写真提供:マイナビニュース

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日本には3,000m級の山が20を超える。その中のひとつ、日本アルプスとして名高い立山連峰は、国内唯一の氷河を有することでも知られる豊富な水源の霊峰だ。日本海側に面し、豊富な海産物でも名を馳せるこの北陸の地には、まだまだ知られていない魅力が山ほど眠っている。今回のシリーズでは、2015年春、北陸新幹線の開業により東京から2時間余りの近さとなり、今、注目が集まる富山県にフォーカスし、その魅力に迫ってみたい。

東京での打ち合わせを終え、上越新幹線に慌てて乗り込む。今回の目的地、富山にアクセスするには陸路ならば新潟越後湯沢から在来線で向かうということになる。フェーン現象の地でも知られる富山だが、都内ですらすでに蒸し暑い梅雨入りの初夏、考えただけでも汗がしたたり落ちてくる。深い山々の下を掘り抜いたトンネルが連なり、真っ暗な闇を抜けて、目前に田園風景が広がりだした。

目的地である富山駅前には、レトロ感漂う路面電車がその雄姿をゆったりと横たえる。そこには何か優しく流れる時間すら感じることができる。のんびり路面電車の旅と決め込みたいところだが、現地で待つコーディネーターとのアポ入れがあるので、そこは遊び心をぐっと押さえて待ち合わせ場所のホテルへと向かう。

無事に合流することができた我々は、さっそく当日の取材内容を確認し合う。初日は富山の大自然を探るべく、アクティブな内容を取材してまわることになった。

市内を車で出て走ること約40分、冬場はスキー場としても知られる立山山麓に降り立った取材班は、巷で話題になりつつあるスポーツ「ジップライン」を体験することに。新緑の木々が生い茂る中の管理事務所で、さっそくスポーツの説明を受ける。

スキー場の斜面を利用して張られたワイヤーにフックをひっかけ、空中を滑走するジップライン。いわば空中散歩を体感できるスポーツと言ってもいいだろう。ヘルメットやフックなど、必要なものを装着した我々は、一面初夏の緑に覆われたスキー場を、ゴンドラで山頂を目指すことになった。

富山平野を見下ろす山頂からは、穏やかな富山湾も一望できる。ゴンドラから降り立った取材班は、その光景に圧倒されるのみ。日本海から吹き付ける風がそっと顔を優しくなでる。改めて富山県の大自然に感動できる一瞬だ。これで天気が良ければ木々の緑と海の青のコントラストにしびれることは間違いない。

美しい景観にしばし心を奪われながらも、目的は空中滑走だ。プラットホームの前には、斜面に張られたワイヤーが2本見える。現実に戻り、さっそく体験といこう。しかし、ちょっと待て。確かに空中を滑走するのだからそれなりの高さは予想していた。でも、これって電柱くらいの高さはあるではないか! 高所恐怖症の血が騒ぎ、すでに膝から下の力は抜け始めている。一歩前に進むというよりはむしろ後ずさりしたいのが本音だろう。半べそ状態に陥りながらも、そこはプロ魂を見せるべく、爽やかというよりはやけくそに近い笑顔を浮かべながらさっそくジップラインにトライする。覚悟を決め、スタート台からジャンプ!

「うわぁ〜〜!」

そのとき、口から出たのはため息ではなく感動の声。さっそうと滑走するジップラインの素晴らしさは、スリルあるスピード感と後ろに流れていく山々の光景。そして何より大自然と一体化できる体感にある。最初こそ緊張のあまり足がすくんでいたのだが、いざ滑走し始めるとそこには満面の笑みが広がってしまうではないか。

このジップライン、全部で8コースがあるそうだが、我々が最初に滑走したのは「わくわくライン」で全長48m。ほんの数秒の世界だったが、そのスリルに思わずため息が出てしまう。そんな爽快な気分に浸るのも束の間、次なる体験コースは全8コース中、もっとも富山らしさを体感できる「チャレンジライン」。原生林の生い茂る谷底を眼下に、全長150mの迫力を見ながらジップラインで自然の中を駆け抜けるのだ。

歩くこと5分。そこに広がるのは人の手が入らない原生林。その中に組まれたジャンプ台、さっきのワクワクコースとは違う迫力に、自然と表情も硬くなる。これが神々の作り出した緑の世界への畏怖なのだろうか。それとも好奇心からくる心地よい緊張感なのだろうか。さっそくワイヤーにフックをセットして、その大自然に向かってジャンプする。

すでにジップラインの虜となってしまった取材班、怖いと泣き叫ぶ気持ちはどこへやら、その表情にはおかわり状態のアクティブ魂が溢れている。しかし、体験取材もそろそろ終盤。ラストは「立山ライン」158mにアタック。ここまで来ると、当初のへっぴり腰は影を潜め、我先にジャンプ台へと駆け上る。

幼いころに真夏の日差しの中、自転車で駆け抜けた思い出なら誰もが持っているのではないだろうか。ジップラインは、そんな気持ちすら呼び起こし、それにスリルと解放感を与えてくれる。一見、男の体験スポーツ的な感じもするのだが、いざチャレンジしてみると老若男女を問わず、誰でも楽しめることがわかる。この解放感はもはや癒しの域といっても過言ではない。しばし日頃の喧騒を忘れ、童心に戻れる一瞬でもあるのだ。

もっと空中を滑走したかった取材班だが、次のアポイントが待っている。後ろ髪をひかれる思いで、富山山麓を後にしたのだった。

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ジップライン・アドベンチャー立山

大人の遊び、33の富山旅。

(OFFICE-SANGA)