5回目の挑戦で初優勝。日本は東アジアカップを手にした (撮影:岸本勉/PICSPORT)

【森雅史の視点 / 韓国を2-1と退け、日本は東アジアカップを手にした。防戦からのカウンターは決して狙いどおりではなかったのだが……】


24分、ロングパスから抜け出した柿谷曜一朗が追走する相手をものともせず冷静に沈めて日本が先制する。さらに同点で迎えた90分、またも柿谷の前にボールが来る。

「GKの裏に走るか、止まって待つかの2分の1だったけど、瞬間にこっちかと思ったらボールが来た。ホントに来てしまったという感じで、入ってくれと(祈りました)」

本人は「心臓がバクバク」だと語ったが、沈着冷静に流し込んで日本がついに勝ち越した。

2回しかなかったチャンスを柿谷がしっかり決め、日本が韓国を下した。この勝利で日本は東アジアカップのチャンピオンに輝いた。

「東アジアカップはワールドカップへの準備」
「結果がついてこなくても数人の代表クラスのメンバーを見つけたほうがいい」

大会に対するザッケローニ監督のスタンスは明確だった。だからこそ2戦目は全員を入れ替えるという大胆なターンオーバーに出たのだ。それでもこの大会を初めて制するなど、ザッケローニ監督は強運の持ち主であるのは間違いない。

ただし、大きな問題点もあった。チャンスが2回だけだったというのが象徴するように、試合の主導権を韓国に握られ続けたのだ。特に前半は、攻め込まれ、はじき返しても相手陣深くに蹴り込むだけで、また攻められた。まるで守備の練習ではないかと思うくらい、攻撃は組み立てられなかった。

「ハーフタイムに監督はもっとパスをつなげと言っていたけれど、試合の流れから自分たちでああいう戦い方を選びました」

栗原勇蔵は言う。その選手の選択を監督が尊重せず、慌てて交代策を採ったならば、逆に苦しくなっただろう。なぜなら栗原はこう思っていたからだ。

「攻められたけれど、あまり怖さは感じませんでした」

狙っていたのとは別の形で戦い、それでも勝利を収めた。海外組がいなくても日本はしたたかな戦いぶりを見せることができた。最近の日本代表は守備が脆く崩れていたことを考えると、今回の選手たちが備えていた勝利へのメンタリティはザッケローニ監督も無視できないはずだ。

■東アジア杯/第3戦/2013年7月28日
日本 2−1 韓国
(会場:韓国・蚕室総合運動場)