「5」ではなく「3」だったら、状況はまた違ったのだろうか。少なくとも印象は変わる気がする。

 ガンバ大阪がセホーン監督を解任した。開幕3連敗はガンバだけでないが、ACLの2連敗もあるだけにマイナスイメージは際立つ。

 J1が1シーズン制となった05年以降の優勝チームを振り返ると、開幕3連敗を喫したチームはひとつもない。過去7年の優勝チームで唯一の連敗スタートとなった07年の鹿島も、3試合目で勝ち点1をゲットしている。あくまでもデータ上だが、今季のガンバはすでに優勝の可能性を失ったわけだ。

 同じように新監督を迎え、リーグ戦開幕から3連敗を喫している鹿島はどうだろうか。こちらはナビスコカップで、公式戦の勝利をあげている。やはり3連敗の新潟も、ナビスコカップで札幌を下した。リーグ戦の結果は同じでも、いまだ勝ち星をあげていないのはガンバだけだ。

 マリノスと札幌もリーグ、ナビスコカップで白星なしだが、ひとまず勝ち点はあげている。ガンバだけが取り残されているのは間違いない。決断を下すタイミングだった、との理解は得られる。

 そもそもの原因を探れば、呂比須ヘッドコーチのライセンスが認められなかったところにあるのだろう。セホーン監督は本命でなく、時間的制約のなかで浮上してきた代役だった。この時点ですでに躓いていたわけであり、もっと言えば新監督選びに出遅れたことも原因にあげられるはずだ。

 第三者的立場で見ると、このチームはまだ“立ち返る場所”を持てていないのかな、と思う。

 好不調の周期はどんなチームにも訪れるもので、1シーズンを通して好調を維持できるチームはない。長いリーグ戦を戦い抜くうえで重要なのは、不調の時期をいかに短くするか、不調でも勝ち点を拾っていけるかにある。
 
 分かりやすいのは鹿島だ。監督が代わっても、選手が入れ替わっても、チームのコンセプトは一貫している。戦い方にブレがないから、結果が出なくても慌てない。「あのときはこうやって悪い時期を乗りこえた」という蓄積のもとに、チームを立ち直らせることができる。それがつまり、立ち返る場所である。
 
 昨季のJ1で4位に躍進し、今季も開幕3連勝の好スタートを切ったベガルタ仙台も、“立ち返る場所”を持っている。J1復帰初年度の2010年に14試合連続未勝利を経験したが、手倉森監督は戦い方を大幅に変えたりしなかった。堅守速攻のスタイルを堅持した。チームのまとまりも保たれた。

 そのうえで長いトンネルから抜け出した経験は、昨シーズンの9試合連続未勝利の時期に生かされた。自分たちのスタイルを見失わなければ、やがて活路を見出せるという意識にチームが貫かれていた。

 ひるがえってガンバである。

 新監督のもとで迎えた今季は、これまでと状況が異なっていたのだろう。主力選手も入れ替わってはいる。

 とはいえ、不振を乗り越えてきた経験は少なからずあるはずだ。監督の影響力は確かに大きいが、選手たちによる危機回避能力や反発力が見えてこないことが、僕には少しばかり疑問に感じられるのだ。

 クラブのOBでもある松波新監督は、前監督にはない求心力を持つ。しかし、ピッチ上で戦うのは他ならぬ選手たちだ。監督交代で問われるのは、ガンバのユニホームを着た男たちの地力であり胆力ではないかと思う。