時代の空気を察知することに長けた人々による、2014年を生き抜く羅針盤となるコトバ。

●リアル空間(関西学院大学准教授 鈴木謙介)

スマホの普及でリアルとバーチャルの境目がなくなりつつある。現実の空間を情報で付加価値化し、イニシアチブを握ろうとする「場所性」を巡る競争が激化する。

●異常気象(東京大学先端科学技術研究センター教授 中村 尚)

2013年は最高気温の更新、夏の豪雨、台風に伴う特別警報・洪水や大島の土砂災害、レイテ島を襲ったスーパー台風に伴う高潮など一部温暖化の表れかもしれないとも思わせる異常気象が複数個所で起こりました。

14年には「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書」も正式刊行されます。エネルギーや防災の将来を多角的に真剣に考える必要があります。

●CPI(ジャーナリスト 石井勇人)

デフレ脱却の成否を測る消費者物価指数。消費税増税、円安、株高で当面の物価上昇圧力は強いが、増税や年金削減で消費減退は必至。非正規労働者を中心に賃金上昇には限界があり、TPP交渉は行き詰まり、構造改革は進んでいない。夏以降、CPIの推移がアベノミクスの推移を判断する要の材料に。

●ネット風評被害対策(弁護士・弁理士 神田知宏)

ネット風評被害対策を広告・宣伝活動と捉え、きちんと費用をかけることが重要だと考えている。クチコミの体裁で他社製品へ誘導するアフィリエイターの広告ページや、アフィリエイターのクチコミランキングサイトと今後いかに戦うかも課題だ。

●異常株安の是正(武者リサーチ代表 武者陵司)

日本の異常な株安の原因は、(1)デフレ容認の日銀、(2)極端なリスク回避に徹した国内投資家。すでに日銀のデフレ容認姿勢は大転換し、消極姿勢の元締め、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人=124兆円を擁する世界最大の投資家)の運用方針が抜本的に変わろうとしている。それは日本の投資姿勢の地滑り的変化を誘導し、大幅な株高をもたらすだろう。

●資産インフレ元年(アトラクターズ・ラボ代表 沖有人)

アベノミクス+2020年の東京五輪で、資産インフレが顕著になる年。日本の持ち家率は高齢者ほど高く62%。2300兆円の個人・法人の金融資産が動きだし、15年の相続税増税を前に特需が発生、不動産価格は大幅上昇する。

●構造改革(ライフネット生命保険会長兼CEO 出口治明)

衆参両院で与党が安定多数を保ち、国政選挙もない14年は、抜本的な構造改革を行う最後のチャンス。たとえ痛みをともなっても、独・シュレーダー元政権のように、日本の社会・経済を広く世界に開放し、筋肉質に鍛え直してほしい。

●イスラエル(サムライインキュベートCEO 榊原健太郎)

「戦争」の印象ばかりが先行するイスラエルとイスラエル人が、ようやく日本のビジネスの現場でも注目を集めるだろう。同国には世界的な大企業のR&D(研究開発)施設が置かれ、同国で生まれるスタートアップ企業は世界的IT企業に次々と買収されていく。日本のスタートアップや大企業が彼らの見識・技術を取り入れることで、世界を席巻するサービス・企業が生まれる可能性が高まる。

●未来への投資(ファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子)

「今」「自分の」ためだけでなく、「未来の」「社会」に向けて、長期的にお金を回していけるか、またヒトを育てていけるかが問われる年になると思います。一人ひとりが自分の問題として主体的に行動する年になるとよいですね。

●人事リスク(田北社会保険労務士事務所所長 田北百樹子)

セクハラ、パワハラ、過労死、内部告発……。これらに当てはまると優秀な人材が社外に流出してしまう。人事リスクを未然に防ぐことで儲けにつながる。

●オスの本能(中部大学教授 武田邦彦)

尖閣諸島をはじめ日本の領土が外から脅かされている今、男性は「オスの本能」を取り戻すべき。

この本能は縄張りを強く意識させる。流行りのイクメンのように子供と接してばかりいると、本能の勢いはダウンする。男性はどんどん働き、本能を目覚めさせよ。

●攻めと守り(ファイナンシャルプランナー 深田晶恵)

株価が好調になると、つい気分が浮かれ財布の紐が緩くなるが、実際はまだ給料はそれほど上がっていないはず。消費税アップ、モノの値上げで家計負担が重くなる14年。「攻めと守り」の合わせ技のマネープランが必至である。

●シンギュラリティ(神戸大学教授 塚本昌彦)

この言葉は、コンピュータの計算能力が全人類の知能を超える瞬間のことを指している。

コンピュータは人類を生かしておいてくれるか、それとも……。少子化問題以上に影響は大きいのではないか。シンギュラリティの時期は迫っている。人間はコンピュータにどんな態度で向き合うべきか、議論する年になってほしい。

●グローバルシンキング(コミュニカ代表取締役 山元賢治)

東京五輪に向け、日本が真にグローバルな国になる最後のチャンスがやってくる。日本人は世界から訪れる人を幸せにしよう、という心意気をもってほしい。

●DV冤罪(弁護士 堀晴美)

ありもしないDVをでっち上げられるケースが増えている。離婚したい妻の策略だ。2014年はもっと目立つことになるだろう。

●Eコマース(エニグモ代表取締役 須田将啓)

Eコマースが爆発する年になる。大手やベンチャー、海外勢などからEコマースのサービスが出そろい、激戦となる。Eコマース事業者だけでなく、マーケティングツールや保証サービスなどを提供する周辺事業者も盛り上がるだろう。

同時に取捨選択が進み、2014年度中に勝ち負けが明確になるだろう。急成長する市場だからこそ、他社との違いは何かという明確な戦略が問われる1年になる。

●そのままの日本(一般社団法人アスリートソサエティ代表理事 為末 大)

日本の都市や農村は欧米とは異なる独自の景色を残しており、訪日した外国人によると、それが面白いのだという。「ガラパゴス化」は観光面では魅力になる。東京オリンピックに向けて、「そのままの日本」を世界に売り出す元年に。

●ストーカー対策本格化(NPOヒューマニティ理事長 小早川明子)

警察庁は2014年度予算の概算要求で、ストーカーを繰り返す加害者に精神科医らの治療を受けさせ、効果を検証するための費用を計上した。

ストーカー事件を減らすには加害者を治療することが決定的に大事。その意味で一歩踏み出す年になるだろう。

●みんなの改革元年(経営コンサルタント 井上智治)

2020年の五輪まで6年。この長さは中期的な目標を立てるのに最適。日本人みんなが6年後の姿を思い浮かべ、それぞれの目標に向かってがんばれば、日本全体もステップアップするだろう。

●もの忘れ外来(順天堂大学医学部教授 新井平伊)

脳の記憶力低下に不安を持っても、精神科へ行くには抵抗がある人も多い。でも、その症状の原因はさまざま。認知症の早期発見のためにももの忘れ外来など専門医での診察が今後より重要になる。

●拓く(良品計画会長 松井忠三)

自動車メーカーの復活、百貨店の売り上げの前年越えなど、日本経済に好転の兆候が見える。賃上げの機運もある。そして何と言っても、自民が単独過半をとり「決められる政治」になったことは大きい。2014年は日本の新しい姿が拓かれる年になることを願う。

●信(「婦人公論」編集長 三木哲男)

2013年は食品偽装の事件や、東電の汚染水隠しなど、信頼がビジネスの根幹を壊した。だとすれば、信頼を築き上げ、ブランド化できたビジネスや企業がすごく伸びるような気がする。

●被害者保護(弁護士 大澤孝征)

ストーカーによる被害から被害者をどう守るか。性犯罪の被害から守るため、起訴状や証拠における匿名化など、これまでにない被害者を保護するための実効ある対策が求められています。

これまでの被疑者・被告人の人権とのバランスの取り方が問題となるでしょう。司法のあり方が激変している象徴とも言えます。