『週刊ベースボール』7月16日号、豊田泰光氏がコラム「俺が許さん!」で、巨人原辰徳監督も、読売新聞渡邊恒雄会長も辞任せよ!!と吠えていた。豊田氏は、こういっている。


「巨人・監督」とは、普通のプロ野球の監督とは次元の違う重さがある。原監督は、誰にも動かせない『巨人』を預かっているのに、その自覚がなく、誇りを捨てて元暴力団らしき人間に1億円を払ってしまった。

そして原監督を擁護し、事件を矮小化しようとした渡邊恒雄氏も


「巨人・監督」の重みを知らない。
二人とも辞任すべきだ

と。



私は巨人の監督が特別だという理屈は気に入らない。75年を超す歴史を持つ巨人の監督も、できて8年の楽天の監督も、まったく同じだと思う。巨人も12分の一のただのコンペティターだ。自分たちは名門で、だから良い選手を優先的にとる権利があるという理屈が、どれだけNPBをいびつにしてきたか、とは思う。

しかし、NPBの監督としての重さを考えるならば、原には相応の責任はある。野球以外のことでクビになる事例をつくるのは良くないとは思うが、反社会勢力に1億円を渡したという事実は「黒い霧」そのものだ。これを弁護し、謝罪の言葉一つ吐くことなく、傲然と開きなおる渡邉氏にも「何様なのだ」という思いが募ってくる。

また同号には、元太平洋クラブライオンズ球団社長などを務めた坂井保之氏が特別寄稿をし、コミッショナーが原監督に「野球に集中して頑張ってください」と激励したことを問題視。

この事件は「歴史的あるいは社会的な問題性をはらんでいる」

とし、コミッショナーは独自に調査委員会を立ち上げることが必要だとしている。

坂井氏は自らが西武ライオンズ代表だった時にマージャンとばくにかかわった選手に対し、罰金1000万、出場停止6か月の処分を処したことを紹介、この選手がのちに西武の監督を務めたことを考えれば、徹底した事実の究明と、厳しい処分こそが、問題解決の王道であることを説いている。

まっとうな意見である。コラムニストや寄稿者の筆を借りたとはいえ、日本野球の機関誌『週刊ベースボール』が、原、渡辺両氏の辞任を迫り、コミッショナーに事実解明を迫った意味は大きいと思う。

私は「清武の乱」以降、明らかに大きなほころびを見せている「巨人」という球団に対し、世の中がその非を鳴らすことができないことを、非常に残念に思っている。

巨人は、明らかに不正、不公平をなしている。そして苦しい強弁に終始しているのだが、なぜかライバルのマスコミは、それに深く切り込むことが出来ない。

事件は時間がたつとともに風化する。これが前例になるなら、原監督の今回の事件の類は、次にはスキャンダルにならないことになろう。

「劣化」とはこういうことを言うのかもしれない。マスコミ、ジャーナリズムは本当に屁垂れになった。

おかしなことはおかしい、不公平なことは不公平だと、はっきり口に出して言わないと、世の中は厚かましいもの、よこしまなものがどんどん幅を利かせるようになる。

編集部としての意見を言わなかった惰弱さは残るが、この点で『週刊ベースボール』の姿勢は多としたい。