ヤンキース・イチロー【写真:田口有史】

プレーオフ進出が厳しくなる状況に戦犯探しが始まる

 2シーズン連続でプレーオフ進出失敗が濃厚なヤンキースに対し、地元メディアがついに戦犯探しを始めた。

 米ニュージャージー州最大のニュースサイト「NJ.com」は「ヤンキースの酷いシーズンで最も非難に値すべき選手は?」というファンへの投票を企画。膝の手術を受けたCC・サバシア投手、右肘靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けたイバン・ノバ投手、松やにを使った不正投球による出場停止と広背筋の肉離れから復帰して間もないマイケル・ピネダ投手ら、長期離脱を余儀なくされた選手はノミネートから外されている。

 さらに、野手ではレッドソックスから移籍直後のスティーブン・ドリュー内野手、現オリオールズのケリー・ジョンソン内野手、戦力外通告を受けたアルフォンソ・ソリアーノ外野手といった80試合以上出場していない選手は、不調でも選外というやや不公平な基準となっている。

 不名誉な投票リストにノミネートされたのは6選手。ア・リーグ15チーム中14位の558得点という貧打で、奮闘するピッチャー陣の足を引っ張った野手がいずれも候補となっている。

 今季カージナルスからFAによる大型契約で加入したが、右肘骨棘障害で打撃不振となり、離脱を繰り返しているカルロス・ベルトラン外野手。今季限りで現役引退を表明しているキャプテンのデレク・ジーター遊撃手。ベルトラン同様にFAによる大型契約でブレーブスから獲得しながらも打撃不振に陥ったブライアン・マッキャン捕手も入った。

 さらに、4人目には今季開幕時外野手の5番手と苦境だったが、徐々に出場機会を増やしたイチロー外野手がまさかのノミネート。5番手は今季打率2割3分7厘ながら本塁打5本と意外性のあるバッティングを見せていたものの、シーズン途中でソリアーノ同様に戦力外となったブライアン・ロバーツ二塁手。6番手はチームトップの21本塁打を放っているが、打率は2割2分3厘と低調で右手首の古傷の影響で欠場することの多かったマーク・テシェイラ一塁手の名前が挙がっている。

戦犯1位はベルトラン、2位ジーター、イチローは……

 開幕時からプレーしている野手のレギュラークラスでノミネートを免れたのは、今季レッドソックスからFA移籍で加入し、打率2割8分、15本塁打、67打点、38盗塁と及第点の結果を残しているジャコビー・エルズベリー外野手。開幕前に契約を延長し、打率2割6分9厘、16本塁打、56打点とリードオフマンながら長打力が伸びたブレット・ガードナー外野手のわずか2人。ジーターすらもノミネートされるのは地元メディアの厳しさと言えるだろう。

 現地時間11日午前0時の段階では総投票数は739。1位はベルトランの228票で30・85%を占めている。2位は僅差でジーターの222票で30%、3位はマッキャンの129票で17・49%、4位はテシェイラの117票で15・83%、5位はロバーツの34票で4・6%。そして、奮闘を続けるイチローはわずか9票で1・22%となっている。

 2シーズン連続となるヤンキースの不振に不満を抱える目の肥えた地元ファンは、去り行く英雄ジーターを僅差の2位で“戦犯”と判定するほど、不調の選手に対する見方は容赦ない。

 一方、イチローのプレーぶりは評価されていると言えるだろう。規定打席に達していないのもの、打率2割8分6厘。1本塁打、19打点。これまでの圧倒的な実績と比べれば数字には物足りなさを感じる。ただ、決してレギュラーとは言えない立場で、出場機会が限定されていることを考えれば、ノミネート自体が不可解と言えるかもしれない。12盗塁、さらには守備面での高いパフォーマンスなど、不惑の男はクオリティの高いプレーを見せている。

 数字上ではまだ逆転プレーオフの可能性は残されているヤンキースだけに、残り試合もピンストライプの誇りにかけた戦いを見せたいところだ。