個室型になった新「はかた号」のプレミアムシート(イメージ)。

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LCCを含む航空機や新幹線といった様々な交通機関がしのぎを削る福岡〜東京間。そうしたライバルに対し、同区間を走る日本有数の長距離高速バス「はかた号」が出した答えは個室など、高級化でした。

座席には背面マッサージ機能も

 2014年10月21日(水)、西日本鉄道は福岡と東京を結ぶ夜行高速バス「はかた号」に12月18日福岡発車分から新型車両を導入すると発表しました。

 「はかた号」は1990(平成2)年に運行をスタート。福岡〜東京間の約1150kmをおよそ14時間半かけて走行する夜行高速バスです。福岡・西鉄天神バスセンターを19時ちょうどに発車すると、翌朝9時25分に東京・新宿駅西口へ到着します。

 そんなかなりの長距離高速バスですが、走行距離が最も長いのは埼玉・大宮〜福岡・天神を結ぶ「Lions Express」(西武高速バス・西鉄高速バス)の約1170km。運行時間が最も長いのは東京・新木場〜島根・津和野を結ぶ「いわみエクスプレス」(中国ジェイアールバス・石見交通)の約15時間半と、まだ上がいたりします。

 話を戻し、今回登場する「はかた号」新型車両の特徴としては、最上級席の「プレミアムシート」を西日本鉄道の高速バスとして初となる個室型にしたことが挙げられます。従来車両の「プレミアムシート」はカーテンで個室風になっていましたが、新車は固定式のパーティションで仕切られ、専用の空気清浄機を搭載。「快適なプライベート空間を実現」したといいます。

 この「プレミアムシート」には電動リクライニング・レッグレストはもちろんのこと、背面マッサージや背面ヒーター、座面送風機能を搭載。個室にはタブレット端末が備え付けられ、インターネットのほか電子書籍などのコンテンツを無料で楽しむことが可能です。USBポートとコンセント、無料Wi-Fiサービスもあります。

 「プレミアムシート」は4席あり、運賃は17000〜20000円です(出発日によって異なる)。従来車の「プレミアムシート」は14500〜18500円だったため、設備と共に運賃も上がっていることになります。

 また新しい「はかた号」の車両には「プレミアムシート」4席のほか、3列独立シートの「ビジネスシート」が16席、4列独立シートの「ビジネスシート(女性専用)」が4席と、合計24席が用意されています。

 「ビジネスシート」はコンセントとUSBポート、無料Wi-Fiサービスがあり、運賃は12000〜15000円。「ビジネスシート(女性専用)」はコンセントと無料Wi-Fiサービスがあり、運賃は11000〜14000円です。

新「はかた」号で消えた座席とそこに見える方向性

 この新しい「はかた号」の車両は、従来車と比較し大きく変わった点があります。従来車は「プレミアム」「ビジネス」「エコノミー」という3クラスの座席がありましたが、新車は安価な「エコノミー」がなくなり2クラスになったことです。

 従来車の「エコノミー」は2階建てバスの1階に設けられ、4列シートが並ぶものでしたが、その代わり運賃は8300〜12300円と安く抑えられていたのが特徴です。

 以下に「はかた号」と、東京〜福岡間における各交通機関の運賃、所要時間についてまとめました。

・新「はかた号」プレミアムシート:17000〜20000円、約14時間半
・新「はかた号」ビジネスシート:12000〜15000円、約14時間半
・旧「はかた号」エコノミーシート:8300〜12300円、約14時間半
・新幹線「のぞみ」指定席:22950円(通常期)、約5時間
・全日空(羽田〜福岡):41100円(通常期)、約1時間50分
・ジェットスター(成田〜福岡):6490〜29990円(届出運賃)、約2時間10分
・夜行高速バス「Lions Express」(池袋〜福岡、4列シート):8300〜12300円、約14時間半

 航空機は時期によって運賃に幅があるため簡単に比較することは難しいですが、LCCのジェットスターの場合、2014年11月15日(土)に福岡から成田へ行き、16日(日)に成田から福岡へ戻る場合、搭乗する便にもよりますけれども、運賃は手数料込みで往復2万円かそれ以下です(2014年10月22日16時現在)。

 安さに勝るLCCや4列シートの高速バス、早さに勝る全日空などのレガシーキャリア、新幹線といったライバルが存在するなか、「エコノミー」を排し他の移動手段にはない個室を採用、高級・快適路線で差別化を図ってきた新「はかた号」。宿泊費を節約したい、夜間に移動して無駄な時間を減らしたい、飛行機は嫌いという需要を取り込み生き残っていけるのか、はたまた中途半端な存在になってしまうのか、その今後に注目です。