【ACE2013】高橋祐馬×神谷浩史スペシャル対談『【ゆまの部屋】神谷さんと語ってみよう!』レポート

3月30日(土)、31日(日)に幕張メッセにて、「前回よりも10倍楽しいイベントに!」をテーマにしたアニメの最前線イベント『アニメ コンテンツ エキスポ 2013』が開催。REDステージ、WHITEステージ、オープンステージ、各社ブースで多数のイベントが行われた中、3月31日(日)・オープンステージの『【ゆまの部屋】神谷さんと語ってみよう!』の模様をお伝えする。

出演者は、神谷浩史さんとアニプレックス宣伝プロデューサーの高橋祐馬さん。本ステージは、高橋さんを家主とする“ゆまの部屋”へ神谷さんをお招きしたという設定で、今年でデビュー20年目を迎える神谷さんに、記念の年の前哨戦としてこれまでの作品やキャラクターを振り返り、思いを語ってもらおうという企画だ。高橋さんのカウントによると、300以上のキャラクターを演じてきたという神谷さん。その中から、今回は厳選した10作品を年代順に追い、トークが繰り広げられた。

なお、神谷さんが阿良々木暦で出演している<物語>シリーズセカンドシーズンが、TOKYO MX、毎日放送ほかにて好評放送中だ。ぜひ本記事を読んで、今回のシリーズも注目してもらいたい。



今回は、なんと神谷さんもアニプレックスのロゴの入ったスタッフジャージを身に着け、大歓声の中ステージへ。「今日は声優神谷浩史であり、アニプレックス社員の神谷浩史です。よろしくお願いします」と会場を早くも沸かせると、話題は早速10作品へと続いた。


【ACE2013】高橋祐馬×神谷浩史スペシャル対談『【ゆまの部屋】神谷さんと語ってみよう!』レポート

(1)「SDガンダムフォース」キャプテンガンダム役(2004年)

1作目は2004年の「SDガンダムフォース」。それまでにもガンダム作品はオーディションを受けていたという神谷さんが、ついにゲットしたのはガンダムパイロットではなくガンダム役。「ガンダムに乗る前にガンダムになっているんです。なかなかそういう人はいないですよね」と当時の驚きを思い出しつつ感慨深げに話し始めた。

「SDガンダムフォース」は全52話、1年間に渡る作品だ。長期の作品では、人間関係を丁寧に描くことが出来るので、最初と最後でキャラクター同士の関係性が全く変わってくることもあるし、1年を積み重ねたキャラクターの成長もある。そういった変化も1年物の醍醐味だと話す神谷さん。もちろん本作も同様で、キャプテンガンダムを演じるにあたっては、「ある程度感情はあるけれどもうまく表現できない」という段階から、「だんだん心のロックが取れていって、最終的にはいろんな表情が出来るようになり、いろんなことを自分で考えてやるキャラクターになった」という。「ちゃんと成長しているがゆえにキャラクターが刻々と変わっていって、最後には別物になっている。それがいい方向へ働いた作品だと思います」と1年物の醍醐味を実感した役として、印象深かったことを振り返った。


(2)「月詠 -MOON PHASE-」森丘耕平役(2004年)

「全体的に仕事ってそうだと思うんですけれど、人と人との繋がりで出来ているんですよね」そう話を切り出したのは、新房昭之監督とシャフトが初めて組んだ「月詠 -MOON PHASE-」だ。その後もいろいろな作品で新房監督とシャフトとは縁の深い神谷さんにとって、本作はその関係が築き上げられるきっかけとなった作品となる。加えて、そもそもこの作品へのオーディションも「超GALS! 寿蘭」に出演していた際の音響監督・亀山俊樹さんに話をもらったということもあり、「今だにお付合いのある人たちとのスタートということで、すごく印象に残っている作品ですね」と笑顔を見せた。

神谷さんはこの作品で、それまでにはなかった、とりたてて特徴のないごく普通の青年、・森丘耕平という役を初めて演じることとなる。「超GALS! 寿蘭」「デジモンフロンティア」などでクールな役柄を演じていたこともあり、当初は森丘ではなくクールな御堂成児のオーディションをメインで受けていたというが、実際に受かったのは森丘耕平役。それ以前からクールキャラの流れがあっただけに、受かった際は驚きも大きかったようだ。「何かキャラに特化した役作りのものじゃなくて、普通のところを評価していただけたというのがすごく嬉しくて、だから作品をやっていてもすごく楽しかったです」とその時の心情を笑顔で語ってくれた。


(3)「ハチミツとクローバー」竹本祐太役(2005年)

会場にOPテーマが流れだすと、「いろいろな思い出が詰まっているだけに、この曲がかかるだけで涙が出てきそうになるんです」と話し始めたのは「ハチミツとクローバー」。デビューから11年目のこの時、それまで演じた役の大半は何かしらの特徴のあるキャラクターであり、竹本のような普通の男の子役にはあまり縁がなかったという。それらの役では、同年代の鈴村健一さんや櫻井孝宏さん、保志総一郎さんなどがすでに活躍しており、オーディションを受けてもなかなか受からなかったのだ。そんな状況下では、そのような役を演じることを諦めかけていたと話し、そのときの心境を「すごくコンプレックスがあったし、羨ましいなって気持ちもすごくあったんです」と素直な言葉で明かしてくれた。

しかし、この作品が状況を一変させる。原作を読んで大ファンになったことで、どんな小さな役でもいいから関わりたいと強い意志が芽生えると、何度も何度も原作を読みなおしてオーディションに臨んだという神谷さん。結果、竹本役で合格となり、知らせを受けた時は、新宿の交差点という多くの人が行き交う場所にいたにも関わらず大きな声で叫んでしまったとのことで、その喜びの大きさがうかがえる。現場でも原作ファンは多かったそうで、「作品自体ものすごく大変だったし、難しい役だったのでハードルは高かったですが、みんなの作品をすごく好きだって気持ちと、いい作品にしたいって気持ちがものすごく詰まって凝縮していると感じる現場でしたね」と当時を振り返った。


【ACE2013】高橋祐馬×神谷浩史スペシャル対談『【ゆまの部屋】神谷さんと語ってみよう!』レポート

(4)「機動戦士ガンダム00」ティエリア・アーデ役(2007年)

「機動戦士ガンダム00」でついにガンダムに乗ることとなった神谷さん。「ものすごく熱量のある作品」と評したこの作品は、神谷さんにとって「本当に僕の人生の転機になった作品」という。水島精二さんが監督を、シリーズ構成を黒田洋介さんが担当するということも、神谷さんにとってますます興味をそそられる要素だったようだ。「これは絶対面白いガンダムになるに決まっている」と意欲を燃やし、「このオーディションを受けられたら結果はどうでもいい、とにかくオーディションだけでも受けさせてくれないかって初めて事務所に言ったんですよ」と自身の意思をしつこくアピールしたことを明かす。

その熱意が報われ無事にオーディションが受けられることに。その際には「『神谷さん、オーディション受けられることになりました!』って、あたかも『役が決まりました』みたいなテンションで弊社のデスクさんが電話をかけてきてくれたんです」との嬉しいエピソードもあり、神谷さんは改めて頑張ろうと決意したという。さまざまな出来事をかいくぐった末の参加作は、まさに神谷さんの人生を左右する大きな転機だった。


(5)「夏目友人帳」夏目貴志役(2008年)

「機動戦士ガンダム00」や「マクロスF」と同時期にあった「夏目友人帳」。繊細な少年という、「機動戦士ガンダム00」のティエリアや「マクロスF」のミハエルとは全く異なる役どころだが、実は同日に「機動戦士ガンダム00」と「夏目友人帳」を、その翌日には「マクロスF」を収録するというヘビーな2日間を当時送っていたとのこと。今だから言えるというこの裏話では、高橋さんに突っこまれてその大変さを思い出したのか、神谷さんは思わず苦笑い。その表情からは当時の苦労がうかがえた。

「夏目友人帳」はアニメの前にドラマCDにもなっている作品だが、井上和彦さんと揃ってTV版でも続投が決定した時には、本当に嬉しかったと話してくれた。アニメも2012年に第4期まで放送され、原作も今年で10周年を迎える本作。「まだまだ原作のほうが続いている作品ですのでまた何か動きがあったら嬉しいなと思っている作品です」と、神谷さんも今後に期待の募らせる思い出深い作品となった。


(6)「化物語」阿良々木暦役(2009年)

「夏目友人帳」に続くアニプレックス作品であり、シャフト、新房監督ともますます縁を深めたのがこの「化物語」だ。この作品にもたくさんのエピソードが詰まっている。まずは、出演依頼があり原作を読んだ際のこと。収録前にも関わらず、すでに暦の声が頭の中で再生されたのだという。「この役だけは最初から全部自分の声で聞こえたんですよね」と、これまでは絶対になかった経験をしたと話した。

また、この作品の特徴のひとつともいえるのがセリフ量の多さだが、そんな苦労の甲斐は十二分だったようだ。「やったらやった分だけ、みなさんの反応としていいものが返ってくるというのが分かりました。自分の思いを高めれば高めた分だけ、皆さんが評価してくれるって初めてこの作品で感じた気がしますね」と最後は笑顔を見せてくれた。


【ACE2013】高橋祐馬×神谷浩史スペシャル対談『【ゆまの部屋】神谷さんと語ってみよう!』レポート

(7)「ワンピース」トラファルガー・ロー役(2009年)

今や国民的アニメに成長を遂げた「ワンピース」。神谷さんが演じるのは、2009年から登場したトラファルガー・ローだが、実はこの役の前にも「ワンピース」にはすでに何度か出演をしている。と言っても第1話での“海賊A”など、小さな役での出演だ。しかしながら、それらを経た末のキャスティング、それも重要な役どころを背負うキャラクターだけに、神谷さん自身嬉しさは人一倍だったようで、「成り上がりですよ。海賊Aから王下七部海ですよ!」と興奮気味に話し、会場を沸かせてくれた。

また、人との繋がりがここでも大きく関わってくる。トラファルガー・ロー役は、「イリヤの空、UFOの夏」(OVA)で出会ったプロデューサー・柴田さんによるキャスティングであり、「本当に人と人との繋がりで信頼関係が出来てきて、その人に任せようって気持ちにならないとなかなかキャスティングってしていただけないんですよ」と、再度その大切さを実感したと語ってくれた神谷さん。その後、柴田プロデューサーから「まさかローがあんな(大物)になるとは思ってなかった」と暴露されたエピソードに会場が笑いに包まれる一幕も挟みつつ、何がどう繋がるかわからない中から出会えたロー役を、だからこそ「大切な役のひとつですね」と、満面の笑みでかみ締めた。


(8)「デュラララ」折原臨也役(2010年)

「夏目友人帳」に続く大森監督の次作「デュラララ」では、エキセントリックなキャラクターで強烈なインパクトを残した折原臨也役を演じる。オーディションでは、竜ヶ峰帝人役を除き全てのキャラクターを受けたとのことだが、神谷さんの狙いは既に折原臨也に絞られていたようだ。「オーディション資料をもらった時から、もう臨也をやりたくてしょうがなかったんですよ。この役は僕に任せてもらったら絶対に面白くしてやる!って思ってたんです」とオーディションに臨んだ時の強い意気込みを話してくれた。

また、収録が始まると、実力派揃いの豪華メンバーが並ぶ現場は何より楽しかったという。「とにかくみんな面白い。笑えるんじゃなくて、いい芝居をするんです」と言うように、役者としてとても充実出来て、お互いによい刺激をし合えた現場となったようだ。そんな相乗効果はフィルムにしっかりと焼きついている。「役者同士すごく和やかに楽しくやっていたけれど、本番になると尋常じゃない集中力で臨んで、それが全部フィルムに残るんですよね」と、やった分だけファンへと伝わると感じられた作品だったと振り返った。


【ACE2013】高橋祐馬×神谷浩史スペシャル対談『【ゆまの部屋】神谷さんと語ってみよう!』レポート

(9)「青の祓魔師」メフィスト・フェレス役(2011年)

指名によるキャスティングであり、それに対しては「いろんな僕を見て、これなら出来るんじゃないかって思ってくれたんだと思うんですよね」と、前向きな姿勢を示していたという神谷さん。

それでもオーディションで選ばれてやってくる他のキャストに交じっての現場には「すごく不安があったんです」と、ストーリー上重要なキャラクターだけにプレッシャーも感じていたようだ。そんな中、メフィストを見事に演じ切れたのは、若林音響監督あってのことだという。「若林さんの導きにより、ちゃんと引き出しを開けてくださって、ちゃんと役を作った上でのああいうエキセントリックな役ができました」と話し、「だからすごくありがたかったですね。こういう今までとちょっと違う役をやらせていただけて」と、笑顔で語ってくれた。


(10)「しろくまカフェ」ペンギン役(2012年)

最後は人間と動物が入り混じった世界の何気ない日常を描いた「しろくまカフェ」。1年という長期にわたって放送されたこの「しろくまカフェ」がつい先日最終回を迎えたということで、「非常に寂しい思いをした」と一言目からから終わりを惜しむ声を上げた神谷さん。会場ではその言葉にうなずくファンの姿も見られ、その人気をうかがわせた。

トークは神谷さん演じるペンギンさんの話へ。物語の中心となるカフェのマスターのしろくまさんや、カフェの常連客のパンダくんなど豊かすぎる個性の持ち主がたくさん登場する中、パンダくん同様カフェの常連客であるペンギンさんもまた、一癖も二癖もあるキャラクターだ。そんなペンギン役を演じるにあたっては、「こういうちょっと突飛もない役を任せていただけるのって、役者としてチャレンジできるので、すごくありがたいです」と語る。先のメフィスト・フェレスとはまたベクトルが異なるチャレンジングなキャラクターとなったようだ。「最初はどういう風に演じたらいいかすごく迷いましたが、結果として演じていてすごく楽しかったですし、現場も楽しかったです。本当にやれてよかった」と振り返る。「こういう役も引き出しとして持っておく、そしてそれを披露できる場があるっていうのは嬉しい」と充実感を味わえた作品となったようだ。


あっという間に過ぎた40分。最後は神谷さんからファンヘメッセージが送られ締めくくられた。駆け足気味で10作品を振り返って来た今回のステージは、神谷さんの各作品への思いの一端に触れることができた貴重な時間となった。



■<物語>シリーズ セカンドシーズン

【放送情報】
TOKYO MX:毎週土曜24:00〜
チバテレビ:毎週土曜24:30〜
tvk:毎週土曜24:00〜
テレ玉:毎週土曜24:30〜
とちぎテレビ:毎週土曜24:00〜
群馬テレビ:毎週土曜24:00〜
毎日放送:毎週土曜26:28〜
テレビ愛知:毎週土曜25:50〜
テレビ北海道:毎週水曜26:05〜
TVQ九州放送:毎週火曜26:35〜
BS11:毎週土曜24:00〜
※放送開始日・曜日・時間が急遽変更になる場合があります。予めご了承ください。

【スタッフ】
原作:西尾維新『猫物語(白)』『傾物語』『花物語』『囮物語』『鬼物語』『恋物語』(講談社BOX)
キャラクター原案:VOFAN
総監督:新房昭之
監督:板村智幸
シリーズ構成:東冨耶子、新房昭之
キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫
総作画監督:杉山延寛、岩崎たいすけ
美術監督:飯島寿治
色彩設計:滝沢いづみ
ビジュアルエフェクト:酒井基
撮影監督:会津孝幸
編集:松原理恵
音響監督:鶴岡陽太
音楽:神前暁
アニメーション制作:シャフト

【キャスト】
阿良々木暦:神谷浩史
戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和
八九寺真宵:加藤英美里
神原駿河:沢城みゆき
千石撫子:花澤香菜
羽川翼:堀江由衣
忍野忍:坂本真綾
阿良々木火憐:喜多村英梨
阿良々木月火:井口裕香

【主題歌】
エンディングテーマ『アイヲウタエ』歌:春奈るな


©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト