「車の燃費がカタログの数値と違うなんて、そんなの昔から当たり前じゃ」
 自称カーキチの西園寺無恒さん(仮名・72)はこう語る。しかし、多少の誤差なら許せるが、あまりにも違い過ぎる…。そう思っているユーザーも多いのではないだろうか。

 テレビでこんなことを言っていた。
 「新東名高速道路の開通も手伝って、ドライブ派が一気に増えそうな今年のゴールデンウイークです」
 そして今まさに、エコカー補助金復活のおかげで、新車への買い替えを検討している方も大勢いることだろう。
 確かに旅行気分に浮かれたいし、新しい車を買う夢も見たい。しかし悲しいかな、この不況下とガソリン高だ。自動車の燃費に関しては「そんなもの」とあきらめたくはない。コロコロと変わる国の政策のお陰で結局、高速道路の無料化は永遠に実現しそうもないし、休日ならどこまで走っても1000円のキャンペーンも、もはやすっかり過去のもの。いかに節約をするかは車の実質燃費にかかっているといっても過言ではない。
 実際、今の日本の自動車市場はまさにエコカー全盛。メーカーもハイブリッド技術を駆使し、少ない燃料で1kmでも長く走れる車を開発するのに必死なのだ。

 最近、トヨタのハイブリッドカー・アクアを購入したというSさん(48歳・会社員)は、クルマ選びの動機をこう語る。
 「前の車は、10年前に新車で買ったトヨタのアルファードでした。当時はまだ子供も小さく、家族で楽に移動できるようにとミニバンにしたんです。しかし、最近は一緒に出かけることも少なくなり、夫婦で近所に買い物に行くような用途ばかりなので、コンパクトで燃費のいいというアクアにしました。前の車に比べて約3倍(7km/L→22km/L)も燃費がいいし、小さくて扱いやすいので満足しています」

 一方、マツダのデミオを購入したというKさん(50歳・自営業)は、若干の不満があるという。
 「主に仕事の商品配達や客先回りで利用するので、燃費がよいというデミオにしました。CMで盛んに強調している『燃費リッター30km』も魅力でしたね。実際、購入してみて、扱いやすく良い車なのは間違いありませんでした。でも、どう走っても30km/Lに届かないんですよ。メーカーが公表する数値だし、多少の誤差はあってもそんなにかけ離れることはないと思っていたのですが…」

 よくよくKさんに話を聞いてみると、運転はいたって普通で、急発進や速度超過を繰り返すような走行はしていないという。むしろ自分なりにエコランを心がけているというのだが、それでも15〜17km/Lまでしか伸びないのだとか。
 Sさんのように満足している人も、もちろんいるが、Kさんと同じような疑問を持っているドライバーが多いのも事実。
 セールスマンやCMの文句を信じてしまい、「ハイブリッドだから40km/Lは走る!」と思い込んで購入したのはいいが、実際、自分で車を走らせてみるとカタログ値には遠く及ばない燃費しか記録されない。

 一体、どうして? メーカーが車を売りたいがために、誇大広告をしているというのか?
 「メーカーがカタログに載せている燃費は、『10・15モード』や『JC08モード』に準じた数値なんです。どちらも1リットルの燃料で何km走行できるかを示したものなんですが、これは国土交通省が細かい測定条件を定め、メーカーがそれに合わせて走行した時の数値を公表しているのです。簡単に言うと、あくまでもテスト用のデータであって、刻々と変わる実際の道路状況下で運転すると、まったく異なった数値しか出てこないんですね。おおむねカタログ値の6〜7掛け程度が実走行値と言われています」(自動車雑誌ライター)

 1、2割の誤差ならまだ許せるとしても、そこまで乖離してるなんて詐欺じゃないか! と言いたくなるような話だ。この燃費性能こそが今のユーザーの最大関心事なのだから、こんな“お手盛り”の数値を載せるメーカーは、消費者を完全に舐めている(怒)!