山手線が約2分30秒間隔で運転されている状況で、約10分おきに快速を走らせたダイヤ。

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全列車が29もの駅に停車していく山手線。「快速」があったら良いのに、と思ったことはありませんか? そこで山手線に快速列車を走らせたらどうなるかダイヤを想定してみたところ、逆に不便になる可能性も見えてきました。

平均駅間が約1.2kmしかない山手線

 グルッと34.5km、東京の中心部で環状運転を行っている山手線。その列車は各駅停車のみで1周29駅に停車し、およそ60分を要します。

 34.5kmに29もの駅がありますので、山手線は平均駅間距離が約1.19kmと、JR線ではかなり短くなっています。そのため頻繁に駅へ停車する印象があるかもしれません。

 そこで「山手線にも快速があったら良いのに」と思ったことはないでしょうか。「円」の反対側へ、例えば渋谷駅から東京駅へ行きたい場合など特に。

 そこでもし山手線に快速列車を走らせたらどうなるか、ダイヤを制作してみました。その前提条件を記します。

・ホームの構造上、先行列車の追い越しが可能なのは池袋駅、大崎駅のみ。
・大崎駅で乗務員交代のため約1分停車。
・所要時間は内回り、大崎→東京→新宿→大崎で61分を基準とする。
・通常、混雑する時間帯ではダイヤに余裕時分が組み込まれるが、比較が分かりづらくなるため考えない。
山手線の快速が停車する駅は、京浜東北線快速と埼京線の停車駅に高田馬場駅を加えたものとする(高田馬場駅はJR東日本で11番目に乗車人員が多い(2013年度))。
・単純に「現状へ快速を追加したらどうなるか」が観点で、実現可能性などは考慮しない。

 ダイヤ制作にはWindows用フリーソフトウェアの「OuDia」を使用しました。

「OuDia」
http://homepage2.nifty.com/take-okm/oudia/

「快速」で所要時間は減少、しかし

 まず山手線で列車運転本数が最も多い混雑時(最短運転間隔およそ2分30秒)に、快速を10分に1本程度の割合で走らせてみました。時刻表上部にあるアルファベットは、それが同じ列車は車両も同じという意味です。大崎駅へ19時8分に到着した「快速C」の車両は、そのまま大崎駅19時9分発の「快速C」になります。

 18時7分、「各停B」が大崎駅を発車。その3分後、18時10分に「快速C」が発車します。

 しかし、追い越しは池袋駅まで不可能です。また「快速C」は通過駅がありますが、先行する「各停B」と一定の間隔を保ったまま走る必要があります。間隔を詰めてしまうと、「快速C」と後続の「各停D」との運転間隔が空いてしまうためです。運転間隔が空くとその時間だけホームに乗客がたまり、後続列車に激しい混雑が発生。遅延や混乱を招いてしまいます。

 「快速C」は浜松町駅から、通過駅がありながら各停と同じ所要時間というノロノロ運転。田端駅からは後続列車との運転間隔を考慮する必要がなくなり、先行する「各停B」を追い越すため若干、速くなります。

 池袋駅で「各停B」を追い越した「快速C」ですが、今度は先行する「各停A」を大崎駅まで追い越せないこと、後続の「各停B」との運転間隔を考える必要があることから、やはりノロノロ運転が続きます。そして後続との運転間隔を考慮する必要がなくなる恵比寿駅を発車したところで「各停A」との間隔を詰め、大崎駅で追い越しです。

 この場合において山手線快速が1周に必要な所要時間は、大崎→大崎で58分、池袋→池袋は大崎駅での乗務員交代があるため59分になりました。以下にその内容をまとめます。

△快速は所要時間が61分から2〜3分減少。ただし田端〜池袋間、恵比寿〜大崎間を利用しない場合はほとんど変わらない。
×各停は快速の通過待ちがあること、また運転間隔を維持するため快速に追い越されてもしばらく発車できないなど、時間調整が発生。各停は所要時間が最大で5分程度増える。
×各停だけを一定間隔で運行するよりダイヤが複雑で、混乱しやすい。
×通過駅における列車の運転間隔が、すべて各停なら3分程度のところが6分程度にまで広がってしまい、混雑を招く可能性がある。

 以上のように、列車の運転本数が多い状況で快速を運転しても、デメリットばかりが目に付くことになりました。

 また列車運転本数が多い状況、つまりラッシュ時に利用者の多い新橋駅(JR東日本7位)や有楽町駅(JR東日本14位)などを通過し、運転間隔を空けることは非現実的でしょう。この点については、快速の停車駅をどうするかにもよりますけれども。どのみち田端〜池袋間、恵比寿〜大崎間以外は所要時間をほとんど短縮できないので、通過駅はその区間内にある駒込、巣鴨、大塚、目黒、五反田だけにしても、快速の所要時間はほぼ変わりません。

運転間隔が広い日中はさらに所要時間短縮が可能だが

 では列車の運行間隔が4〜5分の日中時間帯に、快速を12分に1本程度の割合で走らせたらどうなるでしょうか。

 快速の走り方は、基本的に約2分30秒間隔の場合と同じです。ただ列車の前後間隔を5分まで空けられるようになったことから、快速の所要時間がさらに減少。55〜56分で1周できるようになりました。内容を以下にまとめます。

△快速は所要時間が61分から5〜6分減少。ただし田端〜池袋〜新宿間、恵比寿〜大崎間を利用しない場合はほとんど変わらない。
×各停は快速の通過待ちがあること、また運転間隔を維持するため快速に追い越されてもしばらく発車できないなど、時間調整が発生。各停は所要時間が最大で5分程度増える。
×各停だけを一定間隔で運行するよりダイヤが複雑で、混乱しやすい。
×通過駅における列車の運転間隔が、すべて各停なら4〜5分程度のところが8分程度にまで広がってしまい、混雑を招く可能性がある。

 乗車区間によって、3本に1本の快速で所要時間が5〜6分短くなりますが、引き替えにそれ以外の2本の各停では逆に所要時間が最大5分程度増えること、混乱しやすいこと、通過駅で運転間隔が空くこと。どちらが良いでしょうか。

最短46分で1周も可能?

 ただ運転間隔が大きく開き、先行列車の影響が少ない早朝に快速を走らせた場合、どうなるでしょうか。

 山手線の「早朝快速」は1周46分と、標準とした61分より15分も短くなりました。快速運転はやはり列車の運転本数が少なければ効果的ですが、通常の山手線のように列車本数が大変多く、走行時間も長め、追い越し可能な場所も少ない路線では、労多くしてあまりメリットがないと言えそうです。

 またここに挙げた各試作ダイヤは、山手線に快速を走らせたらどうなるか、分かりやすく比較するために要素を絞り、その傾向をシンプルに表したものです。現実では時間帯による乗客数の変化など様々な要因があるため、必ずしもこのダイヤそのままで実際の運行も可能だというわけではありません。