だが、かねてより疑問視されていた耐震性に問題があることが専門家の指摘により発覚。3・11の東日本大震災で外壁が剥落し、エレベーターが止まるなど、府庁舎にふさわしくないことが決定的となったのだ。

 つまり、橋下府政は、とんだ不良物件を高値でつかまされてしまったのである。

 これが世に言う「WTC問題」だった。

 藤永氏が続ける。

「85億円のムダだけではありません。移転費用で約11億3000万円かかっていますが、全ては、橋下知事の独断が生んだムダです。内訳には、電話会議用のテレビ付きIP電話54台、マホガニーの応接セット12台の購入費、約760万円も含まれます。府は応接セットは会議室に据えられていると主張していますが、ほとんど放ったらかしみたいなもんです。さらに、仮に府庁舎として使い続けるのであれば、130億円の耐震強化費が追い銭で必要になります。こういったムダの全ては、橋下さんの独断による出費なわけですから、我々市民472名の監査請求人としては、最低でも移転費用の11億3000万円は橋下さん個人で補填してもらいたい。そういう趣旨で、請求を行いました」

 今後は、橋下氏の個人資産での返済も視野に入れているという。

 それだけではない。市民団体側は、住民監査請求のみならず、住民訴訟でも橋下氏の失政について、徹底的に追及していくつもりでいる。

「今回のW選挙についてマスコミでは、橋下さんと維新の会の松井さんの勝利を圧勝と報じていますが、約50万票の反対があったことも事実です。あの橋下さんのことだから、“民意”を背景にこれまで以上の独断を振るうでしょうが、投票した人も、今の政治への不信感から橋下さんに投票しただけであって、何をしてもいいというわけではない。ですから、これまで以上に橋下政治の監視は必要です。監査請求の結果は12月16日に出ますが、否決されたから放っておくというわけではなく、監視活動の一つの形として住民訴訟も視野に入れています」

 今回の選挙では、府知事選、市長選ともに橋下氏が率いる「大阪維新の会」の圧勝に終わったことばかりが喧伝されているが、今後、クローズアップされてくるのは、橋下府政3年9カ月の「実績の検証」であろう。