「選手にいい習慣をつけさせたい」-飯塚祐司
■ 飯塚祐司(アイスホッケー女子日本代表監督)
アイスホッケー女子日本代表を率いて、ちょっとした時の人である。38歳、飯塚祐司監督は漏らす。
「最近、メディアの数にはびっくりです。カメラの数も。(メディアで)取り上げてもらうのはうれしいですよ、これまでマイナー扱いだったので」
先のソチ五輪最終予選(スロバキア)で五輪出場を決めた。日本としては、開催国枠で出場した1998年長野五輪以来の五輪キップ獲得となった。取り巻く状況が一変する。3月28日の愛称発表の会見にも、メディアがどっと押しかけた。
愛称が「SMILE JAPAN(スマイルジャパン」に決定した。壇上で笑顔がはじける選手たちと違い、飯塚監督の笑いは少しぎこちなかった。
「ぼくはふだん、あまり笑わない方なので。硬い表情をしていますから」
きっと頑固で照れ屋。アイスホッケーに対する情熱はだれにも負けない。五輪最終予選の直前合宿(チェコ)での練習試合前のミーティング、「失点をおそれなくていい、笑顔でプレーしよう」と選手に声をかけた。
五輪最終予選の初戦のノルウェー戦ではいきなり3点のビハインドを背負う。1点を返した後の第2ピリオド後のロッカー室、選手たちの表情は明るかった。
「その時、笑顔を絶やさないチームだなと思いました。4年前のバンクーバー五輪予選の時より、チームの雰囲気が明るくて、リードされていても笑顔を失わないのです」
結果、その試合は4-3で逆転勝ちした。五輪キップ獲得につながった。
北海道出身。北海道釧路工業高校から王子製紙に進み、アイスホッケーのDF選手としてプレーした。引退後に指導者となり、2008年に男子U20(20歳以下)日本代表コーチを務め、その後に女子U18(18歳以下)日本代表、女子日本代表の監督に就任した。
理論派で通る。指導理念が、「選手にいい習慣をつけさせること」という。
■「朝しっかり起きる、ごはんを食べる」
「ぼくはいい習慣を身につけることなく、ホッケーを辞めてしまった人間ですけど、いろんないい選手を見ていると、きっちりした習慣を身につけているのです。例えば、朝しっかり起きるとか、ごはんを食べるとか、しっかり仕事をするとか。そういうこともしっかりしないと、氷上のパフォーマンスは雑になると思います」
いわゆるディシプリン(規律)である。だから「最低限のルールは守ろうね」と選手に声をかける。プレーでは、選手個々の得意な部分、不得意な部分を見つけ、ビデオを使ってのミーティングで気付かせるそうだ。
代表チームは各クラブチームのエース格の集まりである。得てして、チームプレーが甘くなる時がある。
「試合はいろんな展開になるので、適材適所で選びます。大事なことは、それでチームのため、犠牲を払えるのかどうかです。日の丸を背負っている以上、チームのために戦えない選手はダメでしょう」
4月7日からはトップディビジョン入りをかけた世界女子選手権ディビジョン1(2部相当)が始まる。この成績が、2018年平昌(ピョンチャン)五輪の代表選考にもつながっていく。実力も人気も上昇気流にのる。飯塚監督率いる「スマイルジャパン」のソチ五輪の目標は「メダル獲得」である。
(松瀬 学=文と撮影)