1931年の日本統治時代に、全国高等学校野球選手権大会に初出場。夏の甲子園でみごと準優勝を勝ち取った、台湾の嘉義農林学校(通称:嘉農)・野球部の物語が映画化される。台湾メディアが伝えた。

 日刊紙「聯合報(ユナイテッド・デイリー・ニュース)」によると、「2008年に『海角七号 君想う、国境の南』、2011年に『セデック・バレ(原題:賽徳克・巴莱))』を発表した、台湾の著名監督・魏徳聖(ウェイ・ダーション)が指揮を取る、映画『KANO(嘉農)』は9月に撮影開始。その知らせを聞いた嘉農の在学生を始めOBが大興奮し、輝かしい歴史と栄誉を感じお祝いムードに包まれている」という。

 舞台となる嘉義市の職員は、3月に撮影スタッフが訪ねてきたことを明かし「当時の建築物や街並みが残る場所、シンボルとなる建物などでの撮影を希望して協力を求められた」とのこと。応える形で嘉義市は、ロケ地が新たな観光や文化の発信地になると期待し、全面的な協力を約束した」そうだ。「資料も提供する」という。

 当時の嘉農野球部は、台湾人・日本人・高砂族と呼ばれた先住民で構成されたチームだった。監督は松山商野球部を全国大会に導いた愛媛県出身の近藤兵太郎氏。近藤監督は松山商を離れた1919年に台湾へと渡り、嘉農野球部を指導。監督就任の年に甲子園初出場を果たし、準優勝に輝いた。以降も熱心な指導と厳しい練習を重ね、合計春1回・夏4回もチームを甲子園に導いた台湾野球史に残る“伝説の人物”だ。

 野球を通して日台の歴史や友好関係が描かれる本作が完成すれば、多くの大衆の目に触れることになる。出演者の多くは実際の野球少年の中から選ぶ予定で、ボールさばきやバッティングなど、野球のテクニックも見どころの一つとなりそうだ。上映時期は未定だが、日本でも注目を浴びる話題作になるだろう。(編集担当:饒波貴子)