栗原投入、長友中盤の狙い
W杯アジア最終予選B組
日本1−1豪州
(6月4日 埼玉スタジアム2002)

★後半34分の選手交代
 ブラジルへの切符を決めた埼玉スタジアムの対オーストラリア戦で、ザッケローニ監督は後半34分に布陣を変更した。トップの前田遼一に代えて栗原勇蔵をディフェンスラインに入れ、左のディフェンダーだった長友佑都を中盤に上げたのである。
 0対0の状況で、このままで引き分けに終われば、日本のブラジル大会進出が決まるところだった。
 ところが、その2分後にオーストラリアが先取点をあげた。そこで試合後の記者会見で、この交代についての質問が出た。
 選手交代は「守り固め」だったのか? 
 この交代が響いて失点したのではないか?
 そういう疑問である
 ぼくの見たところでは、この布陣変更はザッケローニ監督の「予定の行動」である。

★長友の負担を軽減
 布陣変更の狙いは長友の負担を軽くすることである。
 長友は守備ラインの左サイドで守りを担当しながら前線に攻めあがってチャンスを作ることも求められている。
 中盤でオーストラリアのクロスの起点を押さえる仕事もある。
 欧州のシーズンを終えて帰国したばかりの長友にとって体力的に厳しい。
 そこで、試合の終盤には、守備プレーヤーを投入して長友を前に出し、守りの負担を減らして、攻めに力を注げるようにした。
 つまり攻守兼用の布陣変更である。
 ザッケローニ監督は同じ布陣変更を以前にすでにテストしている。その場だけの守り固めではない。少しずつ戦法のレパートリーを増やしているのである。

★メンバー固定への批判
 「ザッケローニ監督は限られた顔ぶれしか起用しない」という見方がある。本田、香川、長友などメンバーが固定している。新しい戦力を招集しても試合には出さない。そういう批判である。
 ワールドカップ予選の試合では、これはやむをえないことだと思う。
 欧州各国でプレーしている選手を、そのつど呼び集めて日本代表を編成する。
 だから、勝ちを求めるには、できるだけ同じ顔ぶれで、手馴れたコンビネーションを生かすほかはない。
 戦い方も同じで新しい方法はテストしながら少しずつ加えていくわけである。
 オーストラリア戦は終了寸前にPKを得て引き分け。アジア最終予選はB組1位で突破した。
 これから1年後のブラジルまでは準備期間。その間の選手起用と戦い方は違ったものになるだろう。