DeNA社のプロ野球参入が了承された。
結局、反対に回ったのは楽天だけで、ほぼ全会一致と言えるものであったようだ。
ついこの間までヤクザのシノギに利用されていたプロ野球という興行への参入に対して、『教育的見地』などという大仰な根拠を持ち出した時点で、楽天の主張は私怨を晴らすための言いがかりと解釈されたのではないだろうか。

TBSという史上まれに見る無能な企業集団との決別がとうとう現実になった。
プロ野球ファンにとって半生とも言うべき10年の歳月を、このくだらない企業に蹂躙されたことは、今後、仮にベイスターズが常勝軍団に生まれ変わったとしても、球団が存続する限り暗黒の歴史として語り継がれるだろう。

春田会長は、近々発表されるであろうGMに対して、とりあえず来季は最下位脱出、三年後にはCS進出、そして五年後に優勝できるチームにして欲しいと注文をつけるとのこと。
注文をつける以上、その成績に対し最も大きな影響を及ぼすはずの監督選びはGMに一任するというのが当たり前なのだが、球団主導と思える素人くさい監督候補が次々と噂されている。

そのひとりである工藤氏は甲子園のスターで、プロ入り一年目から活躍した選手である。
その後も厳しい自己管理により通算224勝を積み上げた。
このキャリアは工藤氏に絶大な自信をもたらしたはずだが、それを監督として選手に伝えられるかと言えばNOだろう。
指導者として役立つのは、挫折を克服するためにもがき苦しんだ経験であり、劣る素質をカバーするための工夫である。
残念ながら工藤氏は指導者として成功するための経験をしていない。

さらに問題なのが、浪人までして現役にこだわったことである。
誰の目にも球威の衰えは明らかで、客観的な視点があれば引退の決断ができたはずだが、有り余る自信がそれを妨げた。
客観性や物事を俯瞰で見る能力は監督の資質として欠くべからざるものであるし、指導者に転身する気などサラサラなかったということが何より深刻である。
意欲のない者に突然お鉢が回って来たという点においては、TBSがベイスターズを保有することになった経緯と同じで、工藤監督はほぼ間違いなく失敗するだろう。
成績としては借金25から35くらいで終わるのではないだろうか。

「投球フォームはいじらない」という工藤氏の発言だが、コーチが選手の意向を無視して、投手の『命』とも言える投球フォームを変えることは、いかなる理由があろうとも許されることではないと思う。
しかし、すべての投手が工藤氏のように自信と誇りに満ち溢れているわけではなく、プロの壁にぶち当たり、藁にもすがる思いの投手がいることも事実である。
入団二年目の佐藤祥万をサイドスローに変えたのは×だが、先発として、また選手として行き詰まっていたコバフトや高宮のフォームを変えたのは○だと思う。

工藤氏の言い方では、「自分が作り上げたフォームでやり通し、それでダメなら仕方がない」ということだろうが、それは挫折を知らない者の驕りではないだろうか。
プロ野球選手の中には燃え尽きそうな灯火を必死で繋ぎ止めようとする、球界の脇役たちがいることにまで心を砕いてこそ指導者であり、スター選手の高みから下々を見下ろして上手くゆくほど指導者の道は甘くない。

ヘッドコーチとして噂されている達川氏は、新人監督に作法を指南するという役割を果たすには適任で、選手がいなくなって投手を使わざるを得ないようなみっともない試合にはならないよう、監督経験者として適切なアドバイスをしてくれるだろう。
しかしそれ以上のことができるかと言えば疑問で、武山は一流の捕手になるが細山田は一、二年後にはクビになっていると予言した人物だけに、多くを望むのは酷というものだ。
ある意味尾花監督は、見るも無残な成績が似合うキャラクターだったが、工藤、達川という明るい首脳陣が負け続けのチームを率いた場合、逆に痛々しいことになってしまいそうである。

しかし中途半端な結果よりも大失敗の方が、DeNA社の『監督の能力軽視』という誤った方針を改めるきっかけにはなるだろうから、新生ベイスターズにとっては有益である。

こと補強に関してDeNA社はかなり積極的なようで、たとえ村田が流出してもそれなりの戦力は整えそうだ。
「野球は選手がやるもの」という考え方が成立するならば、監督がどうあれ戦力に応じた結果は出るはずだから、工藤政権がどういう成績になるのかということには興味がある。

噂される首脳陣で本当に新生ベイスターズが船出するならば、『期待』はできないが頑張って欲しいという『願望』は持ち続けたい。
仮に今季と同じような成績に終わったとしても、浮かれたチーム作りを反省して、再来年の2013年以降、本気でチーム強化を計ってもらえるなら、あと一年は歯を食いしばって耐えてみせる。