■世代交代のロードマップ

Jリーグの開幕戦で相まみえた大阪ダービーでC大阪に快勝。ACL初戦に続いて、公式戦2連勝を飾ったG大阪――。内容と結果ともに最高の滑り出しを切ったかに見えたが、東日本大震災の影響による中断期間中に、G大阪が抱える「光と影」が垣間見えた。

光明となりそうなのは、世代交代というG大阪のみならず頂点を極めた数々のチームが頭を抱えてきた課題にロードマップが見えてきたことだ。

G大阪を車に例えるとするならば、強力FWはあくまでも取り換えのきくタイヤに過ぎなかった。ボール支配率の高さを軸に、あくまでも攻めの姿勢を貫く西野ガンバを牽引してきたエンジンは遠藤保仁や二川孝広、明神智和、橋本英郎といった代表経験者が居並ぶ中盤だった。

■聖域「黄金の中盤」の位置づけが一変

ただ、33歳の明神を筆頭に「黄金の中盤」はいずれもオーバー30。技術もさることながら、経験値とサッカー頭脳において彼ら4人に代わる存在を見いだせていなかった「聖域」の位置づけが開幕戦で一変した。

「パッシングサッカー」。指揮官がしばしば口にするパス主体の方向性は、引いた相手を崩しきれなかったり、過密日程などコンディションに問題を抱えている時にはしばしば機能性を欠いてきたりした。主力の高齢化とともに限界の見え始めてきた「エンジン」が新たな可能性をみせたのが、C大阪戦。遠藤の決勝点はパスサッカーの全盛期を彷彿とさせる華麗な崩しによるものだったが、ドリブルという仕掛けを選択肢に持つ宇佐美貴史を今季はMF起用することが新たな化学反応を生み出そうとしている。「仕掛けるだけでなく、パスも出す自信はある。前線の二人も生かしたい」(宇佐美)。

そして長らく代えのきかない存在だった明神の代役としても武井択也にめどがつき始めた。明神ほどの万能さはないものの、チーム屈指のミドル弾を持つ武井と宇佐美を擁した中盤は「黄金」以上の輝きを放つ可能性を垣間見せた。手厳しい指揮官も「貴史がアクセントとなって、相手をひきつけたり、かわしたりと中盤にプラスを生んでいる。可能性を感じさせる構成」と評価する。

■顕在化した課題。右サイドバックの代役は

そんな最高のスタートを切ったチームではあったが、一方で課題も顕在化した。ここ数年来悩まされている加地亮の代役だ。

リーグ戦中断中、G大阪はACLのアウエー2連敗を喫するが、大きな痛手を負ったのが3月15日の天津泰達戦だった。1対2のスコアもさることながら、この試合で加地と山口智が負傷離脱。練習試合やヴィッセル神戸とのチャリティーマッチ、さらには1対2で敗れた4月5日の済州ユナイテッド戦までキム・スンヨンを右SBに配置したものの、SBとしての適性は明らかに皆無だった。

「真面目だし、言ったことを修正しようとする意識は高い」と中澤聡太はフォローするものの、相手チームに対する分析がより緻密なJリーグで、その起用は致命傷となりかねない。橋本が早くても秋以降の復帰となる上に、かつては「鉄人」ぶりを見せつけた加地も昨年以降は負傷がち。加地不在時のバックアッパー見当たらず――。右SBの大きな不安材料を抱えたまま、今季も過密日程を強いられることになりそうだ。

明らかに答えの選択肢を欠く「加地問題」と異なり、パズルの組み合わせに指揮官が今、頭を悩ませているのが2トップの組み合わせだ。リーグ戦再開直近の4月20日に行われた済州とのリターンマッチは、負けはもちろん、引き分けさえも許されない大一番。「シーズン序盤でこういう展開は予想していなかった。ACLの一年目(グループリーグ敗退)を除けば、これだけ追い詰められた年はない」(西野監督)。

結果的にアドリアーノの2得点を含めて3対1で快勝し、自力通過に望みをつないだものの指揮官は「決してスコア通りの内容ではなかった」と自己採点。その不満は「決して関係性がいいとは思っていない」という2トップの連携だ。