。

 しかし、生放送禁止のルールが設けられているものの、昨今は会見終了直後からすぐに会見の様子を放送する局もある。また、ネットニュースでも即時配信している。そのため、生中継を禁止する意味があやふやになっている。

録音・録画・撮影禁止の東京地検の記者会見

 プライバシーを守るという大義名分は納得できる理由だが、かなり厳しいルールを課している記者会見も存在する。そのひとつが、東京地検の記者会見だ。

東京地検の記者会見は司法記者クラブが主催者ですが、実質的に東京地検が仕切っています。東京地検の会見では、次席検事が説明や質疑応答をおこないますが、その際に録音・録画・撮影は禁止です。記者ができるのはメモを取ることと、質問をすることだけです」(前出・司法記者クラブ記者)

 東京地検は会見録を作成していないため、記者は発言内容を確認する術がない。そのため、記事が出た後で「あんなことは言っていない」「いや、言った」というトラブルも頻繁に起きている。

 残念なことに、言った言わないの水掛け論が起きたとき、たいていはメディア側が東京地検から出入り禁止にされることを恐れて屈している。そのほかにも、日本銀行総裁会見も生中継を禁じている。

「日銀総裁の発言は、ある意味で財務大臣の発言よりも敏感に市場が反応します。そのため、生中継されると株式市場が混乱する可能性も十分にあります。だから、生中継を禁じています」(日銀クラブ記者)

 日銀総裁の記者会見でも、重要なニュースは会見終了直後にネットで速報記事が配信され、テレビで速報テロップを流すといった対応が取られている。生中継禁止といっても、ほとんど形骸化しているのが実態だ。

 ネット配信が一般的になったことで、ニュースの消費スピードは格段にアップし、賞味期限も短くなった。いまや個人でも簡単に生中継が可能になった。それゆえに、「メディアはニュースをどう報道するべきか?」ということを考える時期にきているのかもしれない。

(取材・文/小川裕夫)